寺崎廣業筆 高山清秋(てらさきこうぎょうひつ こうざんせいしゅう)
画1:寺崎廣業筆 高山清秋(てらさきこうぎょうひつ こうざんせいしゅう) 画2:寺崎廣業筆 高山清秋(てらさきこうぎょうひつ こうざんせいしゅう)

本作品は、明治後期から大正前期の日本画壇を代表する画家の一人である寺崎廣業が、長野、群馬の県境域にある白根山からの眺望を描いた風景画である。

廣業は、慶応2年(1866)、東根小屋町(現秋田市中通)に生まれ、22歳(1888年)で上京、東京美術学校教授や文展審査員等を歴任し、大正8年(1919)、53歳で病死した。
廣業は、歴史画、風景画、風俗画、人物画など多彩な作品を残している。代表作には、「秋苑」「大仏開眼」「渓四題」「瀟湘八景」「千紫万紅」「信濃の山路」などがあり、40歳を過ぎた頃から信州の自然を題材とする風景画を好んで制作するようになる。

「高山清秋」は、白根山の清らかな空気に触れた時の感慨を絵にしたものとされる。幾重にも折り重なる山々を、近景を一番下に、その上に中景、そして、その上に遠景を積み重ねていく日本画伝統の遠近法で表現しており、奥行きのある雄大な画面を構成している。また、裏箔の深く気品のある金地に施された明快な彩色は、晴れ渡った秋の高山の清らかな印象をよく表しており、廣業が自然に対する一境地を開拓した作品である。
本作品は、大正3年(1914)の第八回文展に出品され、昭和4年(1929)には、パリで開かれた巴里日本美術展に出品されるなど、秋田県生まれの廣業の画業を代表する傑作であるとともに、近代日本風景画の一頁を飾る名品である。

絹本裏箔着色・屏風装(六曲一双)各縦168.2cm、横364.2cm大正3年(1914)制作