研究報告第26号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9158

秋田県果樹試験場研究報告(1999) 第26号 1-13

リンゴサビダニの防除と管理に関する研究
第2報 性フェロモン剤を利用した総合防除体系におけるリンゴサビダニと土着カブリダニを保護した薬剤散布

舟山 健

摘要

 1995年から1998年まで、秋田県果樹試験場鹿角分場内リンゴほ場で、性フェロモン剤を利用した防除体系におけるリンゴサビダニと土着カブリダニ類を保護した薬剤散布について検討した。

  1. 1995年と1996年に交信撹乱剤を設置した殺虫剤無散布の試験ほ場では,リンゴサビタニと土着カブリダニ類の発生個体数が多く、土着カブリダニ類はリンゴサビダニを代替餌として増殖して、ハダニ類の発生を抑制した。リンゴサビダニの発生時期が早い樹ほどカブリダニ類の発生時期も早く、発生個体数も多かった。本ほ場で発生した土着カブリダニ類はトウヨウカブリダニが優占種であった。1995年と1996年に試験ほ場に散布した殺菌剤であるキャプタン剤はリンゴサビダニと土着カブリダニ類の発生に影響しなかったが、試験ほ場では斑点落葉病の発生が著しく多かった。また、試験ほ場では、殺虫剤無散布により潜在的害虫の発生と被害が多く、ほとんどは鱗翅目と半翅目害虫であった。IGR剤、BT剤及びネオニコチノイド剤に対して、ほとんどの潜在的害虫の感受性は高く、リンゴサビダニと土着カブリダニ類の感受性は低かったことから、これらの殺虫剤が潜在的害虫の補完防除剤として選択された。
  2. 1997年は試験ほ場にマシン油、IGR剤、BT剤及びネオニコチノイド剤を補完的に散布し、6月の殺菌剤はジラム・チウラム剤を散布した結果、病害虫の発生は少なかったが、リンゴサビダニは6月から発生個体数が少なく、土着カブリダニ類の発生はほとんど確認されなかった。これは、おそらく、マシン油とジラム・チウラム剤がリンゴサビダニに影響して初期発生個体数が減少したことから、土着カブリダニ類も定着しなかったと考えられる。1998年は試験ほ場にIGR剤、BT剤及びネオニコチノイド剤を補完的に散布し、6月の殺菌剤はジチアノン剤を散布した結果、病害虫の発生も少なく、リンゴサビダニと土着カブリダニ類の発生が通年で確認された。このことから、1998年の薬剤散布はリンゴサビダニとカブリダニ類の発生に影響を与えず、性フェロモン剤を利用した総合防除体系におけるリンゴサビダニと土着カブリダニ類を保護した薬剤散布の一例であると考えられた。

秋田県果樹試験場研究報告(1999) 第26号 14-25

リンゴ樹の生理的変化に及ぼす断根の影響

上田仁悦・照井真・水野昇

摘要

 台風9119号の強風により倒伏したリンゴ樹のその後の生理的変化と生育状況を追跡調査するとともに、8月下旬と9月下旬に人為的に根量の60%に及ぶ過酷な断根処理を行い、これらに対する結実、肥培管理の違いが樹勢回復に及ぼす影響を調査した。

  1. 断根40%以下の樹では、新梢伸長や蒸散流速度は低下するものの、実質的な収量への影響は認められなかった。
  2. 倒伏被害樹が健全樹と変わらぬ樹勢まで回復するには、断根20%樹で1~2か年、断根40%樹で2~3か年、断根60%樹で3~4年ほど要した。
  3. 倒伏被害樹の樹勢回復は、有効土層の浅い園地よりも深い園地で早まる傾向がみられた。
  4. 断根樹の新梢長と蒸散流速度は、断根程度に応じた影響が顕著に現れることから、樹勢を客観的に把捉できる指標の一つと考えられた。
  5. 8月下旬断根処理と9月下旬断根処理の樹勢回復速度を新梢長と蒸散流速度で比較すると、処理時期による明確な差は認められなかった。
  6. 着果制限が樹勢回復に及ぼす影響は、無着果区でやや早まる傾向がみられたが、その差は100%、50%着果区に比べわずかであった。
  7. 施肥が樹勢回復に及ぼす影響は、施肥量に応じた反応がみられず樹勢回復速度に差は認められなかった。

秋田県果樹試験場研究報告(1999) 第26号 26-34

リンゴ園土壌における生育期の水分張力と無機態窒素の変動

佐藤 善政・船山 瑞樹

摘要

 土壌特性や気象変動に対応した窒素施肥、土壌管理法を検討するための基礎的知見を得るために、秋田県横手、平鹿地域の6か所のほ場で生育期の水分張力と無機態窒素含量の変動を調査した。調査は1993年から1995年までの3か年継続し、調査結果をもとに園地間(土壌類型間)及び年次間(気象経過条件)での差異を解析した。

  1. 調査3か年の生育期の気象経過は著しく異なった。1993年は生育期全般に低温傾向が強く、特に7月、8月はその傾向が若しかった。1994年は夏期の高温少雨による干ばつ傾向の強い年であった。1995年は6月から8月まで降水量が多く日照不足の傾向が著しかった。
  2. 土壌pF値については園地間で有意な差が認められた。黒ボク土では他の園地に比べ常に低く堆移する傾向があることや、褐色森林土の園地では気象変動に伴う変動幅が大きく、多湿黒ボク土の園地では小さいなど園地間の土壌水分特性に差があると考えられた。
  3. 土壌pF値の年次間の差は6月、7月、8月で顕著であった。1993年は全期間を通してはぼほ場容水量に近い水分量で堆移し、1994年の6月から8月は植物の生長阻害点近くのレベルに達した。一方1995年の7月から8月は土壌中に重力流去水が存在した状態であったと堆察された。
  4. 無機態窒素含量の時期変動には園地間に有意差は認められなかった。生産ほ場における無機態窒素の挙動は多様で複雑なものと考えられた。
  5. 無機態窒素含量の年次間差は有意であった。1994年は他の2か年に比べて6月以降9月まで高いレベルで堆移した。1994年は6月以降少雨と高温の気象条件で推移したため土壌窒素の無機化が促進されたものと推察された。
  6. 任意の時期の土壌pF値に対する無機態窒素含量の関係を解析した。8月、9月の無機態窒素含量は当該月もしくは前月の土壌pF値と有意な正の相関が認められた。