集団給食等において発生した異物混入事例が、様々な形で報道されることが多くなり、また、異物混入を疑う商品の自主回収に関する告知も増加しています。
 食品への異物混入は、食事をしようとする人に不快な思いを抱かせたり、万が一気付かずに喫食した場合には健康危害を招く可能性もはらんでいますので、食品製造(調理)事業者にとって、異物混入の防止対策は、食品衛生上基本的かつ重要な管理項目となります。
 ここでは、異物混入の防止について考えてみたいと思います。

1.混入異物

 これまでに全国で発生が確認されている食品への混入異物は、製造や調理に関連する機械器具の部品や洗浄用器具の一部、紐などの繊維片、毛髪、衛生害虫の死骸など様々ですが、大まかに次の項目に分類されるかと思います。
  ①硬質(金属)異物(ボルト、ナット、ネジ、針金、鋭利金物など)
  ②硬質(鉱物)異物(小石、砂など)
  ③硬質(その他)異物(ガラス片、プラスチック片、木片、硬質ゴム片、爪片など)
  ④軟質異物(繊維片、ビニール片、紙片など)
       ⑤毛髪、獣毛(人毛や動物の被毛など)
  ⑥衛生害虫(ゴキブリ、ハエなど)
          ※①~③の異物は、歯が欠損したり、口を切るなど口腔内損傷を引き起こす可能性があります。

 

2.原因究明

 発見された異物の混入経路を追求することは、再発防止対策を講じるうえで、大変重要な作業です。
 原因究明を省略すると、根本的な対策が講じられず、同様の混入事故が繰り返されることになります。

 

3.対策

  基本的には、食品の製造環境に異物が同居しないよう施設内の清掃等を徹底することが重要ですが、施設や機械器具の経年劣化によって施設内に異物が発生したり、衛生害虫が施設に入り込んでしまう場合もありますので、実際に起きた事例における異物混入原因を分析し、それぞれの異物や混入過程に応じた効果的な再発防止対策を実行することが大切です。

【 異物混入の原因に応じた再発防止対策例 】

混入異物 発生原因 再発防止対策
①硬質(金属)
 異物

 施設で使用する調理用機材の部品、破片や断片の混入

  ・スライサー、フードカッター等の取り付け固定用部品
  ・スライサーやフードカッターの刃こぼれした刃の断片
  ・ザルなどの損傷による針金や網の一部
  ・調理器具洗浄のためのワイヤーブラシのブラシ片
  ・包装資材開封のためのカッターの刃の一部
  ・器具機材の点検確認時の部品(ボルトやネジなど)

        *取り外し後の放置や失念による混入

 使用している機械や器具の定期点検と整備を実施します。 

  ・作業前、作業後の確認と記録の徹底
   (故障時に分解した場合は、必ず再組み
    付け作業の確認と記録を徹底します。) 

 

 

②硬質(鉱物)
 異物

 食材(野菜)と一緒に製造施設に持ち込まれた異物が、製造工程の途中に混入。

  ・根菜類に付着した土
  ・とんぶり等に混入した小石

 確実な原材料の検収作業と下処理(洗浄作業等)の徹底を図ります。

 

③硬質(その他)
 異物

 施設の窓や窓枠、施設内使用器具等が損傷し、その一部が混入。

  ・照明器具やガラス器具の破損時の飛散部品
  ・食器洗浄機等のローラーゴムの劣化による一部脱落
  ・コンベアベルトの劣化による一部脱落
  ・原料食肉等に混入した骨片等

 定期的な施設の点検(損傷の有無等を確認)、使用機械の点検整備を実施します。

 また、施設内でのガラス器具等の破損があった場合は、混入のおそれのある作業現場に存在した食品や仕掛品の再点検を実施するとともに清掃を徹底します。(原材料については納入時の検収作業を徹底します。)

④軟質異物

 衣類に付着したり、原材料の開封作業で生じた包装資材の断片などが混入。

  ・従事者衣類等に付着した糸くず等
  ・梱包資材の開封時に飛散した紐等
  ・原料包装開封時に切断したビニール袋の切れ端や紙片
  ・原材料仕分け時に使用した軍手等の繊維片
  ・衛生資材(使い捨て手袋)の切れ端(損傷部分等)

 繊維片については、作業着等の服装確認と粘着ローラーによる異物除去等の徹底や製造室への出入時の服装交換の徹底を、また、ビニール片等包装資材については、包装品の取扱い方法の見直しや作業時の適切な廃棄を徹底します。 

 

 

⑤毛髪、被毛

 作業中に脱落した従事者の毛髪や従事者の衣類に付着して持ち込まれた毛髪やペットなど動物の被毛などが混入。

 

 髪おおい等の装着徹底と衣類への付着物の確認、粘着ローラーによる異物除去等の徹底、被毛については、④軟質異物と同様の対策を徹底します。

⑥衛生害虫

 ドアや窓、施設の損傷部など隙間から施設内に浸入した衛生害虫が死亡し、天井など様々な場所から死骸として混入。
 場合によっては、生きた状態で食品に混入。

 定期的な害虫駆除、施設損傷部(害虫浸入箇所)の点検と浸入防止措置を徹底します。

  ・網戸や窓枠等の損傷部修復

 

4.まとめ

 食品への異物混入を完成品の確認検査にのみ頼ることは危険です。
 食品に異物が入り込まない環境をつくり、衛生的な環境を維持していくことが重要です。
 異物混入の再発防止には、それぞれの異物の種類や混入原因に応じた対策を講じることが大切ですが、最も重要な事項は次の4点です。
  (1)作業従事者に対する衛生教育の徹底
  (2)点検や確認作業のマニュアル化
  (3)作業マニュアルの確実な実施と実施記録
  (4)作業従事者間の実施記録の共有

 

異物混入を「たかが異物」と簡単に考えてはいけません!
異物混入を起こす「企業体質」や「従事者教育への取組姿勢」が問われることになります。
起きてしまった異物混入に対するきちんとした対策や措置が、「信頼回復」に繋がりますので、苦情ひとつひとつに、丁寧かつ誠実に取り組むよう心掛けましょう。


 特に食品製造事業者の方々は、衛生管理方法として信頼性の高い「HACCPの導入」がお勧めです。
この機会に検討してみてはいかがでしょうか?