【第5回ジバゼミ開催】「産業の進化とアート」 ~ 髙茂合名会社/ヤマモ味噌醤油醸造元~

2018年09月20日 | コンテンツ番号 37458

つながる「ふるさと」、オガチの底ヂカラプロジェクト  趣旨

湯沢雄勝地域には川連漆器や稲庭うどん、清酒や味噌醤油など、秋田を代表する数多くの地場産業があります。また、国内外に誇るトップクラスの技術を有し、長年、地域とともにその歴史を刻んできた企業・事業所が多く存在しています。

このプロジェクトでは、湯沢雄勝の顔とも言える経営者らが、管内産業の魅力をより深く学び合うことで、地元企業や人物等の魅力を再認識するとともに、「ふるさと教育」を通して、地域の子どもたちや若者に、地元の良さや郷土への誇りを伝える土台を築くことを目指していきます。

ジバゼミ開催の概要 

ジバゼミ〖じばぜみ〗とは・・・

管内企業等や伝統産業の特長や強み、地域に根ざした事業展開の理由や意義等について学ぶ、交流勉強会のことです。

「社会科見学編」と「地場産業体験編」の二種類があります。

開催概要と講師

【開催日】平成30年9月14日
【講師】髙茂合名会社/ヤマモ味噌醤油醸造元 常務取締役 髙橋 泰 氏
【会社概要】
ヤマモ味噌醤油醸造元は江戸末期から150余年続く老舗蔵元。
世界の食文化と和の調味料が融合し、進化していくことを理念“Life is Voyage”とし、2012年に貿易のアウトバウンドを開始。翌年にはGOOD DESIGN賞受賞。
近年は工場に隣接するファクトリーストア、水神の回遊式庭園、ガーデンカフェを整え、伝説の残る岩崎地域の歴史や髙橋家七代の蔵元の営みを知る体験ツアー「ヤマモファクトリーツアー」をインバウンドとして提供。今後は蔵元にギャラリーを設け、産業にアートを実装する。

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髙茂合名会社  常務取締役  髙橋 泰 氏

第一章 「蔵を守る 」

湯沢市岩崎地区は皆瀬川の物流を生かし、古くから城下町・宿場町として繁栄してきました。ヤマモ味噌醤油醸造元は、この岩崎地区で慶応3年(1867年)に創業。150年以上続く老舗です。
髙橋常務は七代目。髙橋家では、離れに偶数世代、母屋に奇数世代と二世帯が住み分け、蔵を守り続けてきました。

居住空間から先に足を進めると、すぐそこは工場。醤油の香ばしい香りに包まれる作業場では、職人さんの手作業を間近に見ることができます。

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(写真上)工場内の設備は全て可動式。人と機械が共存共栄しながら、時代ごとにベストポジションを決めてきた。

 

仕込みは通常3月末から7月上旬までの間。麹の生育には温度や湿度が大きく影響します。蒸したコメの盛り方、箱の積み方によって温度をコントロールし、さらに天候や外気温などを読み、職人の勘を取り入れながら3日間かけて慎重に見守っていきます。

大豆処理は「半煮半蒸」という、大豆本来の甘みとなめらかさ、両方の良さを取り出す方法にこだわります。大豆と麹を合わせる仕込みでは、高温経過では甘み、低温経過では旨味と、温度経過によって全く酵素の性質が異なるため、この取り出し方にはことさら気を配ります。

髙橋常務は「蔵元の温度経過を見るだけで、その意図するところがわかる」と言います。先進的な取組を行っている県内の若手酒造蔵元とは、既に意見交換を行っているのだとか。

敷地の最も北にある「諸味蔵(もろみぐら)」には、その一部に大正の年号が刻まれた100年以上の杉樽が並んでいます。入口よりも大きなサイズは、かつて、その樽が樽職人によって蔵内部で組み立てられたことを物語っています。

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(写真上)敷地の最も北にある「諸味蔵(もろみぐら)」。低温発酵熟成を促している。

第二章 「新たなトライ」 ~マイナーチェンジで、ブラッシュアップ~

伝統の製法を守る一方で、髙橋常務は新たなトライもしています。
そのひとつが、酵母の実験。

通常、多くの蔵元では伝統の味と香りを引き継ぐことを重んじ、仕込みの際に、前年まで使用していたいわゆる蔵つき酵母を純粋培養し利用しています。

しかし、髙橋常務は「人間が好きな香りだけを追求していけば、北国も南国も、酵母が似通ってしまい、地域特性が薄れる懸念がある」と言います。このため、蔵つき酵母に、蔵元が意図しない菌(野生酵母)が入り込む余地を残した仕込みなども実験的に行っています。

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(写真上)仕込み日や配合は全く同じだが、酵母によって味が変わる。専門家からは、当蔵の蔵つき酵母は「りんご系の香りが強い」との評価を得ている。

 

