つながる「ふるさと」、オガチの底ヂカラプロジェクト  趣旨

湯沢雄勝地域には川連漆器や稲庭うどん、清酒や味噌醤油など、秋田を代表する数多くの地場産業があります。また、国内外に誇るトップクラスの技術を有し、長年、地域とともにその歴史を刻んできた企業・事業所が多く存在しています。

このプロジェクトでは、湯沢雄勝の顔とも言える経営者らが、管内産業の魅力をより深く学び合うことで、地元企業や人物等の魅力を再認識するとともに、「ふるさと教育」を通して、地域の子どもたちや若者に、地元の良さや郷土への誇りを伝える土台を築くことを目指していきます。

ジバゼミ開催の概要 

ジバゼミ〖じばぜみ〗とは・・・

管内企業等や伝統産業の特長や強み、地域に根ざした事業展開の理由や意義等について学ぶ、交流勉強会のことです。

「社会科見学編」と「地場産業体験編」の二種類があります。

開催概要と講師

【開催日時】平成30年7月20日

【講師】株式会社秋田研磨工業 代表取締役 阿部 忠雄氏

【会社概要】阿部代表取締役は羽後町出身。大手メーカー勤務を経て1985年5月に独立開業。時計のカバーガラスや、電子部品等のサファイヤガラスのカットと高度技術加工で、国内外のメーカーから受注を集める。加工が難しいサファイヤやルビーで、歩留まり99.9%という数字はまさに驚異的。2017年12月、湯沢市伝統の川連塗りなどをあしらった高級万年筆「KEMMA」を発売開始。2018年3月には、日本橋三越本店で開かれた「世界の万年筆祭り」に出展し、大きな話題を呼んだ。

講師が説明する様子の写真

株式会社秋田研磨工業 代表取締役 阿部 忠雄氏

「絶対に、社長になる!」設計図の原点は、両親の姿にあった 

羽後町軽井沢で生まれ育った阿部社長。幼少時は相当な “きがねわらし(=秋田の方言で「やんちゃな子ども」の意味)”だったそうです。実家は炭焼きで生計を立てていました。ご両親は早起きで、朝から晩までとにかく一生懸命働く姿を見て育ったそうです。このころから「社長になる!」という思いが膨らみ始めました。

その後、地元高校を卒業し、県臨時職員として半年余り勤めたのち、地元大手メーカーに勤務。当初、総務部門に配属されましたが、すぐに頭角を現し、間もなくサファイヤの研究部門へと抜擢されました。

しかし、そこで待ち受けていた壁は、自らの技術面での知識のなさ。ところが、ここで役立ったのは、ご両親が行っていたという炭焼きの工程や手順でした。どの仕事にも共通する数々の工程を身をもって学んでいたおかげで、新しい開発にも臆することなく、何もないところから、研究を積み重ね、自身の知識と技術を磨いていきました。

その後、1985年に独立し現在地で創業。幼少時「社長になる!」という夢を描いた設計図がもとになり、経験したどのプロセスも、今に結びついていると実感しているそうです。

株式会社秋田研磨工業 強さの秘密

一見、華々しく見える業界ですが、サファイヤ研磨は特にその加工が非常に難しく、また、秋田研磨工業は材料製造を扱わない点でも、大手他社とは大きく異なる事情があります。

国内メーカーの中には、採算を重視するあまり、あえて内製化に踏み切り、材料不良による負のスパイラルに陥ってしまうパターンも多くあるという厳しい現実。こうしたなか、株式会社秋田研磨工業は歩留まり99.9%という高い技術力を強みに、信頼を得ながらしっかりとその礎を築いてきました。

また、従業員を守るという大命題から、本業との受注バランスをとりながら、一定の戦略と見通しを持って、常に新規事業や開発に取り組むことにも挑戦し続けています。

 

ジバゼミの写真①

2020年東京オリンピックに向けての開発商品も 

                                                                   

 「KEMMA」がもたらしたもの

こうした中で生まれたのが、サファイヤのペン先を持つ万年筆「KEMMA」。最初は「サファイヤなら半永久的に使用可能になるのでは」とのひらめきが始まりだったそうですが、研究すればするほど奥が深い分野であることを痛感。開発に約7年の歳月をかけ、最終的には特許を取得するに至りました。

研究に費やした費用は相当なものでしたが、高級万年筆「KEMMA」の話題性とともに自社のブランド化が図られたこと。これが、本業部門の技術力の高さを証明する結果にも結びつき、全国各地から問い合わせが相次ぐなど、多方面へのビジネスにつながっていることを強く実感しているそうです。

ジバゼミの写真②万年筆「KEMMA」の画像

サファイヤのペン先で試し書き。文字通り「一人でペンが走り出す」感触を実感!

 

阿部社長 名言集

①周囲に存在するもの、全てに価値がある。いかに生かすか、その感覚こそが大事。

②大人が持つ技術を掘り起し、地域の子どもたちに継承すること

 この思いから生まれた「KEMMA」は、地元企業とのコラボを生み出す、まさに絶好の機会になった。

③倉庫に眠る古い機械も、パーツ取り替えなどで極力生かす。無用な投資をしない。これぞ中小企業の強み。若手に、こうした技術を伝えることに注力し続ける。

意見交換 参加者の感想

・まずは技術力の高さを感じた。一方で、工業製品メーカーがおかれた環境と、スピード感、瞬時の決断力が必要で、ここに身を投じなければいけない厳しい現実を知った。これこそが、常に新しい技術、特に進化した技術を継承していかなければいけない部分だととらえた。

・阿部社長には技術経営者という言葉がふさわしい。大手企業との交渉戦術ができるのも、技術・経営の両者どちらの感覚も持ち合わせているがゆえの強みだと感じる。

・社長のパワーをすごく感じた。万年筆を持っていない人も相当いるなかで、技術から入っていったこと、技術者が市場のマーケットまでもにらんで展開していることなどが素晴らしい。

・技術的な高さはもちろん、人に対する情熱がものすごい。特に若い人の話を聴く姿勢、一人ではなく仲間で、他社と連携する姿勢など、人を育てる力を感じた。技術と人づくりとが合わさって、まさに技術の継承につながっていることを感じとった。 

 

 ジバゼミの内容を記録した用紙の写真ジバゼミの写真③

ジバゼミの写真④

 

 ジバゼミレポート

ジバゼミレポート2「秋田研磨工業編」

 みどころ もうひとつ

  おもちゃはヒントの宝庫!時代を先読みした感覚を読み取ります。

ジバゼミの写真⑤ジバゼミの写真⑥

  

 ジバゼミ、今後の予定


次回(8月24日)の訪問先は、株式会社和賀組です。

引き続き、レポートをお楽しみに。 

 プロジェクト早わかり


 つながるふるさと、オガチの底ヂカラプロジェクト実施要領

第一回実行委員会(キックオフイベント)の模様はこちら 

ジバゼミレポート1「相川ファーム編」はこちら