研究報告第17号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9149

秋田県果樹試験場研究報告(1986) 第17号 1-12

リンゴ「ふじ」の果実肥大と果実品質に及ぼす気象の影響

鈴木 宏・久米靖穂

摘要

1976年から1984年までの10年間、ふじの果実発育調査(毎月1日)と気象観測結果を用いて、各時期別肥大量と気象要因との関係を検討した。

  1. 各年ごとの月別肥大量を10年間の平均で比較してみると次の四つのタイプに区分できた。
    1. 落花後から11月まで平年以上である。
    2. 落花後は平年より大きいが、夏場以降は平年以下になる。
    3. 落花後は平年より小さいが夏場以降は平年より大きくなる。
    4. 落花後は平年より小さいが、11月まで徐々に平年並みになる。
  2. 果実の重量(肥大率)は8月が最も大きく、31.7% 次いで7月が23.6%、9月が20.9%、10月が13.4%、6月、9.7%、5月、0.7%の順であった。果実の縦径は6月が21.9%、5月が26.8%、7月、19.8%、8月、16.3%、9月、10.0%、10月が5.2%の順で横径もほぼ同様の結果であった。
  3. 果実重量と気象要因の関係では落花後から5月31日までの積算気温(r=0.901**)と最も高い相関関係があり、次いで8月中の降水量との相関関係(r=0.732*)が高かった。
  4. 8月1日の果実重量と11月1日の果実重量の間にはr=0.812**と高い相関関係がみられ、y=184.72+1.56xの回帰式が成り立った。これらから8月1日の果重から収穫期の重量がほぼ予想でき、作況予測に利用できる。
  5. 糖度の増加には7月、8月の積算温度と10月の日照量が影響した。また9月の降水量が少ないことも要因の一因であった。果肉硬度には9月の日照過多が負に働いた。

秋田県果樹試験場研究報告(1986) 第17号 13-30

リンゴ褐斑病に関する研究
第1報 発生消長と発病経過

高橋俊作・丹波仁・浅利正義

摘要

リンゴ褐斑病について、自然発病の消長と気象との関連について、1980~1984年に調査した。本病の初発生が最も早かったのは1982年で6月12日、最も遅れたのは1981年の7月27日であった。5か年の平均初発病日は、7月3日であった。初発病期は、平均気温20℃前後を超す気温の出現時期と関連するようである。降雨との関連は、平均気温ほど高くはないようである。初発病後の増加は、気温と降雨により大きく左右され平均気温が20~25℃、多雨で最も増加が多い。平均気温が、20℃を超す高温の経過では抑制される。7~8月の発生量の多少が、被害の多少に最も影響する。落葉は初発病2週間後頃から生じ、病勢の高まりに平行し増加し、発生早く、増加も急激であった1982年は8月中旬で、90%の落葉する例も生じた。室内での接種試験では以下の結果が得られた。

  1. 温度と発病:10、15およぴ20℃下で、各温度ともに発病(±)(実体顕微鏡で認められる発病)は、接種24時以内であった。発病(+)(肉限で認められる発病)は低温区ほど早く、10、15および20℃区でそれぞれ1日後、2日後およぴ4日後であった。しかし、病斑拡大、子実層形成および分生胞子溢出は、高温区ほど早く、20℃区で接種8日後から認められた。
  2. 葉表、葉裏の発病差:接種後の発生経過、発生量には差異はなかったが、葉表のみに子実層形成があった。
  3. 葉齢と発病差:葉齢による発生差が顕著であった。未展葉および展葉直後ぐらいまでの稚葉では発病(±)は認められるが、その後病斑拡大はなく、肉眼的には未発病であった。最も発病量が多く、病斑拡大、子実層形成およぴ分生胞子溢出がおう盛であったのは、展葉直後頃から3~4枚下葉の成葉であった。老葉では発生量が少なくなった。
  4. 接種後の風乾と発病:接種後6日間の風乾後でも発病し、子実層形成および分生胞子溢出を示した。しかし、一発病量は少なかった。風乾15日後以上では、発病がなかった。
  5. 品種間の発生差:供試したふじ、紅玉、旭、王林、ゴールデンデリジャスでは発生量、発病経過に差はなく、多発生であった。
  6. 果実感染も確認した。発生は、梗あ部から肩部に最も多いが、胴部またはがくあ部にも発生する。病斑は黒色(収穫期)、輪郭は明瞭でやや凹み,表面に子実層を多数形成する。だ円~長だ円形のものが多く、発生数も一定しない。

