「秋田県版レッドリスト(シャジクモ類)」の公表について

 県では、これまでに秋田県の絶滅のおそれのある野生生物として秋田県版レッドデータブックやレッドリストとして動物では哺乳類、鳥類など7分類群、植物は維管束植物、蘚苔類、地衣類の3分類群について公表しています。
 今回取りまとめたレッドリストは、維管束植物以外に属するシャジクモ類(17種)です。シャジクモ類は、水草に似た姿をした藻類で、本県の湖沼や池、水路等の水域に生育しています。そのため河川や水路工事、生活・産業排水の流入による水質の汚染、周辺の開発による湧水量の減少などにより個体数を減少させることがあり、生物多様性の面からも保全が必要とされています。
レッドリストは、それ自体に法的強制力はありませんが、絶滅のおそれのある野生生物に関する情報を提供し、その保全の重要性への理解を深めることを目的としているものです。
 今後は、これまでに公表された各分類群について、新しい知見や情報に基づき選定の見直しを行うこととしています。

1.秋田県版レッドリスト(シャジクモ類)掲載種数

表:秋田県版レッドリスト(シャジクモ類)掲載種数

《参考》秋田県版レッドリスト掲載種数表

表:秋田県版レッドリスト掲載種数表

2.レッドリストカテゴリーの定義

基本的には環境省カテゴリー(2007年)を準用しています。

表:レッドリストカテゴリーの定義

3.選定方法

レッドリストは、県内の専門家からなる「秋田県版レッドリスト(シャジクモ類)作成委員会」を設置し、各委員から提示されたデータや既存文献等を基に選定しました

4.選定により明らかになった点

 シャジクモ類は淡水や汽水に生育する藻類の一群で、種子植物の水草に似ており、湖沼から水田まで様々な環境に生育している。県内では、これまで現地調査や文献調査により29種が確認されており、今回は、このうち2種を絶滅種、10種を絶滅危惧種、4種を準絶滅危惧種として選定した。
 絶滅種に選定したシラタマモとオトメフラスコモはともに旧八郎潟の汽水域等に生育していたが、防潮水門により淡水化した八郎湖では過去40年以上確認されていない。また、絶滅危惧種及び準絶滅危惧種に選定した種は、それぞれ県内水域における分布が局限されていると判断される植物である。これらのシャジクモ類の減少要因としては、水域そのものの消滅のほかに河川やため池等の改修や水質の悪化などが考えられる。
 今回、検討対象とされた種は、既に他県で公表されているレッドリストに比べて種数に大きな違いはないものと見られる。さらに秋田県においては検討対象となった全ての標本が公的機関に保管されていることから、将来の見直しのための基本条件が整備されていると考えられる。今後の調査により標本データ等がさらに蓄積され、より精密な選定結果になることが期待される。
(高田順・高橋 祥祐)

5.今後の保護対策

 秋田県版レッドリスト(シャジクモ類)については、広くその普及を図り、絶滅のおそれのある野生生物の種の保護への理解を深めます。また、各関係機関や市町村等に配布し、各種事業の計画作成時及び事業実施時等において、これらの種の保護・保全への配慮を求めるとともに、環境アセスメント等の資料としての活用を働きかけることとしています。

6.秋田県版レッドリスト(シャジクモ類)作成委員

高田順 秋田自然史研究会顧問

高橋祥祐 秋田県自然保護協会会長