7月27日に、本県鹿角市の大湯環状列石と北秋田市の伊勢堂岱遺跡を含む、北海道、青森県、岩手県の縄文遺跡群が世界遺産委員会の審査をパスし、待ちに待った世界文化遺産に登録されました。
 長い間、登録に向け専門的見地から調査研究を続け、各種資料の取りまとめや説明資料の作成にご尽力を頂いた考古学関係を中心とした先生方や職員、資料収集や調査、保存にご協力を頂いた地元の方々、そして後押ししていただいた4道県の国会議員や県・市議会議員など、本件に関わった多くの方々に心から感謝申し上げます。
 私自身も、思えば知事当選直後に盛岡市で開催された4道県知事会議において、麻袋で作った縄文衣装らしきものに身を包み、登録に向け4道県がしっかりと連携し頑張ろうと気勢を上げてから10数年、ついに登録を得たことに深い感慨を覚えています。
 さて悲願の登録を得ましたが、隣接する世界自然遺産白神山地と伊勢堂岱遺跡の本県の二つの世界遺産ともに歴史上大きな岐路がありました。
 かつて、地域振興という見地から秋田県と青森県とにまたがる白神山地をぶち抜く青秋林道建設という計画が持ち上がり着工となったものの、工事途中で現地から自然破壊につながるということで反対の声があがり、両県ともども議論百出となりました。
 公共事業はいったん始まると、それまでの経費が無駄になる、多くの利害関係者が存在するということで、軌道修正はなかなか困難な性格のものです。
 しかし、私も参加していましたが、ちょうどその頃にあった自治研修所の中堅職員研修に参加していた林業土木の技術職員から、林道を開設しても積雪や大雨で周辺の土砂崩れを誘発する難工事なので、本心は止めた方がいいという話を聞き、研修に参加していた他の職員もその声に誘発され、何となく県庁内に計画中止すべきという雰囲気が漂い、そのうちに青森県知事が中止を決断し本県側も計画中止を余儀なくされました。
 また、伊勢堂岱遺跡は大館能代空港へのアクセス道路建設中に発見されたもので、遺跡の原形保存のため道路を迂回させるか、発掘し資料保存で済ませ、そのまま遺跡の上を通すかで県民的な大議論になりました。
 その時も、地元はもとより県議会や県庁内から貴重な遺跡であり費用が増加しても保存すべきという声が強くなり、県として踏ん切りがついてルート変更となりました。
 もしも当時、地域振興、費用のかかり増しということで当初計画通り進んでいたら、二つの世界遺産は永久に葬られていたことでしょう。
 喜びのなかに教訓として刻んでおくべきことと思い、あえて書かせていただきました。

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