秋田県果樹試験場研究報告(1986) 第17号 31-128

モモシンクイガ(Carposina niponensis WALSINGHAM)の生態と防除に関する研究

成田 弘

摘要

  1. モモシンクイガの習性から、薬剤の地表面施用は有力な防除法になるとの見地に立ち、1963年から1975年にかけて適応薬剤の選抜試験、1968年から1977年にかけて選抜薬剤の実用化試験を行った。
    1. 塩素剤のBHC剤は粉剤、水和剤、粒剤とも、成虫の羽化抑制効果がすぐれ、非休眠幼虫の殺虫効果が高かったが、休眠幼虫の殺虫効果は認められなかった。しかし、残留毒性に問題があるので試験を中止した。
    2. 有機燐剤ではダイアジノン粒剤3%、サリチオン微粒剤F3%、PAP粒剤F3%の殺虫効果が高かった。また、MEP、マラソン、DEP剤などの効果も認められた。
    3. イソキサチオン剤ではカルホス微粒剤の殺虫効果が高かった。
    4. 除草剤、殺線虫剤の殺虫効果は認められなかった。
  2. 選抜試験では、リンゴ園で使用する除草剤、塩素剤、有機燐剤、イソキサチオン剤、その他について殺虫効果、薬剤の毒性、経済性、使用の簡易性などの見地から室内実験し、4種の薬剤を選抜した。
  3. ダイアジノン粒剤3%は1966年から1975年にかけて選抜試験し、1973年から1976年にかけて現地圃場において実用化試験を行った。
    1. 選抜試験では、成虫の羽化抑制効果がすぐれ、残効が13日以上あり、ガス効果も高かった。
    2. 同じ幼虫態でも越冬幼虫に対する残効は6日以上あり、非休眠幼虫に対する残効はわずか1日程度で短く、休眠幼虫に対する殺虫効果は劣り、薬剤感受性に差が認められた。
    3. 実用化試験では、地表面施用は越冬世代成虫発生初期から約15日間隔に3~4回連続し、樹上殺虫剤散布を産卵が多かった時期に並行した方法が高い防除効果が認められた。
    4. 同じく、2回連続施用と越冬、第1世代成虫発生初期にそれぞれ2回連続の4回施用し、これらに樹上殺虫剤散布を並行した方法も防除効果が認められたが、前方法よりやや劣った。
    5. 粒剤の10a当り適正施用量は約5kgで、樹上殺虫剤散布回数は4回程度であった。
  4. サリチオン微粒剤F3%は1972年から1974年にかけて、PAP微粒剤F3%は1964年から1973年にかけて選抜試験し、両剤とも1973年から1974年にかけて現地圃場で実用化試験を行った。
    1. 選抜試験では、両剤とも成虫の羽化抑制効果がすぐれ、残効は13日以上あった。
    2. 幼虫では薬剤感受性差があり、越冬幼虫に対する残効は6日以上あり、非休眠幼虫に対する残効はわずか1日程度で短く、休眠幼虫に対する殺虫効果は劣った。
    3. 実用化試験では、越冬世代成虫発生初期から約15日間隔に4回連続地表面施用し、樹上殺虫剤散布をこれに並行した方法が高い防除効果が認められた。
    4. また、同じく3回連続した方法と越冬、第1世代成虫発生初期にそれぞれ2回の計4回地表面施用し、樹上殺虫剤散布をこれに並行した方法などの防除効果も認められたが、前方法よりやや劣った。
  5. イソキサチオン微粒剤F3%は1972年から1976年にかけて選抜試験し、1974年から1977年にかけて現地圃場で実用化試験を行った。
    1. 選抜試験では成虫の羽化抑制効果がすぐれ、残効は13日以上あった。
    2. 幼虫の殺虫効果は非休眠幼虫、休眠幼虫とも残効が約1日あり、選抜試験の供試薬剤中、休眠幼虫に最も効果が高かった。
    3. 実用化試験では、越冬世代成虫発生初期から約15日間隔に3~4回連続地表面施用し、樹上殺虫剤散布をこれに並行した方法が高い防除効果が認められた。
  6. 以上の結果から、粒剤、微粒剤などの地表面施用法をまとめると次のとおりである。

    1. 地表面施用法のねらいは成虫の羽化抑制に主体をおき、越冬世代成虫発生初期から約15日間隔に3~4回施用する方法が防除目標水準の年間被害果率約3%以下に抑えることができた。
    2. 地表面施用の効果は産卵抑制で現われるが、この方法だけでは産卵を完全に阻止することができず、産卵が多かった時期に樹上殺虫剤散布を並行させる必要があった。
    3. これまでの試験で実用性が認められた薬剤は有機燐剤のダイアジノン粒剤3%、サリチオン微粒剤F3%、PAP微粒剤F3%、イソキサチオン微粒剤F3%の4剤であった。
    4. 樹上殺虫剤散布時期の目安は越冬世代成虫産卵最盛期の6月下旬、7月上旬、第1世代成虫産卵最盛期の8月上旬、8月中句頃の4回であった。
    5. 粒剤、微粒剤の10a当たり適正施用量は約5kgであり、背負式動力散布機を用いた10a当たり施用所要労力は約5分の短時間で、作業も簡易であった。
    6. 施用剤の地表分散を均一にするためには、施用の1~2日前に園内の下草を刈り取った方が有利であった。
    7. この方法はモモシンクイガの発生密度が高い園でも、無袋栽培を実施しながら1~2年の短期間で発生密度を低下させることができるので、長期間実施する必要がない。
    8. 地表面施用法は慣行防除法に比べ、積極的に成虫、幼虫を殺して発生源を低下するため、無袋栽培におけるモモシンクイガの防除法として実用性が高いものと考える。