例えばワイン業界では、原料のぶどうの作柄等による“味”の違いが受け入れられても、味噌や醤油業界では、同じ味でなければ受け入れられないと言います。『会社が生き残るために変化が必要な一方で、マーケットニーズはそれを望まない』という、いわば “ねじれ現象にある“業界において、どう改革していくかが一番難しいとのこと。
家業を継いだ時から、こうした点にも細心の注意を払いながら改革を進めてきた髙橋常務。今では、このチャレンジ(改革)がすっかり会社イメージとして定着しつつあり、一定の手応えを感じています。

 

第三章 「先人の思いをバトンに」

七代目髙橋常務は、最初、積極的に家業を継ぐ気持ちはなかったと言います。そうした中、豪雪地帯の湯沢市で雪との共存生活を考えたとき、庭園の思わぬ機能に、ふと、ある考えが浮かびます。試験的に、冬でも14~15度と温かい醸造用仕込み水を庭園の池に取り込んだところ、そこには自然の融雪装置が出来上がっていました。
これをきっかけに、髙橋常務は先代の功績や歴史背景、地域の神社などをしっかりと調べてみることにしました。

 

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すると、初代茂助が水の恵みからこの地で醸造業を興したこと。水の恵みに気づいた四代目茂助(彦四郎)が、水神社がある霊符の森を高台に望んだ借景に見立て、水神のお堂をメインに据えて雪国の四季を描いた庭園を作庭したこと。そして、今、七代目の自分が水の恵みを融雪に活用し、そこで庭園を開放するに至っていることなど・・・。これらは、すべて岩崎地区に伝わる「能恵姫(のえひめ)伝説(※)」に込められた、水の恵みから得られる恩恵に通じていることを感じ取ったと言います。
こうした、いわば学び直しによって自らの蓄積が増え、今の産業観光(ファクトリーツアー)にも活かされていると実感しているそうです。(※能恵姫伝説・・・秋田三大伝説のひとつ)

  第四章 「 “ Industry Loves Art ” 」

アート活動を思い立ったきっかけ、それは髙橋家の本家にあたる二代目岩崎町長髙橋七之助氏の存在を知ったことでした。
文献によると、七之助氏の功績は「秋田県初の大規模耕地整理」「早寝早起きの推奨」「町章(登り藤に岩)の制定」「共同風呂(銭湯)の開設と衛生思想の普及」「由緒ある城下の岩崎町にふさわしい町内名への変更」などと記されています。町民の規範意識を向上させ、高い文化水準をもたらしたこと。これは現代の政治手腕にも相通ずるものがあります。

 

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(写真)岩崎地区を訪れた明治天皇と、二代目岩崎町長髙橋七之助氏


髙橋常務は、アメリカや中南米諸国、ベラルーシ共和国など世界各国を旅する中で、識字率が低い国でも、アートでメッセージを伝えることが可能となったり、産業が破綻した街であってもアートが介在することで人が集まり、それが街の再生へとつながっていく例なども見ました。また、ある国では貧しくても、そこに住む人に誇りと強い郷土愛さえあれば、街の持続可能性が高まることも実感してきました。

これら理念は、明治時代二代目岩崎町長髙橋七之助氏の手法とも共通しています。
先代の思いが込められ、数世代に渡り存在する石碑や庭園もアート。さらに、それを解説するソフトとしてのアート作品。この両方が必要で、今まさに、この形成に自らの使命を感じていると話してくださいました。

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(写真)世界中を旅した際に撮りためたスナップの数々 

 参加者の感想

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・常に先進的な考えで、アートで地域貢献したいという考えにたどり着いた。いろんなアングルから歴史を主役にし、歴史とアートとを見事にかけ合わせている
・歴史背景を重んじた上で、歴史を掘り下げている。150年以上、7代にわたって蔵を守り続けてきた蔵元としての力を感じた。
自然の風や光など、生きとし生けるもの全ての恵みを活かしている
歴史を守る力=次の未来を生む原動力になっている。
・七代目の感性が素晴らしい。初代から脈々と受け継いだ資質と、世界中を旅して身につけた感覚とが合体し、先進的な取組となって、差別化的なものに派生している。
・岩崎地区の活性化に向けて、他業者との連携協力の取組が素晴らしい。
・今後の継続した取組に期待するのと同時に、周囲がもっと支援、協力していくべきと感じた。

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ジバゼミレポート

  第5回ジバゼミレポート  

  ジバゼミ、今後の予定

次回(10月3日)の訪問先は、秋田木工株式会社です。

引き続き、レポートをお楽しみに。 

 プロジェクト早わかり


 つながるふるさと、オガチの底ヂカラプロジェクト実施要領

第一回実行委員会(キックオフイベント)の模様はこちら 

ジバゼミレポート1「相川ファーム編」はこちら

ジバゼミレポート2「秋田研磨工業編」はこちら 

ジバゼミレポート3「和賀組編」はこちら

ジバゼミレポート4「秋田県漆器工業協同組合編」はこちら

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