令和7年1月6日月曜日 県正庁
 
 新年明けましておめでとうございます。
 今年は大分雪が早くて心配しました。特に県北の方が大分多い状況です。青森県があの状態で、今日から大分温度が上がりますが、いずれ降っては解けてという繰り返しですが、今日から気温が高くなりますので、落雪に十分に注意するようにお願いします。雪下ろし等の事故も既に1件起きていますが、この後も特に繰り返して注意を呼び掛けてほしいと思います。
 今年のお正月休み、9連休、大変長い休みです。ただ、危機管理部門、除雪、福祉・医療、クマ対策も含めて、年末年始、休めない職員が多くいたと思います。まずは大変にご苦労をおかけしました。ありがとうございました。
 私がこの場で年頭のあいさつをするのは今回が最後であります。まずは残り少ない期間でありますが、皆さんと共にしっかりと仕事をし、次の代に悔いのないように引き継ぎたいと思いますのでよろしくお願いします。
 これから当初予算の編成が始まります。当然に骨格予算になりますが、県政の停滞というのは一時もあってはならず、この後に述べますが、様々に今年は色んなことが起きると思います。まずは事の本質をしっかり見極め、骨格予算でありますが、当然にスピーディーに取り組むべきものについては、次の知事の判断次第で、すぐに執行可能な概括的な予算プランを付加しておくということにしたいと思います。そういうことで、皆さんには色々とこの後どういうことが起きるか、どういうことが必要か、まずは様々な観点からそれを考察し、いろんなプランをしっかり作って欲しいと思います。
 さて、行き過ぎたグローバリズムには問題がありますが、私ども日本は資源小国です。全てのものが海外の動向で決まります。私が県庁に入った時は日米繊維交渉、そしてあのオイルショック、そしてその後様々に農産物の自由化、そしてリーマンショック、すべてその時々は、県庁で一番色んな面で忙しい時です。残念ながら日本の国、自治体だけで、すべてを仕切ることはできません。特にそういう意味から、今年は海外の動きを中心にどうあるべきか、その対応を述べたいと思います。
 個別の話はありますが、是非とも今日少し大きな話をしますが、当然、大きな話であっても、我々行政に相当関係しますし、また、考え方も行政に共通しますので、お聞きいただきたいと思います。
 まずは国際情勢です。
 アメリカの力がなくなったとはいえ、まだ世界で一番強大で大きな国です。そのアメリカでトランプ大統領がこの1月に大統領に就任します。あくまで現時点での想定ですが、ウクライナや中東情勢、さらに中国と台湾の情勢、北朝鮮情勢、どのようになるか、全く目が離せません。特にこの点で相当様々な面で影響があるのではないかと思っています。特に二つのことを話したいと思います。
 まず、トランプ大統領は一貫して中国に対する貿易面で対決姿勢です。特に日本の製造業、アメリカ、中国とのお付き合いが一番多い。そうしますと、この両国、日本の経済、相当軸足を置いています。そうしますと、関税等の貿易面でアメリカが中国を封じ込める政策をとりますと、日本経済が相当ダメージを受けます。私が県庁職員時代、特に私も県庁職員になって、ほとんど海外の情勢変化、この時に一番仕事が大変だということが何となく実感しています。私が昭和48年か、47年、県職員になった時に日米繊維交渉があり、これで日本の繊維がほとんど駄目になりました。本県でも、例えば横手、あとは大内、岩城、あそこら辺に繊維工場があったのです。これが全滅です。そして、ドルショック、オイルショック。あの頃はセメントがなくて、県庁でセメントを斡旋していました。電線も県職員が一件一件回って工務店などに、電線の配給をやっていました。その後のリーマンショックは私が県知事になった時です。あの当時、電子工業が全滅です。当時、県職員の給与をカットして、それを中小企業対策に充てたということがあります。日本は何かあればすぐに海外の影響を受けます。そういう意味で、特に中東情勢の関係でスエズ運河がどうなるか。また、台湾情勢。これは日本の命運を左右するエリアです。もしそこで小競り合い、紛争が起きれば、日本の経済は全面ストップします。燃料は入らない。食料も入らない。どうするか。あってはほしくないです。しかし、今、そこまで緊張感があります。これは日本の防衛政策だけではどうにもならない。これをどうするか。また、確かにインバウンドは今、盛んですが、このインバウンドも万が一、日本近海で何か紛争があれば一瞬で止まります。全くそういう状態です。いずれそういうことで、海外情勢をしっかり見極めながら、幸い本県は食料資源、エネルギー資源があります。これをどういうふうに我が県に有利に活用するか。少しぐらい利己的でもいいです。県民を守るために、そのくらいの気概を持って仕事をしてほしいと思います。
