1月4日(火) 県正庁

 職員の皆さん、明けましておめでとうございます。
 この年末年始は天候も例年になく荒れ模様で、防災の担当並びに建設部の除排雪担当の皆さんには、大変にご苦労をお掛けいたしました。
 また、コロナの方は、本県の場合、大分落ち着いておりますが、隣県においてもオミクロン株の感染者が出て、この三が日、私どもは随時メールのやりとりをし、この後、本部会議を開催し、対応を決定するところですが、危機管理部門並びに福祉保健部の皆さんには、正月休みにもかかわらず、大変にご苦労をお掛けいたしました。
 現時点で、昨年ほどの積雪ではありませんが、今後とも屋根の雪下ろしや除排雪時の事故防止、農作物の被害防止に注意を払っていく必要がありますので、気を抜かずに、担当部局においては万全を期すようにお願いいたします。
 このような中で、本年もおそらくは当分、新型コロナウイルス対策に注力しながら、新しい時代、新たな価値観の時代に向けて、必要な施策・事業を遅滞なく進めなければならないと思います。
ただ、コロナも3年目に入り、治療方法やワクチン接種の進展、各種の知見の集積により、当面は基本的な感染対策や適時的確な人流抑制をしっかり行う必要はありますが、初期の感染拡大時のように、いたずらに過敏になる必要はなく、経済の回転をできるだけ止めることなく、検査・医療体制を拡充、維持しつつ、適切に対応する方向にもっていく必要があるものと考えております。
 ただ、いまだ明確な知見はございませんが、オミクロン株は感染力が強い反面、重症化率が低いとされており、まずは3回目のワクチン接種をスムーズに行う必要があるものと思っております。ただ、イスラエルでは3回目のワクチン接種を済ませた人も感染したという事例が出て、4回目の接種も始まるようでもあり、いまひとつ今後を見通せないことも確かであります。
 しかし、一般のインフルエンザにおいても、私も二度の感染経験がありますが、ワクチン接種を済ませても相当程度感染する場合があることを考えれば、ワクチン接種は感染から完全に防御するものではなく、重症化を防ぐものと認識すべきものであり、この点において我が国の場合は、ワクチンの基本的効能に関し、国民は少し誤解しているような気がしており、いま少し国や自治体は、ワクチンに関する基本的効能を丁寧に示す必要があるように感じております。
 実は今回の新型コロナウイルス感染症に関し、当初から、もちろん県においてもそうですが、国においても、例えばウイルスというもののみならず、ワクチンの効能とは、抗原検査とは、PCR検査とは、そもそも何ぞやという、対象物の基本的情報を明確に示すことがなかったように思っております。政治・行政を司る者もこれらの点を明確に理解せず、ただ国民に、こうして、ああしてと言うだけ、また、表面上の議論に終始しているということもあったように思います。
 今般の新型コロナウイルスの事案を考察しますと、これらの点を明確にせず、対応策を進める傍らで、国民がマスコミやSNSから各々論点や考えが異なる様々な情報を得ていることにより、受け手である国民が混乱し、何となく情緒的、かついたずらに恐怖心を持つことにもつながっているように思えてなりません。これは新型コロナウイルスばかりでなく、様々な危機管理事案、さらには多くの行政施策や企業においても同様であり、それら施策・事業を自信を持って進めるためには、我々もいま一度、物事を掘り下げ、ものによっては歴史的考察も含め、定義、根拠、本質的な目的、手法等の妥当性を明確にし、しっかりと県民に説明することにより、よりスムーズに目的に到達することができるのではないかと考えております。
これらの点を踏まえ、今日は本年の重要な施策について幾つか述べさせていただきます。
 まずはグリーンイノベーションであります。
 世界各国の動きは想像を絶するスピードで進んでおります。また、何となくグリーンイノベーションという言葉からは、明るい未来をイメージしがちですが、急激な気候変動により、実は極めて深刻な状況が世界的に勃発しており、次の世代にかけがえのない地球を引き継ぐためには、例え失うもの、捨て去らなければならない価値観があったとしても、情緒的な思考を排しても進めなければならない状況になっているということを認識すべきであります。
