研究報告第27号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9159

秋田県果樹試験場研究報告(2001) 第27号 1-13

リンゴ'ふじ'に対する受粉作業の効率化

上村大策・森田 泉・金塚朱美・田口辰雄・久米靖穂・田口茂春

摘要

 リンゴ受粉作業における綿棒を用いた受粉(綿棒式)、羽毛回転型電池式受粉機(電池式)及び背負式動力散布機(動散式)の効果を確認し、受粉機の省力性、実用性を調査した。さらに、果実品質と種子数、有種子心室数の関係について解析した。また、動散式の有効利用を図るため、ショ糖液の散布効果、ノズル部の改良効果について調査した。

  1. 花粉の柱頭付着量は綿棒式が最も多く、次いで電池式であったが、動散式では有意に少なかった(訪花昆虫遮断条件下での試験:試験1)。
  2. 果実の肥大は、綿棒式、電池式が良好であり、300g以上の果重分布は綿棒式、電池式が多く、動散式は電池式の半分以下であり(試験1)、この傾向は試験2(自然条件下での試験)でも認められた。果実の形状の正常果割合は綿棒式、電池式、動散式の順で多かった(試験1)。
  3. 種子数は綿棒式が最も多く、次いで、電池式、動散式で少なく、有意な差が認められ、種子数の分布も同様に明確な差が認められた。有種子心室数は綿棒式が4.9とほぼすべての心室に種子形成がみられたが、電池式が3.6、動散式が1.6と少なかった(試験1)。
  4. 種子数と果重や果実横径との間に正の相関が認められた(図1、2)。また、有種子心室数と果重や果実横径、種子数と有種子心室数との間にもそれぞれ正の相関が認められた(図3、4、5)(試験1)。
  5. 花粉使用量は、綿棒式と比較して、電池式が約2.1倍、動散式は約5.6倍と多かった。作業時間は、綿棒式に対して、電池式が約1/3、動散式が約1/10と省力効果が認められた(試験2)。
  6. ショ糖液を散布後に、動散式で花粉を散布することによって、結実率、花粉の柱頭付着量が高まることが確認された。
  7. 動散式のノズルの改良により、花粉の柱頭付着量は、いずれも向上したが、綿棒式と比較すると1/10以下と効果は極端に低かった。中心果結実率には、有意な差はみられなかった。また、収穫果の平均果重、果重分布、果形指数の分布、種子数の分布は花粉の柱頭付着量と同様にノズルの改良効果が認められたが、綿棒式より有意に劣る傾向が認められた。
  8. 以上の結果より、処理効果、経済性等について総合的に判断すると、電池式は受粉効果が高く、省力的であり、実用性が高いと考えられる。一方、動散式は、受粉効果が弱いこと、花粉を多量に必要とすること等から、実用性は低いと考えられた。

秋田県果樹試験場研究報告(2001) 第27号 14-23

ベンズイミダゾール系薬剤耐性リンゴ褐斑病菌の出現

佐藤 裕・水野 昇

摘要

 1998年リンゴ褐斑病が多発生したことから、現時点でのベンズイミダゾール系薬剤他数種薬剤に対する感受性を明らかにするため、県南部の12園地から合計62菌株の分離株を得て、薬剤感受性を調査した。
また、2系統の分離菌株について接種試験を行いチオファネートメチル水和剤の防除効果を検討した。

  1. 1998年に秋田県県南部に位置する雄勝町東山の一園地からチオファネートメチル剤耐性褐斑病菌が検出された。
  2. チオファネートメチル剤耐性褐斑病菌はベノミル、チアベンダゾール、MBCに対しても耐性を示し、正の交差耐性が認められた。
  3. ベンズイミダゾール系薬剤感受性褐斑病菌はジエトフェンカルブに対して耐性を示した。また、ベンズイミダゾール系薬剤耐性褐斑病菌は低濃度でジエトフェンカルブに対して感受性を示したことから、ジエトフェンカルブとベンズイミダゾール系薬剤に対してこの二系統の菌株群間では負の相関交差耐性が認められた。
  4. 培養から4日後の顕微鏡観察によりおう盛な菌糸伸長がどの濃度まで認められるかを、TM0.5ppm添加培地を中心に比較観察することによって、短期間で耐性菌か感受性菌かを判断できると考えられた。
  5. ベンズイミダゾール系薬剤耐性褐斑病菌はTM水和剤の常用濃度に接種しても高率に発病したことから、防除効果は期待できないと判断された。

秋田県果樹試験場研究報告(2001) 第27号 24-35

ブドウ晩腐病の発生生態と防除に関する研究
Ⅰ.ブドウ晩腐病菌の第一次伝染について

深谷雅子

摘要

 ブドウ晩腐病菌の第一次伝染について、越冬伝染源からの分生子捕捉法、および分散時期、分散に関与する気象要因、さらに果房の感染時期の検討を行った。

  1. 越冬伝染源である結果母枝において、枝の基部よりも上方の節部や前年の着果房の穂梗基部および巻きひげに晩腐病菌の分生子が多量に形成された。
  2. 穂梗基部の直下に雨水採集装置を設置することにより、降雨により落下した分生子が効率的に捕捉された。
  3. 綿球で越冬伝染源の穂梗基部をなぞる方法は、分生子を簡易に捕捉することができ、分生子形成時期の把握に有効であった。
  4. 越冬伝染源である穂梗基部からの分生子の分散は、秋田県においては、主として6月上旬から9月上旬に起こることが、過去12年間にわたる調査で明らかになった。
  5. 越冬伝染源からの分生子の分散開始に関与する気象条件は、分散開始日を含む前3日間の平均気温の平均値が15℃を、また最低気温の平均値が10℃を越える値を示し、3日間の合計降水量が10mm以上である。さらに、これと同様の気象条件が、分散開始前にもう1回訪れることが重要であった。
  6. 果房の感染は、果粒の横径が2~3mmのアズキ粒大の頃から、硬核期前まで起こり、7月上旬から下旬までが主要な感染時期であった。