平成30年1月16日(火)に秋田県生涯学習センターで平成29年度秋田県青年・女性漁業者交流大会(以下「交流大会」という)を開催しました。この交流大会は今回が56回目で、毎年、漁業者が行っている取り組みの発表や視察研修の報告、男鹿海洋高校生による研究報告、各界の講師による漁業に関する講演を行っています。
 今年度は研究活動発表3課題、視察研修報告、海洋高校生による特別報告、漁業士会活動報告、水産振興センターによる研究成果報告、講演がありました。 

 写真 漁業者交流大会着席模様 

 

<研究活動発表>
「漁獲物の品質向上への取り組み」
  秋田県漁協北部総括支所
               発表者:菊地 博之
 北部総括支所管内全域で漁獲物の品質向上への取り組みを計画、その第1歩として漁業関係者による活締め講習会を開催し、その中で得た知識の紹介と今後の展望について発表がありました。
 美味しい魚を美味しいまま消費者に届けたいという思いのもと開催した活締め講習会では、技術の習得だけでなく、仲買人等も参加したことで、その意見を聞くことができ、地域全体で品質向上へ取り組む意識の向上にもつながったとのことです。また、今後は活締めした魚にタグを付けて、それ以外の魚や他地区と差別化するなどし、地域が一丸となって良い漁獲物をつくっていきたいとのことでした。

 写真 発表秋田県漁協北部総括支所 菊池博之氏
 写真 双六の早採れ昆布収穫祭の発表

 

「双六の早採れ昆布収穫祭
 -コンブ養殖を通じた交流人口の増加に向けて-」
  秋田県漁協船川総括支所 双六コンブ養殖会
              発表者:三浦 幹夫
 双六地区で行っているコンブ養殖の状況や、平成28、29年に行った収穫祭に多数の来客があり、漁業者と地域住民、ボランティア学生との交流で、地域に活気が生まれたことについて発表がありました。
 途中で準備したコンブが足りなくなり、客に待ってもらい採りに行ったことで、水揚げの様子を間近に見てもらうことができ、漁業への理解にもつながったとの意見もありました。今後も品質の良いコンブの安定生産に取り組むとともに、コンブを通して、地域の交流人口と漁業に関心を持つ人が増える活動をしていきたいとのことでした。   

 

   「秋田ではゼロから漁業者になれます」
  秋田県漁協南部総括支所
                発表者:藤岡 亜津史
 県の漁業者育成支援制度を利用し、漁業と縁のない自分がどのようにして漁業者となったのか、指導者から受けた漁業研修や地域の先輩漁業者との交流の模様を織り交ぜての発表がありました。
 研修で最初に苦しんだ船酔いに少しずつ慣れてきたことを例に、「最初はできないことも段々とできる様になる、自分で漁業の道を選んだのだから、初心を忘れずに頑張り抜くしかない」と決心したこと、また、この発表を参考に漁業を目指す人が現れてほしいことなどが語られ、最後に、指導してくれた親方や先輩、地域の漁業者の皆さんへの感謝の気持ちが伝えられました。

 写真 発表 秋田ではゼロから漁業者になれます 
 写真 視察研修報告

  <視察研修報告>
「東日本大震災からの復興状況の視察研修」
  秋田県漁協北浦総括支所 青年部
                    発表者:杉本 悟
 東日本大震災の復興支援を行った岩手県陸前高田市を中心に、復興と漁業現場の状況について報告がありました。復興が進んでいる姿を見ることができ、津波で大きな被害を受けても、前を向いて漁業に向き合っている三陸の漁業者から、力をもらったとのことでした。


 