 例えば、アメリカ西海岸では、極度の乾燥により山火事が勃発し、市街地まで被害が及ぶ深刻な事態が増加しております。また、超大型のハリケーンの出現が頻発しております。一方で、ハワイで雪が降ったり、アフリカや中近東の砂漠化の進展、中国の想像を絶する大雨、ロシアシベリアで30度を超える高温によるツンドラ地帯の融解、日本でもドカ雪、豪雨、空前の台風の襲来などなど、少し大げさに言えば、人類の生存環境が脅かされつつあるということであります。
 また、これらの現象は、世界の食料生産の不安定にもつながり、特に食料自給率が低い我が国では、食料の安全保障という概念もしっかりと持つべき時になっております。
 一方で、世界の大きな潮流に第4次産業革命、すなわちデジタル化があります。デジタル化は、まさに革命という名にふさわしく、単に技術的な側面ばかりでなく、幅広く社会構造を大きく変化させる要因でもあり、今や産業社会のみならず、社会の必需品としてあらゆる分野におけるデジタル化は避けられない状況にあります。
 一方で、デジタル化は、スキルを持つ人間と持たない人間の格差を生み出す側面もあり、その意味では厳しい世の中になるとも言えます。また、大企業が集積し、デジタル化は大都市部と地方の格差を生み出す要因にもなります。
 しかし、デジタル化は物理的な距離を超越することが可能であり、また、例えば農業における農機具の無人自動運転も可能にするなど、設備機器のデジタル化により、人手不足の解消や熟練技能の復元も可能にするほか、地方にいても首都圏と結び、高度な仕事や世界を相手に商圏を拡大するなど、地方への人の移動や地域の活力の復活にもつながります。
 少し話を変えます。
 先般の地元紙に本県の寛容性は全国の最低レベル。特に若い女性の評価が低いという記事がありました。私が前々から言っていたことです。加えて、数年前のある調査では、本県の高齢者の子どもに対する寛容性も全国で低位というものがあります。
 私は当然に人を害することや迷惑を掛けることは論外ですが、人間は仕事では自らを正当に評価してほしい、プライベートではできるだけ不条理な拘束をしてほしくないというのが、普通の心情ではないかと思います。当然に組織の中の一員であることや、仕事を進めることにおいては、一定のルールの中で行動をすることにより社会が成り立つもので、そのルールが合理的で公平なものであれば受け入れるでしょうし、プライベートでも納得感があれば受け入れるでしょう。
 それでは、秋田の寛容性の低さとは何でしょう。女性の場合には、そもそもの男女の差別意識や男の下に見る封建的な意識、プライベートにおける周囲の自らの行動に対する過度の干渉や地域のしきたりの強制などではないかと思います。男性の場合でも、地域愛ゆえかもしれませんが、昔はこうであった、この地域ではこうすべきだ、町内の行事には出るべきだという押し付けが強いのではないかと感じております。特に高齢県ということで、かつての古い時代の価値観を持つ高齢者の発言や思考が地域社会に強く反映され、また、現代っ子気質に対して理解が不足しがちになるということではないでしょうか。
 ある一例でございます。私はこういう経験があります。子どもさんのいる若い夫婦の方から、共稼ぎで土日の休みにしか家族一緒に出掛けることができないのに、町内会のビール会に出ないと何かと冷たい目で見られるという声を聞いたことがございます。かつての時代と異なり、情報化の中で若い女性も休みには華やかな服装で街に出たいと思うのは当たり前、女性同士の飲み会も日常のこと、夫婦共稼ぎは当たり前の時代、せめてもの休みには家族一緒にいたいと思うのは自然な姿であります。
 以上、少し前置きが長くなりましたが、これらの視点を踏まえ、これから本年の仕事上の重要な事項について述べさせていただきます。
