日本海の彼方に

産業経済政策課長 佐藤文男

 最近は、地球規模で異常気象のニュースが聞かれますが、今年の秋田は例年以上に真夏日や熱帯夜が続き、エアコンのない身には応える夏となりました。

 さて、今回は、暑い夏が直前に迫った秋田を避けて涼しい北海道を旅して感じたことを述べてみたいと思います。

 2006年8月4日、朝7時。曇り空の秋田港。フェリーが苫小牧に向けて出航しました。港を出て間もなく、前夜苫小牧を出て秋田港に入るフェリーとすれ違い、続いてナムスン(韓国船社)のコンテナ船も入港してきた。

写真:フェリー

 秋田県も急速にグローバル化が進んでおり、秋田港は県の「貿易」の顔として、釜山とのコンテナ定期航路をはじめ、世界各地からの貨物で賑わっている。
一方、「人」の玄関口は秋田空港であり、ソウルとの定期航空路によって年間1万6千人の韓国人が秋田を訪れているが、貨物室が小さいため貨物の輸送は極僅かである。
 最近、秋田では縫製工場の研修生、実習生として滞在している中国の若い女性が宿舎と工場との往復や休日のスーパーで買い物している姿を見かけることが多くなってきた。こういったこともあり、県内に滞在する中国人は2,507人(H16外国人登録者)となっており、国別で最も多くなっている。
 上京した際に電車やホテルで見かける外国人も、アジア、特に中国人が目立って増えているように見える。
 今回の利尻山登山を目的とした北海道旅行でも中国人旅行者に驚くことになった。苫小牧でフェリーを降りて日本海側を北上して稚内へ、そしてフェリーで利尻島に渡った。利尻島は、北の果ての島のせいか、登山シーズンにも関わらず、訪れる登山者は意外に少なかった。利尻山登山は、登山口から1,721mの頂上まで標高差1,500mを上ることになるが、運動不足の身には辛かった。それでも頂上が近づくにつれ、人間をも吹き飛ばすような強い西風の中で、健気に咲く花々に疲れを癒されることになった。

写真:花

 帰路は、宗谷岬を通りオホーツク海岸を南下し、途中から内陸に入った。道中、立ち寄った旭川の動物園や美瑛、富良野のラベンダー園で、デジタル機器を手にした多くの中国人観光客に遭遇したのである。20年ほど前、札幌雪祭りで真新しい防寒着に身を包んだ台湾人を見かけたことはあったが、今回、有名な観光地であれば地方であっても中国人が大挙して訪れている現状を知り、中国の急速な発展の現実を実感する思いであった。
 経済のグローバル化と言われて久しいが、秋田県の中小企業も海外進出が当たり前になっている。県内企業の海外進出の草分けはTDKであり、50年程前から多くの県人が世界各地に赴任して活躍しているが、最近は、木材、縫製、食品、金属製品、コンピューターソフト、その他様々な業種の中小企業が、原材料、労働力、マーケットを求めて続々と中国へ進出しているのである。
若い頃、県外客を男鹿半島の入道崎に案内して、水平線を指さしながら冗談で、「ほら、微かに陸地が見えませんか。あれがソビエトです。」という私の言葉に、「そうですね、見えますね。」と真面目に応じてくれた人もいましたが、秋田県は日本海を挟んで大陸までの距離が近いんです。
 長い間、秋田県は巨大なマーケットである首都圏に目を向けてきて、日本海には背を向けて来ました。しかし、巨大市場の中国、急速に発展しているロシア、そして遠くヨーロッパでさえシベリア鉄道を介して魅力的な交流相手になり得るものであり、今後の秋田の発展を支えてくれると期待される重要な地域となっている。
現在、コンテナ定期航路はすべて釜山経由であり、大陸との距離のメリットが輸送距離に反映されていないが、今こそロシア極東との直行航路を実現しなければならないと考えており、県でも鋭意その実現に取り組んでいるところである。
 県としては、英語で授業を行う国内でもユニークな秋田国際教養大学を設立し、グローバル社会で活躍できる人材を育てており、今後、卒業生は貿易や観光などの経済活動において大きな力になってくれるものと期待されている。
 また、県民が貿易等の相手国の国民と良好な関係を構築することは、経済交流のスピードを加速することにもなるため、県民が県の貿易等の現状を正しく理解し、本県を訪れる関係国の皆さんに暖かい気持ちで接してくれるよう、積極的に情報提供をすることも大事であると考えている。

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