 あと少し余談です。リモートワークについては、トランプ大統領、そしてあのテスラのイーロン・マスクは、全く反対です。トランプ大統領はリモートワークで出勤しない社員はクビだと。ソフト、ITを一番覚えているイーロン・マスクも、なんとリモートワークは反対です。これは何だろうと考えてみました。これは半分私の思い込みです。イーロン・マスク、アメリカは100キロを超える通勤距離を車で移動します。もしアメリカでリモートワークがどんどん進めば、会社に行く必要がない。(そうなれば)車が売れないです。EVも売れない。売れなくなる。多分、そんなことでないかなと思います。
 また、トランプ大統領はホテル業が中心です。ホテルの仕事はリモートワークではできません。対人サービスです。そういう意味でトランプ大統領の頭にはリモートワークという概念がないと思います。そんな深読み、これはあくまでそういう意味で、私なりの解釈ですが、まずそんなところでないかなと思います。
 ということで、これを深読みすれば、トランプ大統領とイーロン・マスクの二人が世界を動かすという状況になれば、まずは二人は極めて現実主義者であり、そしてビジネスライクな人物ではないかと、そういうふうに見えます。即ちアメリカの利益にならないことはやらない。そして、今のUSスチールの問題、あれはアメリカが海外資本に支配されることを大変嫌うという、そういう状況です。そうしますと、関税が相当高くなりますと、日本の生産が止まります。海外生産の方が多くなります。そして、様々にアメリカに輸出するこの状況。国が輸出政策を進めていますが、そう簡単にはいかないと、そんなふうにも考える必要あります。
 次に、我が国の国内情勢です。
 まず国政です。参議院選挙があります。どうなるか。少数与党で、これから様々な影響があります。まずはどんなふうになるかわかりませんが、何が正しいか、これは議論が分かれますが、いずれ財政力の弱い多くの自治体は目が離せないという状況です。また、今一つ、様々な議論があるのは当然だとして、日本の行く末、取りも直さず地方の大きな問題でもございます。また、人口減少問題でも関連します。かつてジャパンアズナンバーワンという時代がありました。ところが、今は急速に落ち込んで、日本は相当経済力が落ちています。何で日本だけが下降しているか。これをどういうふうに分析するか。私なりの持論ですが、これは行政にも非常に関係があります。日本人は非常に勤勉です。真面目です。社会秩序をしっかり守ります。このこと自体は、日本人は大変評価が高いです。しかし、経済はすべてではないものの、日本がこのように落日になっている状況をもう少し深読みしますと、様々な解釈があります。例えば、日本人はイノベーションと言います。行政でも民間企業でも、これまでやってきたイノベーションは何でしょうか。今あるもの、今ある原理、今ある状況、これをちまちまと改善、改革と称して変えていくという、根本の問題、これをどうするかです。日本人は今あるものを改良することは素晴らしいです。ところが、今あるものでどんなに改良しても壁に当たる。今はこの状態です。これをプロセスイノベーション。ところが、プロダクトイノベーション、全く考えを変える、原理原則を変える、この方式が日本にはそうはありません。行政もそうです。すべて今の現行法上で何とかする。現行法上で少し中に何か付加する。これを海外では、方法をどんどん変えます。分かりやすく言います。身近な例で言いますと、かつて日本の電化製品は世界1位という状態にあった時代があります。確かに今でも性能、持久・耐久力で世界を凌駕する電化製品もございます。しかし、例えば扇風機は羽があるものというのが日本人の考えです。ところがダイソンの羽の無い扇風機や空気清浄機が今、出回っています。