第1期湖沼水質保全計画では、八郎湖の水質改善を図り湖岸域の生物多様性を回復させるため、累計で38基 総延長2.3kmの消波工を造成し、水生植物の再生を目指しました。

そのうち県が造成した消波工では、1年目には沈水植物のホソバミズヒキモが旺盛に生育し、大きな群落を形成した消波工もありましたが(写真1)、消波工の構造や水深、土壌シードバンクの採取場所や撒き出し量等により水生植物の生育状況が異なり、継続的な沈水植物の生育が難しい消波工が見受けられました。

第2期湖沼水質保全計画では、半数の19基で植生回復を目標とし、消波工内での水生植物の再生手法を探るため、平成24年度から平成26年度まで、秋田県立大学生物資源科学部の協力を得て、「湖岸の自然浄化機能の回復施設における沈水植物の生育調査と安定再生手法開発研究」を行うこととしました。

この調査研究では、既に設置してある消波工のうち構造の異なる8箇所を用いて、水生植物の生育調査を実施するとともに、水生植物の埋土種子や散布体バンクの撒き出しおよび秋田県立大学圃場で育苗した沈水植物のポット苗やマット苗を移植し、水生植物の発芽・再生に及ぼす環境要因(濁度、水深、光量子)や沈水植物の生育に与える波浪および食害の影響を調査・解析することとしました。

画像 : 写真1 土壌シードバンクから再生した1年目もホソバミズヒキモ群落(夜叉袋のL型消波堤No6、平成22年8月)

結果の概要

  • 現在の八郎湖のように、植生が消失している場合は、消波効果が失われ、湖底の土砂が浮遊することにより水が濁る。濁りは水中への光の到達を妨げるため、特に沈水植物の生存と成長に悪影響をもたらす。
  • 波による攪乱と水の濁りを抑制することができなければ、植生の発達は難しい。
  • 植生の回復のためには、消波効果をもたらす人工的な構造物が必要。
  • 水深が一定で、流動性の高い消波工では、波浪等により植物体が流出し、持続的な生育が難しい。
  • 消波構造物と併せて、人為的な植栽も必要と考えられる。
  • 人工的に植栽する場合は、礫などの間隙に大型の抽水植物を移植し、ある程度定着したら沈水植物の土壌シードバンクをまきだすことが必要と考えられる。
  • 自然湖岸のような傾斜地(沖に移動するに従って水深が大きくなる)の造成は、植生の発達を促す可能性がある。造成された傾斜地の浅い場所に抽水植物を移植することで、植生の再生を図ることができる可能性がある。
  • 水深が80cm以上、濁度が30mg/Lを超えると沈水植物の生育が著しく抑制されることが示唆された。

以上より、八郎湖で持続的な沈水植物の再生を図るためには、遠浅でなだらかな傾斜護岸を水深1.0~1.5mまで造成し、その沖に波浪防止のための消波工を建設することが必要と考える。また、湖底に起伏をつけるとともに台風等の波のせん断力にも流されない大きな石や沈水型の食害防止枠または消波構造物を所々に配置し、台風時の波浪や水鳥・コイなどの食害を受けても、種子や散布体がが消失することのない多様な水生植物の生育環境を創出することが大切である。

調査研究の詳細は下のダウンロードから報告書ご覧ください。
また、消波工の詳細は下のリンクをご覧ください。

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