令和7年度政府予算案及び令和6年度補正予算にかかる知事コメント
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令和7年度政府予算案及び令和6年度補正予算は、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現に向け、賃上げの原資となる中小企業の稼ぐ力や脱炭素分野など地方経済の潜在力を引き出す国内投資の促進、新たな地方創生施策の展開など、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行に向けた取組を継続するとともに、こども未来戦略「こども・子育て支援加速化プラン」の着実な実施や、防災・減災対策の推進、国土強靱化、外交・安全保障環境の変化への的確な対応などの重要課題に対応したものと受け止めている。
県としては、こうした国の予算を効果的に活用しながら、人口減少問題の克服に向けた「女性・若者の定着・回帰」や、県民の生命や財産を守るための「県土の強靱化」に取り組むとともに、最終年度となる「新秋田元気創造プラン」に基づく三つの選択・集中プロジェクトをはじめ、六つの重点戦略による各般の施策・事業を着実に推進していく。
なお、主な分野に関しては、以下のとおりである。
1 地方財政について
(税制改正)
「103万円の壁」にかかる個人住民税については、基礎控除は据え置いて、給与所得控除の見直しや大学生年代の子等に関する特別控除の創設等について対応することとされた。地方税財源への影響等に配慮いただいたことについて評価したい。仮に今後、今回を超える基礎控除の引き上げ等が恒久的に行われる場合には、地方税収への影響について、国の責任において代替財源を適切に確保するよう強く求めていく。
(地方財政対策)
一般財源総額について、給与改定及び教職調整額の引き上げに伴う人件費の増や物価高に対応し、交付団体ベースで前年を上回る額が確保されたことに加え、地方交付税総額を増額し、臨時財政対策債について制度創設以来初めての新規発行額ゼロとしたことを高く評価する。
また、緊急浚渫推進事業の事業期間が延長されたことなどについても、地方の要望を受けたものとして評価する。
県としては、国の総合経済対策と歩調を合わせつつ、補正予算において措置された物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金等を有効に活用し、引き続き県民の暮らしを守るとともに、防災・減災対策等の県民の安全・安心につながる施策や、人口減少問題の克服に向けた産業・雇用施策などに重点的に取り組んでいく。
併せて、歳入・歳出の徹底した見直し等により財政の健全性を維持することとしているが、今後も都市部の再開発計画・事業の著しい増加を踏まえた資材・労務単価の上昇等による建設費の増嵩等をはじめ、物価・金利の上昇等により歳出の避けがたい増加が見込まれることから、地方財政基盤の充実・強化について引き続き国に働きかけていく。
2 少子化対策・子ども関係予算について
国の「こども未来戦略」において、令和6年度から3年間集中して取り組む「こども・子育て支援加速化プラン」の具体的な施策として、児童手当や妊婦等を対象に新たに創設された「妊婦のための支援給付」の予算が確保された。
少子化対策は国家的に取り組むべき課題であることから、安定的な財源の確保を含め、妊娠・出産、子育てしやすい環境づくりを一層推進するよう国に働きかけていく。
3 選択・集中プロジェクトにかかる予算について
(賃金水準の向上)
賃金水準の向上につながる施策として、設備投資、販路開拓、IT導入など生産性向上等に向けた取組の支援、賃上げ原資確保に向けた価格転嫁対策、構造的な賃上げに向けた支援が盛り込まれた。
県としても、こうした国の制度を活用し、中小企業・小規模事業者の生産性向上や成長分野の拡大に取り組んでいく。
(カーボンニュートラルへの挑戦)
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーの更なる導入を促進するため、洋上風力発電の導入拡大に向けた調査に関する予算が措置された。
また、川上から川下までの森林・林業・木材産業によるグリーン成長のための予算が確保された。
県としても、こうした国の制度を活用し、再生可能エネルギーの導入拡大や、再造林など森林資源の循環利用の促進に取り組んでいく。
(デジタル化の推進)