あの発想が日本人にあったかどうかです。また、今、世界で一番売れているアメリカ製のシャークという掃除機は、ハンディタイプで充電式、そしてごみをいちいち掃除機から取らなくても、セットすると黙っていてもダストボックスに吸い込みます。これがばか売れです。日本の重い掃除機は、ハンディタイプでもいちいちごみを取る必要があります。あんなことをしなくてもいいのです。まさに、これがプロダクトイノベーションです。原理原則、すべてを変える。特にこういう半導体部門、電子機器、車、すべて過去の栄光、そして今までの流れを継承するという。日本のプロダクトイノベーションについては、日本人に何となく、その気概がない。今の日本の状態は、どんよりとした曇りの状態です。空一面が曇りです。しかし、このどんよりとした曇りの中で、何かこちゃこちゃやっています。ただ、雲を突き抜けて、雲の上に行けば青空です。雲の上まで飛ぼうという気概があるかどうかです。雲の上は全く青空です。まさに今の状況は、そういう雲を飛び越えて青空を見ようとする、こういう気概が日本人になくなってきました。海外に出張しますと、非常に雑然としています。しかし、あの雑然とした中で、あの海外の元気さ。リスクがあっても雲を突き破る、このくらいのやる気、元気が海外にはあります。日本人が今の秩序を当り前と思って安閑としている。まさに、これが日本の人口減少の最大の原点と思います。行政の面でも様々にこれまでやってきた。ところが、そう簡単にはいかない。これを延々とやっていくという、これが一番非生産的です。ガラッと全く考え方を変える。別の方法があるかないか。今後の地方行政の動向も地方の自治体間の格差もここにあります。今やっていることを変えるということは抵抗勢力もあります。しかし、思い切って別の方法を考えるという、これが必要な時代です。まさにプロセスイノベーションからプロダクトイノベーションへの変更、この方法の選択、これが一番今必要です。
 そういうことで、若干、今の地方創生についてです。あまり言い過ぎてそこだけを切り取ってもらうと困りますが、今、移住・定住、交流人口、関係人口、二地域居住、リモートワーク、すべてこれは人口減少問題、あるいは、日本の地方創生の原点の施策ではないです。あくまでこれは幹ではなくて枝葉です。幹が何であるか、私自身も何があるかと言われれば、簡単に答えは持ち合わせていません。ただ、何となく地方創生といっても(大切なのは)日本創生です。地方創生だけではないのです。当然交流人口、関係人口をやることは必要です。また、インバウンドが本県にとっては、まだまだ必要で、どんどんやることは必要です。しかし、これがすべてで、これで地方創生となるかとは、全く私はそうは思えません。幹の部分がどうなるかです。この議論をしていません。これを議論しないことには、本当の日本の創生にはならないと思います。そんなことが、様々にこれからありますが、まずはこういうことをしっかり、枝葉の部分をしっかりやりながら、幹の部分をどういうふうに考えるかです。本県の有形無形の資源、あるいは人情、文化、様々にあります。これをどう生かしきれるかです。国が何かやってくれるかだけではないのです。当然、国にも期待しますが、国だけに期待をしても前には進みません。自分方で、自分の持っている、我々の持っているこういうものをどう使うかです。これをしっかり考えてほしいと思います。特に今年は相当情勢変化があります。そういう中でどうするか。すべての仕事において幹の部分をどうするか。今の状態でいいのかどうか、これをしっかり考えて、この1年間、皆さんには頑張ってもらいたいと思います。そういう意味で、まずは様々にこれまでの経験を生かしながらも、その経験から脱却するような新しい考え方、勉強も必要です。情報収集、オールジャパンで、そしてインターナショナルで、国際的な情勢変化、これらをしっかり見極めて、先手を打つ。これを是非やってほしいと思います。そういう意味で、残り3か月半、来年度予算査定もありますので、これを通じて、様々な分野について、私も思うところを言いますので、是非このあと3か月半ですが、是非皆さんにはご協力願えれば幸いです。
 以上で年頭のあいさつにいたします。
 皆さん、よろしくお願いします。