研究報告第23号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9155

秋田県果樹試験場研究報告(1993) 第23号 1-13

リンゴサビダニの防除と管理に関する研究
第1報 薬剤防除とカブリダニ類に対する交代餌としての評価

舟山健・高橋佑治

摘要

 本県南部において広域的に発生しているリンゴサビダニの薬剤防除と総合防除のためのカブリダニ類に対する交替餌としての評価について検討した。

  1. 本種の成虫の各種共剤に対する感受性を検定した結果、サイヘキサチン水和剤、BPPS水和剤、ポリナクチン複合体・BPMC乳剤、プロチオホス水和剤、クロルピリホス水和剤、PAP水和剤、マンゼブ・DPC水和剤、ビナパクリル・DPC水和剤に対して高かった。しかし、サイヘキサテン水和剤とBPPS水和剤以外の殺卵効果は低かった。圃場での殺ダニ剤の防除効果について検討した結果、サイヘキサチン水和剤、フェンピロキシメート水和剤、ピリダペン水和剤の効果が高く、本種の発生を抑制した。精製油乳剤による休眠期防除の効果が認められなかったところから、本種に対する防除は、開花期前の発生初期に防除効果の高い薬剤を散布するのが最も効果的であると考えられた。
  2. 本県南部の無散布園において、在来カブリダニは発生初期の増殖のための交替餌として本種を利用していると考えられた。また、室内試験において、導入された抵抗性カブリダニは、本種を捕食し、産卵した。
     よって、本種は総合防除体系下でのカブリダニ類に対する交替餌として重要であると考えられた。

秋田県果樹試験場研究報告(1993) 第23号 15-87

リンゴ計画密植園の垣根仕立て方式への転換方法に関する研究

久米靖穂

摘要

 本研究はリンゴの計画密植園において間伐を行うことなく、過密化を防ぐ方法として短根仕立て方式への樹形の改造法を確立する目的で行ったもので、これが受光量、樹相、生産力、果実品質などに及ぼす影響を調査した結果、実用化し得ることを実験的に実証し得た。さらに樹形改造後の樹体の管理方法として、夏季せん定、窒素施肥の制限、はく皮逆接ぎなどのわい化処理を実施し、その効果についても検討した。その概要は次のとおりである。

