【第7回ジバゼミ開催「木村酒造の歴史と酒造りについて」 ~ 株式会社木村酒造~
2018年12月07日 | コンテンツ番号 38762
つながる「ふるさと」、オガチの底ヂカラプロジェクト 趣旨
湯沢雄勝地域には川連漆器や稲庭うどん、清酒や味噌醤油など、秋田を代表する数多くの地場産業があります。また、国内外に誇るトップクラスの技術を有し、長年、地域とともにその歴史を刻んできた企業・事業所が多く存在しています。
このプロジェクトでは、湯沢雄勝の顔とも言える経営者らが、管内産業の魅力をより深く学び合うことで、地元企業や人物等の魅力を再認識するとともに、「ふるさと教育」を通して、地域の子どもたちや若者に、地元の良さや郷土への誇りを伝える土台を築くことを目指していきます。
ジバゼミ開催の概要
ジバゼミ〖じばぜみ〗とは・・・
管内企業等や伝統産業の特長や強み、地域に根ざした事業展開の理由や意義等について学ぶ、交流勉強会のことです。
「社会科見学編」と「地場産業体験編」の二種類があります。
開催概要と講師
【開催日】平成30年11月16日
【講師】株式会社木村酒造 代表取締役社長 米山 忠行 氏
【プロフィール】
株式会社木村酒造は1615年創業。酒造り400年の伝統を受け継ぎながら、究極の旨さを探究している。2012年には、International Wine Challenge 2012のSake部門でチャンピオンに選ばれた「大吟醸 福小町」は、東京五輪招致のレセプションでも振る舞われるなど、国際的にも高い評価を得ている。
武将 木村重成が貫き通した美学
創業元和元年(1615年)の木村酒造。
大坂夏の陣で討ち死を遂げた豊臣家の重臣木村重成の一族が落ち延びてきたのが、ここ秋田湯沢。当地の恵みを生かし、酒造りを始めたとされています。
400年の歴史を持つ蔵「木村酒造」
この木村重成とは一体どういう武将だったのでしょうか。
文献によると、重成は散りゆく最後の瞬間まで、武士の美学を貫いたとされています。この美学へのこだわり。現在の木村酒造の酒造りにも共通する部分がありそうです。
日本酒に銘柄(=商品名)がつけられるようになったのは、江戸時代の末期。
木村酒造が製造した酒の、商品名第1号は「男山」。1881年、明治天皇が東北地方巡行の際、侍従の宿舎となった木村家に訪れた侍従に「男山」を献上したところ 、女酒と呼んでもよいほどの優しい味わいに、“ネーミングと味とのバランスが悪いではないか“とされ、その侍従から「福娘」の銘を賜ったそうです。
その後、昭和に入り、伝説の歌人「小野小町」にあやかり、「福娘」の福と「小野小町」の小町、両方をとって「福小町」にしたとされています。
酒造りは、米づくりから
酒造業は一種のアグリ産業です。
寒い時期に始まると思われがちな酒造りですが、実は、田植えより前、つまり前年秋から、翌年仕込む酒をイメージし、米農家との入念な調整を行った上で、作付けされているそうです。
当地では、半世紀以上前から「湯沢市酒米研究会」が活動するなど、湯沢は県内でももっとも酒米づくりがさかんな地域として知られています。
良質な酒米が地元で調達できるという好条件に加え、院内銀山が繁栄し、日本酒が多く消費されたこともその背景にあります。
現在、県内で一番多く作付けされている酒米品種は「美山錦」と「秋田酒こまち」。木村酒造では、このほか、兵庫県の農協との契約栽培で作付けされた「山田錦」を原料にしています。
(写真)左の5種類は、この地域で作付け可能とされる酒米。一番右は、あきたこまち。酒米は、稲穂の丈が長いのが特徴。
味で勝負する蔵
木村酒造では、大手企業とのすみ分けを図るため、20数年以上前から、あえて特定名称酒のみの製造にこだわり続けています。
純米酒は米と米麹が原材料であるのに対し、本醸造は、これにごく限られた量の醸造アルコールが添加されます。
この「限られた量」というのがミソ。醸造アルコールが添加されることから、本醸造を悪者であるかのように思い込む人もいるそうです。しかし、一番大事なポイントはその添加目的といいます。
木村酒造では、量を増やすためではなく、香りがより引き立つ効果をねらって、ごく少量を添加しています。こうすることで、出来上がった本醸造は、純米酒と比べて、すごく軽快で、フルーティーな香りがより引き立つお酒になるのだそうです。
(写真)品質管理が徹底されている小売店にのみ、卸している「角右衛門」。
木村酒造の中興の祖と言われる、3代目角右衛門の名前を冠したお酒です。
我が子を育てる気持ちで、見守る仕込み
蔵は、いわばお母さんのお腹。ここで酒が育てられ、酒が誕生します。
発酵するプチプチという小さな音。
面白いことに、モーツァルトのような胎教によい音楽を奏でると、酒造りにもよい結果をもたらすという実験結果まであるのだとか。
(写真)この蔵の中で、プチプチと心地よい発酵のハーモニー♪が奏でられています。
木村酒造では、あえて小さな容量タンクを使った仕込みにこだわります。発酵の善し悪しを左右する酵母は、とても繊細な生き物。
大きな器よりも、小さな器の方がきめ細かく温度管理しやすく、このため、より繊細な味わいが出てくるといいます。
まるで自分の子どもを育てるような気持ちで、「今日はもっとがんばって」とか「今日はゆっくりしていいよ」などと、優しく見守りながら仕込んでいるそうです。高い品質へのこだわりと職人の誇り。この気概こそが、400年間続く木村酒造の歴史を支えているのです。
参加者の感想
・建物に入った瞬間から、歴史の深さと伝統の力を感じた。
・醸造が盛んな湯沢の、発酵文化を垣間見た。
・日本酒メーカーとして、大量生産、普通酒をあえて選択しない、という勇気ある決断力が素晴らしい。
・自分たちが戦うフィールドを、ハイクラスのお酒に特化したことがすごい。
技術力の高さゆえできる決断で、これが結果的にブランド価値を高めた。
・歴史と伝統、さらに先代の名前を活かした販売展開が希少価値を高め、よりブランド力を高めている。
・大吟醸の仕込みに、あえて小さなタンクを選ぶ「品質へのこだわり」。まるで、少人数学級のようなきめ細やかさを感じた。
・木村酒造を通して、酒造に関わる地元の酒米研究会、企業など関連組織の技術力の高さにも、光が当たっているように感じられた。
ジバゼミレポート
ジバゼミ、今後の予定
第8回の訪問先は、小安峡温泉湯の宿 元湯くらぶ です。
引き続き、レポートをお楽しみに。
プロジェクト早わかり
ジバゼミレポート5「髙茂合名会社 ヤマモ味噌醤油醸造元」はこちら