NO!コロナ差別 誹謗中傷防止呼びかけのため対談を実施しました

2021年08月12日 | コンテンツ番号 59590

県内においても、新型コロナウイルスの感染に伴う誹謗中傷が確認されることから、その未然防止のため、令和3年7月26日(月)に関係団体等の方をお招きし、誹謗中傷防止を呼びかける新聞広報用の対談を行いました。
対談は8月15日の地方紙に掲載し、県民の方々に差別や中傷を行わないよう呼びかけました。紙面に掲載できなかった内容を含め、全文を掲載します。県民の皆様のご理解とご協力をお願いします。
なお、対談の実施に併せ、誹謗中傷の防止を呼び掛けるテレビCMを制作し放映しています。その内容についてはこちらをご覧ください。

日 時

 令和3年7月26日(月) 16時00分~16時30分

会 場

 県庁舎3階 第1応接室

参加者(敬称略)

 知事 佐竹 敬久
 横手市立大森病院院長 小野 剛
 秋田県PTA連合会会長 加賀屋 久人
 県内学生 角崎 歩美
 秋田弁護士会 塚本 祐文

対談内容(全文)

【知事】
 様々なことに関する誹謗中傷やいじめの問題がありますが、今回の新型コロナウイルスに関しては、いろいろと報道もされておりますが、非常に悪質で、人間の尊厳を傷つけるひどいものがたくさんあります。例えば、感染した方の家に卵が投げつけられる、「町内を出歩くのをやめてくれ」と言われる、などがあります。看護師の方が近所の人に「家に帰ってくるな」と言われた、というものもありました。また、子どもさんが転校せざるを得ないという事例、長年いる場所にいられなくなったという事例もあります。これは、生活権の侵害です。
 言っている本人はそうピンと来てないと思いますが、結果的には、非常に相手を追い込むことになっています。これはやめてもらわないと大変です。地域のイメージや移住定住、企業誘致など全てに悪影響が及びます

【市立大森病院 小野 剛 院長】
 当院では、1月に新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生しました。その際、病院の職員やその子どもさん、家族の方々に対して「学校に出てくるな」、「職場に出てくるな」、「スーパーで買い物をするな」というような誹謗中傷の言葉がありました。
 地域の医療を守るために日々頑張っている医療従事者にとって、このような差別的な言動は心を痛めるものであり、医療現場の意欲の低下につながると思っています。10個の励ましの言葉があっても、1つの誹謗中傷の言葉で病院職員の心の温度は下がってしまいます。
 また、誹謗中傷が原因で医療従事者が職場を離れてしまった場合は、地域医療の崩壊にもつながりかねないと思います。ぜひ県民の皆様には、誹謗中傷や差別的な言動はやめていただきたいです。
 今回のクラスターの発生で分かったことは、地域の皆さんが、正しくない情報を基にいろんな言動をしていることがあるということです。正しくない知識や情報で左右されるのではなく、新型コロナウイルス感染症を正しく理解し、正しく恐れ、正しく対応する。そして、お互いを理解し合えるような、そういう地域であってほしい。
 今回そのようなことを痛感しましたので、医療従事者が働きやすく、地域の皆さんが住みよい秋田県であっていただきたいなと思います。

【秋田県PTA連合会 加賀屋 久人 会長】
 私もいろいろな話を聞くことがあります。感染されたお子さんの学校名が公表されたことにより、ご家族が大変な苦労をされるのを目の当たりにしました。その際、全く事実とは異なる噂が流され、ご家族を含めどれだけ傷ついたかということは、察するに余りあります。先ほど知事もおっしゃっておられましたが、人間の尊厳が侵害されている状態です。
 PTA連合会では、現在、広報誌で「感染した方々には優しさを ウイルスと戦うすべての方々に感謝を」ということで、感染者や家族、濃厚接触者ら関係者などに対する偏見や差別、SNSなどでのバッシングはやめましょうということ、医療・物流など暮らしを支える方々への理解を深め、感謝をしましょうということを発信しています。
 また、愛媛県から始まったシトラスリボンプロジェクトに賛同しています。感染が確認されたその後に的確な対応ができるかどうかでその地域のイメージが左右されるということは、そのとおりだと思います。このプロジェクトは、愛媛県を中心にやっているものですが、秋田県でもぜひ同じように、関わる人達を守って、そしてお互い様であると。コロナにかかりたくてかかっている人は誰もいませんので、お互いを思いやる気持ちをもって、このことに当たっていかなければならないと思っています。