  1. リンゴ樹において幹周の増大は地上部の増大ならびに着果数、収量と密接な関係があり、低密度区では幹周と着果数の間にはr=0.798***、幹周と収量の間にはr=0.769***と高い相関関係が認められた。とくに幹周70cmまで着果数は直線的に増大した。
    中密度区では幹周と着果数の間にはr=0.812***、幹周と収量の間にはr=0.818***と高い相関関係が認められた。
     樹高と樹冠幅は若木時代の栽培管理、とくにせん定の強弱によって差は認められるが、低密度区では樹高と着果数の間にr=0.753***、樹高と収量の間にr=0.709***、樹冠幅と着果数の間にr=0.815***、樹冠幅と収量の間にはr=0.745***と高い相関関係が認められた。中密度区では樹高と着果数の間にr=0.815***、樹高と収量の間にはr=0.820***、樹冠幅と着果数の間にはr=0.866***、樹冠幅と収量の間にはr=0.872***と高い相関関係が認められた。
     幹周の増加は地上部の発育状態を知るうえで樹体調査項目中で最も安定した生育指標であったが、樹高、樹冠幅の増大と合わせて調査することが収量推定の精度を高めるうえに重要なことが判明した。
  2. 10a当たり、33本植え(5.4m×5.4m)では15年生で、10a当たり、50本植え(4.5m×4.5m)では11年生で密植の害が果実品質に現れた。この時期から間伐するか、樹形改造するか、いずれかの措置をとらなけれはげならないが、時期の目安は樹冠占有率が70%になった時であると判断された。
  3. 高品質、多収を維持するためには、10a当たり、33本植えの場合は樹高が3.5m、樹冠幅が3.6m、10a当たり、50本植えでは樹高が3.5m、樹冠幅3.0mが結実面積、結実容積から適当で、この樹形が最も生産性があり、効率のよい樹形であることを明らかにした。
  4. 樹冠幅の異なる垣根仕立て樹の樹体変化と受光量を調査した結果、改造後3年までは樹勢が安定せず、多くの徒長枝が発生し、光の透入が悪く、樹冠内部は暗かった。この傾向は強せん定を加えた樹ほど著しかったが、夏季せん定、はく皮逆接ぎ、窒素の制限などを併用することによって4年目には樹勢が安定し、受光態勢が改善された。
     普通樹の短根仕立て樹に村して側面刈り込み角度をつけることは、樹冠への光透過を良好にし、着色と果実品質には良い影響を与えるが、一挙に強く刈り込むことによって樹を若返らせるので、適宜な樹勢にし、夏季せん定などで樹冠内部に頂芽を増加させ、結果枝を適正に配置したうえで徐々に角度をつけることが良好であった。
  5. 垣根仕立て樹の適宜な樹形構成として枝の密度、主枝本数、側枝の発出位置を検討した結果、3つの型の樹形構成が考えられた。
     Ⅰ型は主幹-主枝-亜主枝-側枝で、10a当たりの栽植本数は30本から40本、樹高は3.5m、樹冠幅は3.6mで園内通路幅は1.8m、主枝本数は2本から3本、側枝は亜主枝の側方斜め、下腹面より発生させ、着果は容積型である。
     Ⅱ型は主幹-主枝-側枝で、10a当たりの栽植本数は50本から60本、樹高は3.5m、樹冠幅は3.0mで園内通路幅は1.5m、主枝本数は4本か5本、側枝は主枝の側方斜め、下腹面から発生させ、着果は容積型である。
     Ⅲ型は主幹-側枝で、10a当たりの栽植本数は100本以上で、樹高は3.5m、樹冠幅は2.0m以内で、園内通路幅は1.5m、側枝は20本程度を主枝に直結して構成され、着果は表面型である。
  6. 普通樹を垣根仕立て方式へ転換した場合、樹相診断の時期と方法について検討した結果、樹冠上部の新しょう長により4つの型に分類された。
    • Ⅰ型:見かけ上の樹勢が著しく強いもの。
    • Ⅱ型:見かけ上の樹勢が強いもの。
    • Ⅲ型:見かけ上の樹勢がおおむね適当なもの。
    • Ⅳ型:見かけ上の樹勢が弱いもの。
     この樹相診断は頂端新しょう長、新しょうの停止時期がよい指標であるが、‘ゴールデン’、‘スターキング’における樹冠上部の頂端新しょう長は、Ⅰ型が81cm以上、Ⅱ型は61cmから80cm、Ⅲ型は41cmから60cm、Ⅳ型は40cm以下のものが該当した。
     樹冠下部ではⅠ型が61cm以上、Ⅱ型が41cmから60cm、Ⅲ型が21cmから40cm、Ⅳ型が20cm以下のものが該当し、診断時期は樹冠上部では8月下旬、樹冠下部では7月下旬が適期であった。
     新しょうの停止時期は、見かけ上の樹勢が弱い型ほど早く停止し、診断時期は6月下旬が適期であることを明らかにした。
  7. 葉による診断は葉色、葉中窒素含量、新しょう茎頂部の窒素含量がよい指標であった。葉色は見かけ上の樹勢が強い型ほど濃緑で、診断時期は7月下旬から8月上旬にかけて葉色カラーチャートを用いて測定するのが適当であった。見かけ上の樹勢がおおむね適当なⅢ型では‘ゴールデン’‘スターキング’とも葉色カラーチャート指数が5であることを明らかにした。
     新しょう葉の葉中窒素含量は、‘スターキング’のⅠ型では2.6%、Ⅲ型は2.4%、Ⅳ型が1.8%、‘ゴールデン’ではⅠ型が2.5%、Ⅲ型が2.1%、Ⅳ型が2.0%で見かけ上の樹勢が強いはど窒素含量が高かった。
  8. 果実による樹相診断は等級別区分、「アオ実」の発生程度がよい指標となることを明らかにし、診断時期は採収時であった。
  9. 夏季せん定による樹冠の拡大は、‘スターキング’では処理枝長10cmで抑制され、処理時期が早いほどわい化傾向が示された。‘ふじ’では処理枝長5cm区の6月中旬、6月下旬処理でわい化傾向が認められ、頂芽数は増加した。また夏季せん定によって受光態勢は改善され、‘スターキング’では高品質果の割合が向上した。
  10. はく皮逆接ぎは根量を抑制し、枝伸びを抑え、花芽を増加させた。これは処理後2年目でとくに顕著であり、処理時期は5月下旬が適期であった。
  11. 垣根仕立て樹の樹勢を安定させるわい化処理として窒素の制限、夏季せん定、はく皮逆接ぎの組み合わせ処理の効果が高く、回復も遅かった。わい化技術の組み合わせ処理を行う場合、樹相、土壌の表層の厚さを考慮すべきであることを明らかにした。