デジタル技術を活用した地域の課題解決や魅力向上に資する取組を支援する「新しい地方経済・生活環境創生交付金」が創設されたほか、自治体情報システムの標準化やマイナンバーカードの利便性向上、中小企業のデジタル化・DX支援などの予算が盛り込まれた。
県としても、様々な分野のデジタル化を進めることで、行政サービスの向上、地域産業の生産性向上や競争力強化、県民生活の様々な場面での利便性向上を図り、誰もがデジタル化の恩恵を享受できる社会の実現を目指していく。
4 予算全般について
(成長産業の拡大)
中小企業等の経営基盤の強化や生産性の向上、賃上げ等に向けて、中小企業・小規模事業者の設備投資、システム構築等への支援が盛り込まれたほか、事業再生や円滑な事業承継を支援するための予算が確保された。
今後も、商工団体等と連携しながら、こうした国の制度の活用を促し、中小企業・小規模事業者の支援に取り組んでいく。
(農林水産業の振興)
食料・農業・農村基本法の改正を踏まえ、農業の構造転換の実現に向けた対策として、強い農業づくり総合支援交付金や農業農村整備事業などの予算が確保されたほか、共同利用施設の再編集約・合理化を推進するための予算が措置された。
今後、こうした国の予算を積極的に活用しながら、食料供給力の強化に向けた取組を加速していく。
(観光・交流の活性化と交通基盤の整備)
都市公園の機能向上と地方創生の拠点となるアリーナの整備に充当可能な予算が確保され、PFIの場合は引き続き優先的に支援されることから、新県立体育館の整備に当たっては、整備費が増加したことも踏まえて、こうした国の交付金を最大限活用していく。
また、インバウンドの地方誘客促進に向け予算が確保されたため、最重点市場に位置づける台湾からの直行便の継続運航や定期便化の実現に取り組むとともに、冬季を中心に誘客を積極的に推進していく。
(人口減少対策と地域社会づくり)
新たな地方創生施策(「地方創生2.0」)の展開を図るため創設された「新しい地方経済・生活環境創生交付金」の活用等による東京圏への過度な一極集中の弊害の是正に向けた姿勢が示されており、これら関連予算を有効に活用し、地域の多様な主体の参画を通じた移住の促進や関係人口の拡大などを力強く進めていく。
また、同交付金に「地域防災緊急整備型」が措置されたことから、地域の防災力強化も含めた、安心・安全で心豊かに暮らせる持続可能な地域社会の実現に向けた取組を進めていく。
一方で、地方が主体的に努力を続けることは当然であるが、国としても人口減少問題を地方だけの課題として捉えるのではなく、我が国の行く末を見据えた骨太の抜本的な人口減少対策に取り組むことを強く望む。
(健康長寿・地域共生社会の形成)
医師偏在対策や地域医療構想の推進、介護施設等の整備や人材確保など、持続可能な医療・介護サービス提供体制の整備のほか、生活困窮者や障害者支援など、共生社会構築に向けた予算が確保された。
また、医療・介護分野における生産性の向上や処遇改善、介護テクノロジーの導入など、更なる賃上げを促す予算も措置されている。
今後とも、国の予算を活用しながら、県民に対する保健・医療・福祉サービスの充実に取り組んでいく。
(教育・人づくりの推進)
小学校において、学級編制の標準を令和3年度から令和7年度までの5年間で35人に計画的に引き下げるほか、中学年以上における教科担任制の推進及び急増する不登校やいじめ等への対応に必要な教職員定数が措置されている。
併せて、教員業務支援員や部活動指導員の配置等、多様な外部人材の活用支援などについて、予算の充実が図られており、県としては、これらを有効に活用し、教育環境の整備に努めていく。
(強靱な県土づくりと防災力強化)
防災・減災及び国土強靱化の推進については、補正予算により前年度を上回る配分があったほか、令和7年度予算案における公共事業の全体額は、前年度と同程度の予算が確保されており、本県の要望が一定程度反映された。
今後も、産業振興や交流人口の拡大、防災・減災対策等の更なる推進のため、本県への配分額の確保に向けて、国に対し要望していく。
(環境保全対策の推進)
クマによる人身被害の発生を抑制するため、人の生活圏に出没するクマの調査・捕獲、人の生活圏への出没防止対策等にかかる指定管理鳥獣対策の予算が拡充された。
また、農作物への被害防止に向け、侵入防止柵の整備や捕獲活動経費などを支援する鳥獣被害防止総合対策の予算が確保された。
県としては、こうした予算を活用しながら被害防止に取り組み、県民生活の安全・安心を確保していく。
令和6年12月27日
秋田県知事 佐竹 敬久