秋田県森林審議会議事録 
 
1 開催日時 平成17年3月25日(木)午後1時30分から3時00分
2 開催場所 秋田市山王四丁目「みずほ苑」3階「合歓の間」
3 出 席 者 敬称略 
  (委 員) 阿部勝行、蝦名萬智子、北林孝市、小林一三、佐藤公一、鈴木誠一、  
       高橋一郎、田口恵子、那須チカ子、増渕陽子             
  (事務局) 竹村農林水産部長、清水森林技監、原田参事、佐々木秋田スギ振興課長、
       佐々木森林整備課長、近藤森林環境対策室長
 
4 議  事 
 
司会    : 議長の選出についてですが、森林審議会規程第2条により、「会長が議
       長となる。」ことになっておりますので、阿部会長に議事の運営をお願い
       します。                            
       
阿部議長  : 議事に入る前に委員の出席数を報告します。本審議会委員14名のうち
       本日は10名の出席で過半数に達していることから、森林審議会規程第3
       条により、この審議会は成立します。               
        議事録署名委員は小林委員と那須委員のお二人にお願いします。  
        それでは議案の審議に入ります。議案第1号「秋田県の高度公益機能森
       林及び被害拡大防止森林の区域変更(案)」について審議いたします。事
       務局から説明をお願いします。                  
       
事務局   : (森林整備課長が説明)                     
       
阿部議長  : それでは事務局からの説明が終わりましたので、ただ今の議案に対する
       ご意見、ご質問をお願いします。                 
       
       
高橋委員  : マツノザイセンチュウがクロマツに侵入するわけですが、確実に侵入し
       ていることを判断できるのはいつ頃なのでしょうか。末期であれば完全に
       枯れていて分かります。あるいは枝先を折って見たときに油が出ないなど
       の判断基準があると思います。そうなった時点では回復不能に近いと思い
       ます。調査員の育成といったこともあると思いますが、いつの時点で判る
       のでしょうか。そして判った時点での対策は間に合うのでしょうか。  
        また、マツノマダラカミキリの生育過程のいつの時期にマツノザイセン
       チュウが付くのでしょうか。                    
       
事務局   : 秋田県は寒冷地のため、被害木が本当に茶色くなるのは結構時間がかか
       ります。マツノザイセンチュウが入っていて一番判り易いのは秋口と言わ
       れています。                           
        マツノマダラカミキリが羽化・脱出していくときにマツノザイセンチュ
       ウを一緒に運んで行くことによって被害が拡大していきます。薬剤散布は、
       成虫が飛び出した時に小枝の皮を食べた段階で死ぬのを目的としていま 
       す。マツノザイセンチュウによって木が死ぬわけですが、マツノザイセン
       チュウだけでは被害木が増えていくことにはつながりません。     
        幼虫がいつの時期に入るかについては、小林先生がお詳しいのでご助言
       をお願いします。                         
       
小林委員  : マツノザイセンチュウがマツに入ったかどうかを判断するのはほとんど
       不可能です。                           
        マツノザイセンチュウがマツの中に入って、感染。次に発病といった過
       程で進みます。発病まで行ったらマツは助かりません。「防除」とは病気
       にかかったマツを助ける方法を言うのではありません。病気にかかったマ
       ツ、そこにマツノマダラカミキリの幼虫が付いていると、これは翌年の発
       生源となります。だから発生源を叩くのです。それから、空中散布という
       のはマツノザイセンチュウがマツノマダラカミキリにくっ付き、それがば
       らまかれるのを防ぐ方法です。それ故、病気になったマツを注射などで立
       ち直らせるのはこの病気に限っては不可能です。           
        生育過程のいつの時点でマツノザイセンチュウがマツノマダラカミキリ
       に付くかといった事については、被害木の中でマツノマダラカミキリが蛹
       から成虫になった時です。成虫になったとたんにマツノザイセンチュウは
       マツノマダラカミキリの成虫に取り付きます。            
       
高橋委員  :  マツノマダラカミキリが無差別にクロマツに取り付くのではないと思っ
       ていますが、どうなのでしょうか。                
       
小林委員  :  クロマツの活性に関係無く、無差別に取り付きます。半年も何も食べて
       いない成虫は腹を減らして出てきます。外に飛び出して最初にすることは、
       マツが健全であろうが衰弱してようが、あるいは老いていようが若かろう
       が関係無く飛びつき、マツの小枝の皮の柔らかい所をかじります。その行
       為によってマツノザイセンチュウがマツに移ります。それ故、衰弱したマ
       ツだけに取り付くわけではないのです。               
        また、卵を産む時、マツノマダラカミキリがまず餌をとって成熟します。
       出てきた時には雌は成熟した卵を持っていません。雄も雌を追いません。
       とにかく餌を食べます。雌は餌を食べて成熟して初めて、衰弱し死んでい
       くマツの特別なにおいに惹かれれてその木のところで卵を産みます。卵を
       産むのとマツノザイセンチュウをばらまくのは別行動なのです。   
       
高橋委員  :  マツノマダラカミキリが移動するのを防ぐのが水際と思います。マツノ
       ザイセンチュウがマツに入ってしまってからでは回復はかなり難しいと思
       います。入る前の段階でなんとか防げないか。それをどういうふうに判断
       するかが、マツノマダラカミキリの移動にかかってくるのだと思っていま
       すが。                             
       