【県内学生 角崎 歩美 さん】
 私の周りでは、今のところ感染による誹謗中傷を聞いたことはありませんが、新聞やニュースなどで、秋田県内でも誹謗中傷や陰湿な事例があることは知っています。誰もコロナにかかりたくてかかっているわけではないのに、感染したことで地域に居づらくなるなどということはあってはいけないことだと思います。秋田県のようにコミュニティが狭い地方では、どうしても噂がすぐに広まってしまいますが、その噂が絶対に正しいとは言えません。
 若者の間ではSNSが普及していますが、SNSは匿名で簡単に誹謗中傷の投稿ができてしまうという負の側面があります。簡単に誹謗中傷ができてしまうからこそ、私も、日々の生活でSNSを利用する際には注意して、知らないうちに誹謗中傷をしてしまわないよう責任をもって行動しています。
 先ほど知事がおっしゃった、地域のイメージが悪化して企業誘致などに影響があるということについてですが、私は地域活性化やワーケーションについて学んでいます。秋田県は自然が豊かで、働くにはとてもいい場所だと思っています。このような素晴らしい県が、誹謗中傷でイメージが悪化してしまうと、秋田で働きたいと思っている人や、県内に事業所を設けようとする企業にどうしてもそのイメージが伝わってしまい、関係人口も減少してしまいますので、誹謗中傷は絶対にしてはならないと思います。

【秋田弁護士会 塚本 祐文 弁護士】
 誹謗中傷でどういった法的責任が生じるかということについて説明します。
 まず、誹謗中傷によって人権侵害が生じます。個人の名誉権であったり、会社やお店、病院などの営業権等が侵害されます。
 また、コロナの誹謗中傷で特徴的だと思うのは、まるで犯人探しをするかのように感染者を特定し、それを広める動きがあることです。感染者のみならず、その家族や勤務先などの情報までもが特定され、それをネットに書き込むなどして拡散されるという被害が起きています。これによって個人のプライバシー権の侵害が生じえます。
 こういった権利侵害があった場合の民事的な責任としては、まずは慰謝料などの損害賠償責任が考えられます。また、刑事上の責任も生じえます。具体的には、名誉毀損罪や侮辱罪、それからお店などの活動を妨害したとなれば業務妨害罪の成立も考えられます。
 それから、コロナに感染したいきさつについても、例えば、行政から不要不急の外出を控えるようにという要請が出ているにもかかわらず、それに反して県外に遊びに出ていって感染したなど、感染経路に世間から非難されるべき事情があるような場合でも、だからといって、不当に差別したり誹謗中傷したりすることは許されないということを心に留めておく必要があると思います。仮に感染者に落ち度があったとしても、これに対する不当な人権侵害が正当化されることはなく、法的責任は免れません。
 こういった被害に対して法的に対応する必要がある場合には、弁護士会では、随時法律相談センターを設けておりますので、弁護士に相談することも検討していただければと思います。
 ただ、これらの民事責任、刑事責任を問うというのは、あくまでも事後的な対応です。一度不当な差別、誹謗中傷が起きてしまうと、いくら法的な責任を問えるといっても、それで差別された事実、誹謗中傷を受けたという事実が消えるわけでありません。また、話を見聞きした人の記憶を消すことはできませんから、元通りにする、無かったことにするということは不可能です。先ほど角崎さんがおっしゃったように、SNSなどネット上で誹謗中傷が行われることもありますが、拡散するスピードや範囲などにおいて、ネット上の差別・誹謗中傷の影響力というものは、一昔前のビラや張り紙などとは比べ物になりません。
 ですから、大事なのは差別・誹謗中傷が起きないように予防していくことだと考えます。今回のような啓発活動を通じて社会全体の意識が高まれば、未然に防ぐことにつながるのではないでしょうか。
 いつ誰が感染するか分からない状況です。感染者を差別・誹謗中傷する人は、もし自分が感染すれば同じ目にあうかもしれないということをしっかり考えるべきだと思います。

