太平と角館のイタヤ細工製作技術 (たいへいとかくのだてのいたやざいくせいさくぎじゅつ)
写真:各種カゴ編み製品(カッコベ、オボキ、ツヅラなど)
各種カゴ編み製品(カッコベ、オボキ、ツヅラなど)

本技術は、イタヤを材料として箕やカゴなどを作る技術で、本県では秋田市太平黒沢地区と仙北市角館町雲然地区で伝承されている。竹を用いた編み組み細工は全国的にみられるが、イタヤを主な材料とするのは、工芸に適した竹の少ない北東北だけである。

イタヤ細工には、イタヤカエデの他に藤づるや根曲竹、樺などを用い、生産地周辺のみならず県内各地で採取している。材料のイタヤは、直径10cm後の若いイタヤカエデを縦に8等分くらいに割り、中芯を取り除き巾を整え、年輪に沿って一枚ずつ帯状に剥がしてから面取りをして仕上げる。雲然ではこの仕上げの作業に、明治25年ころに発明されたカッチャ小刀と呼ばれる左側に刃が付いた独特な小刀を用いている。製品には箕の他に、カッコベ、オボキ、買い物カゴなどのカゴ類、イタヤ馬ッコなどの玩具がある。

江戸時代中ごろには作られていたと考えられるイタヤ細工は、近代以降、農家等の必需品として需要が増加し、県内各地や青森、岩手、山形などで盛んに生産された。しかし、昭和40年代以降は農業の機械化や生活様式の変化によって実用品としてのイタヤ細工の需要は激減し、現在は本県の黒沢、雲然と山形県大石田町次年子で作られるのみである。このような状況にあっても、両地区では学校や市民講座でイタヤ細工の普及活動を行うなど、技術の伝承や後継者の育成に努めている。

本製作技術は、かつては北東北の農業や生活文化の一端を支えた用具の製作技術であり、全国的にも珍しいイタヤカエデを用いた地方色豊かな民俗技術として貴重である。