小林委員  : 被害木からは、翌年の6月半ば過ぎに成虫が飛び出し始めます。飛び出
       した成虫は餌をとり、元気なマツの小枝に取り付きます。そこを妨害する
       のが薬剤散布です。マツノマダラカミキリは餌を食べにいったところで薬
       に触れて死にます。これが空中散布の効果です。それから虫を飛び出させ
       ないための伐倒駆除もあります。マツノマダラカミキリが飛び立たなけれ
       ば完璧な駆除方法です。
       
鈴木委員  :  この区域変更によって面積が減になった場所で国道7号線沿いなどは、
       その後、樹種転換などをやられるのでしょうか。          
     
事務局   : 今は枯れマツの処理だけを行っていますが、保安林の場合は県の治山事
       業等で植栽していくことを検討しています。またJRも計画的に植栽して
       いくことになっています。ただし面積が大きいため、かなりの費用がかか
       ります。公的な事業で植栽するだけでなく、できれば市町村のイベント等
       を計画しながらやっていきたいと考えています。           
        また、植える樹種もクロマツだけでよいのかといった問題もあります。
       場所によっては様々な樹種があります。まだ、どのような樹種が良いのか
       はっきりと言えませんが、検討をしながら植栽を考えていきます。   
   
小林委員  : マツノマダラカミキリもいなくなった全滅状態のマツ林を整理していく
       ことは賛成です。そうでないと、人の心がすさむような感じがします。 
        そういった所で生き残ってるマツは育種から見たら宝です。100年後
       に秋田の海岸松林を支える抵抗性のクロマツを10年以上も秋田は探そう
       と一生懸命森林技術センターがやっていますが、抵抗性クロマツは一本も
       見つかっていません。整理することもよいですが、是非生きているマツは
       伐らないでほしいです。                      
       
事務局   : 枯損木を伐採する場合、現場で生き残っているマツは残しています。 
   
小林委員  : 抵抗性クロマツは発見されていないので、1本でも見つかると百年後の
       秋田県が楽しみです。                       
       
阿部議長  : 今から6、7年前、九州の天草に連合会の役員で視察に行きました。九
       州には松くい虫に強いクロマツがあるということで・・・。聞いたところ、
       しっかりとした理論的な研究の裏付けはないとのこと。松くい虫に犯され
       なかったマツからとった苗木を全国的に販売しているとのことでした。 
       
小林委員  : 松くい虫の抵抗性の育種は昭和30年代から行われ、九州が一番進んで
       います。何度も検定されて確実な抵抗性の判っているクロマツはあります。
       検定済みの苗木も売り出されています。それを秋田に持ってきてもあまり
       調子がよくないようです。8割方枯れたと聞いています。       
       
事務局   : 森林技術センターの方で研究しているが、植栽後の生育があまりよくあ
       りません。また去年、宮城県で6品種の抵抗性クロマツが新たに確認され
       ましたが、種苗法の関係で宮城県から持ってきてすぐ植えるということは
      今のところできません。                      
       
那須委員  : 今生き延びているマツについて100年後には貴重だという話ですが、
       この土地で育って今生き延びているマツの遺伝子を活用して品種改良でき
       ないものなのでしょうか。                     
        それと17年度の防除対策関連事業で、新規事業に1億1440万円の
       予算がありますが、全部国が経費を持つのでしょうか?。八森町から4市
       町村にかけて、3年間で県の持ち出し無しで十分に効果を上げることがで
       きる金額なのでしょうか。                     
       
事務局  :  品種改良ついてはセンターの方でいろいろとやっていますが、まだはっ
       きりこれがいいというのは判っていません。1年、2年ですぐできないの
       が現状です。これから何年かかるか分かりませんが、方法として検討して
       います。                             
        新規事業は、県が国から委託を受け国が100%負担する事業です。県
       単事業など従来の対策に加えて実施しているものであり、3年間で効果を
       上げるように努めていきます。                   
       
那須委員 : 山脈の反対側、県境に接している岩手県、宮城県、青森県の現状は把握で
      きていますか。                          
       
事務局  : もちろん、岩手県、宮城県にも松くい虫は入ってきています。岩手県は盛
      岡市手前まで被害が及んでいます。                 
       最初の頃は、マツノマダラカミキリ自体が気温が13度以下では生育でき
      ないという話でしたが、環境に順応しながら北上し、南の方では、逆に被害
      地の標高が上がってきているのが現状です。             
       青森県と秋田県の境が被害の先端地域です。            
                                        
 
阿部議長 : 他に意見質問が無いようでしたら、この辺で議案第1号について、適当で
      ある旨答申することを決定してよろしいでしょうか。         
       
委員   : 異議ない旨の発言。                       
     
阿部議長 : ではこの議案第1号については、適当であると認め知事に答申することと
      いたします。                           
       それでは、この議案に供した答申文の作成については、会長に一任してい
      ただいてよいでしょうか。                     
       
委員   : 異議ない旨の発言。                       
   
阿部議長 : それでは、答申文の作成は会長に一任していただくことに決定いたします。