【秋田県PTA連合会 加賀屋 久人 会長】
 私は、仕事が幼児施設の運営なのですが、周辺の学校などで感染が起きると、そこに自分の子どもを通わせている職員であったり、そこにご兄弟がいる保護者がいた場合に、お子さんを預けておられる医療関係の方から、「どこのクラス、どこの学年で起こっているのかを知りたい。濃厚接触者じゃないという保証がないと私たちは病院に行けません。誰にも言わないので教えていただけませんか。」というような話をよくいただきます。職場の方ではおそらく、そういう方は職場に来ないでくださいとなっているのだと思います。
 我々も守秘義務がありますが、医療に従事しているような方々などに対して情報提供する場合、どこまでそういったことが許されるのかというのが難しい。皆さんが、もう少し柔らかくいろんなことを考えてくれると、「あなたは大丈夫ですよ」などということは言ってあげられるんですけど、それがなかなか難しい。秋田なりのルールみたいなものは、なんとかならないものだろうかと思います。

【知事】
 個人情報保護法というものがあるので、難しいんですよ。現在はこういう事情で、本県ではある程度本人を特定しないような情報の発表をしていますが、東京都では、発表しているのは感染者の人数だけです。
 クラスターが発生した場合には、予防措置で、施設側が自主的に発表したり、あるいは県・市で発表しています。海外では、国民全体での感染者数の発表はありますが、部分的に、例えば県ごと、市町村ごとの発表をしていないところが多いのではないでしょうか。日本はそこが大らかではない、特異なところなんです。

【秋田県PTA連合会 加賀屋 久人 会長】
 コロナによる人間同士の心のささくれ具合がすごくて、やはりその地域を取り巻く雰囲気といったものがものすごく大事なんじゃないかなということは、常々思っています。
 私がいる幼児教育の業界は、鼻水を垂らしていようが、熱があろうが、目の前で吐こうが、先生は子どもたちに全力で向かっています。医療従事者も同じですが、感染のリスクという点で、子どもを預かっている先生たちも周りから感染についてちょっと言われることがあります。なんとか地域の雰囲気を良くしていただけたらなと思います。

【市立大森病院 小野 剛 院長】
 今のお話は、情報を正しく理解していないということだと思います。テレビや新聞、週刊誌等であまりにもいろんな情報が出ていますが、それを整理して正しく理解していないために、差別的な行動が大変多くなっていると思います。
 例えば、感染者がいても、いわゆる濃厚接触でない限り感染するリスクは少ないと言われています。お互いマスクをしていて、ある程度距離をとって、短時間の接触であれば感染するリスクは少ないわけです。その点を周りの方々も正しく状況を理解していただいた方がよいのではないかと思います。
 医療従事者であっても間違った認識をしている方もいらっしゃいます。今回我々のところでも、職員の子どもさんが熱を上げ、医療機関を受診したところ、大森病院の職員の子どもだからといって、「お母さんは中に入らないで車で待っていてください。」と言われ、問診票に「大森病院職員、子ども」と書かれたということもあったようです。私は大変残念でした。医療従事者、医療機関でありながらそういう認識をもたれているというのが大きな衝撃でした。
 この感染症は、おそらく今後ワクチン接種が進んで収束していくと思いますが、その後この事実を忘れるのではなく、10年後など将来、また新たな感染症が出てきたときにつなげられるように、今回の事実や課題、問題点をしっかり検証しなければいけないのではないかと思います。

【知事】
 誹謗中傷によって感染の拡大が防げないということがあります。誹謗中傷を恐れ、具合が悪くても医療機関に相談せず、どんどん悪化するとか、あるいは、感染した方が周りに迷惑がかかると思い、接触者について話さないなどの事例が実際にあり、そうするとフォローができなくなってしまいます。
 誹謗中傷によって感染のルートを追跡できず断ち切りができなくなり、結果として感染が広がることになります。実害として、名誉毀損などの他に感染症対策そのものが阻害されますので、そのためにも、誹謗中傷を防ぐ運動の理解が得られるように、しっかりやっていかなければならないと思います。

 

新聞広告のPDF版はこちら [2294KB]