<特別報告>
「ハタハタ雌・雄選別機の製作」
  秋田県立男鹿海洋高等学校 海洋科
  発表者:松田 彩菜、熊谷 友明、金子 竜也
 季節ハタハタ漁では選別が重労働となっていることから、ハタハタのサイズを選別する機器製作の取り組みと、海水の塩分濃度を高めることで卵(ブリコ)を持った雌が水面に浮きやすいことに着眼した冷凍ハタハタでの雌・雄選別試験の発表がありました。
 漁業の現場に即した取り組みであり、今後の研究結果が楽しみです。

 

 写真 秋田県立男鹿海洋高等学校 海洋科発表
 写真 漁業士会活動報告

<漁業士会活動報告>
「平成29年度秋田県漁業士会活動報告」
  秋田県漁業士会
                         発表者:佐々木 昭
 秋田県漁業士会の平成29年度活動実績と平成30年度活動予定について報告がありました。

 

 

 

   <研究成果報告>
「新しい栽培漁業技術について」
  秋田県水産振興センター 増殖部
                発表者:中林 信康
 平成28~30年度の3か年計画で行われている、水産振興センターの栽培漁業施設(水産資源の維持・増大のために放流する稚魚等を飼育する施設)リニューアルと閉鎖循環飼育システムの概要を紹介しました。
 新規に導入された閉鎖循環飼育システムは、飼育水を浄化しながら再利用することで、飼育水の加温に係る燃油代などのコスト削減が期待されます。

 

 写真 新しい栽培漁業技術について発表
 写真 講演   

<講演>
「漁業の現場が流通とつながるための新しいデザイン??
 -ICTなど情報技術の活用と付加価値の向上-」
  国立研究開発法人水産研究・教育機構
  開発調査センター 資源管理開発調査グループ
              発表者:廣田 将仁
 漁業の現場と流通をつなぐツールとしてICT(情報や通信に関する技術の総称)を活用し、水産物の付加価値を高める方法について講演いただきました。
 付加価値向上のため漁業現場から流通へ発信する情報は、生産管理に関する内容(漁獲量・時間・品質)が鍵となり、その情報をICTを活用してどのように提供するのか、定置網漁業などを例に説明いただきました。
 ICTは道具であり、どのように使うのか、自分で考えて設計することが重要とのことでした。ICTを活用した情報提供に関する相談は、同センターまで問い合わせいただきたいとのことです。

   

 

 

<表彰・講評>
北部: 講習会では活締めの方法を学んだことだけでなく、仲買人も参加したことに意義があり、魚価向上には消費者や流通のニーズ把握と相互の情報共有が重要です。
 管内全体で取り組むこととした漁獲物へのタグ付けは、把握したニーズを踏まえ、漁獲後の時間・サイズなどの基準を定め、各漁業者がそれを遵守することで価値が高まります。取り組みの効果が現れて魚価が上がるまでは時間を要すると思いますが、粘り強く継続することを期待しています。

船川: 一見不利と考えられる状況を逆にメリットにした好事例です。コンブが不足しても機転を利かせてその場で出漁し、採れたてを印象づけたことが生産者と消費者とを直接結び付ける良いPRとなっており、我々も参考になりました。収穫祭は漁業者、消費者、ボランティアがそれぞれ満足する結果になったようですが、今後も収穫祭に加え、コンブの加工品開発や給食への導入など活動の広がりを期待します。

 写真 表彰式
 南部: 漁業と全く関係のないところから漁業者になったことについて感謝と敬意を表します。漁業の大変さと喜びがよく伝わり、漁業者になるまでの生の声を多くの若者に聞いてもらいたいと感じました。漁業体験で漁師になった第1号として、若い人に漁業の魅力を伝え、新しい漁業者を増やすことに貢献いただくことを期待します。
 また、藤岡さんを支えている第五栄徳丸の皆さんと地区の皆さんに感謝するとともに、今後も新しい漁業者の育成に協力をお願いします。


 優秀賞は南部総括支所の藤岡亜津史さんが受賞し、3月に東京都で開催する全国大会で秋田県代表として発表することになりました。
  藤岡さん、全国大会での発表を頑張ってください。