 まず一つは、グリーンイノベーションに関することで、いよいよ年末には2海域の洋上風力発電の事業者が選定されました。これから壮大な事業が開始されます。しかし、かつて秋田は様々な自然県であったにもかかわらず、これを秋田の産業が多くは取り込めなかったということがあります。今般は県内企業も事業者に入っており、また、水面下では多くの県内企業で建設、メンテナンスのみならず、各種部品等の供給の話も進んでおります。当然に地域振興のための基金の制度化は必要でございますが、重要なことは、いかにこれから数十年間、この事業に県内企業が食い込み、また、その経験を技術力に結び付け、単に風力分野のみならず、多様な分野での新製品開発や受注力向上に結び付けるかが鍵になります。さらには、グリーン電力の地産地消の発想をEVや先進企業の誘致、さらには農業生産などに結び付けることも、若者の雇用拡大や県内賃金の向上の重要な要素になります。
 また、CO2吸収源対策と本格的な国産材を秋田からという意気込みで、林業・木材産業振興に結び付く再造林対策に力を入れることも重要になってまいります。
 加えて、中国が食料輸入国に変わり、気候変動による世界の食料生産が不安定になるにつれて、本県は食料供給県として米消費の減少の中にあっても一定の米生産基盤を維持しつつ、中山間地対策を含め、さらなる農業基盤整備による米以外の多様な農畜産物の拡大が必要です。もちろん、例えば消費量が減少しても、今後期待できます輸出の増大も含め、本県産米のフラッグシップ「サキホコレ」の本格販売に万全を期する必要があります。
 さらに水産業においても、気候変動は海の変化をもたらしており、かつてのノスタルジーにつかることなく、養殖漁業に舵を切ることも必要であります。
 また、本県は災害安全度日本一というデータもございます。高速交通体系の整備や今後の洋上風力発電事業のベースとなる港湾整備とともに、より県土の強靭化を図り、治安の良さも含め、企業誘致の武器の一つにする発想も必要です。
 次に、デジタル化の進展については、ただやみくもにやっても、かえってコスト倒れになりかねないということをまずは基本認識として、県内中小企業の利益につながる適切なデジタル化に、より注力する必要があります。当然に県政推進に役立ち県民に使いやすい行政システムのデジタル化も、新たなフェーズに入ったことを認識してください。
 特にデジタル化で最も大切なのは人材育成ですが、私は世界中どこに行っても活躍でき、もちろん県内における将来のデジタル化の先兵ともなる児童生徒のデジタル能力を日本一にしたいと願い、指導体制のアウトソーシングを含め、思い切って進めていきたいと思っております。
 最後に、若い女性の県内定着が県政の最重要の課題となっている折、当然に企業の賃金水準の向上も含め、ダイレクトな施策も導入することはもちろんでございますが、何事にも正しい寛容性にあふれた秋田に変えるための条例の制定、加えて、条例の主旨を県内隅々にまで拡大するための様々な現場レベルでの意識醸成事業も大きな仕事になります。
 これに関して、県として大いに若者に対し、寛容性を示す一例として、芸術劇場がいよいよ本年完成するのを機に、些細なことではありますが、例えば各種のイベント時のみならず、ロビーのホールを活用し、男女とも若者が、非日常的な華やかかな服装やヘアスタイルで都会的なゴージャスな雰囲気の中で交流パーティーを開催できるような取り組みを後押ししたり、あるいはデートや仲間同士で楽しめる場にすることも一案ではないかと思っております。テレビで大都会の華やかさを見ている若者にとっては、たぶん、あの芸術劇場は、県内唯一の華やかな場所に感じられるのではないかと思っております。
 以上、様々述べましたが、これらは単に担当部局が行えばいいというものではございません。全ての部局に関連がございますので、職員の方々は、所属のいかんにかかわらず、県職員としての共通認識としての意識を共有し、まずは今年一年、しっかりと仕事に当たっていただくことを希望いたしてございます。
 2022年、令和4年、新型コロナウイルスの行方が未だ不明確ですが、しっかりとかけがえのない秋田を次の世代に引き継ぐための節目の一年と認識し、仕事を進めていただくことをお願いし、年頭のあいさつといたします。
 皆さん、一緒に頑張りましょう。