研究報告第13号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9144

秋田県果樹試験場研究報告(1981) 第13号 1-17

既成リンゴ園のヘッジロー化に関する研究
第3報 わい化処理がリンゴの樹体に及ぼす影響

久米 靖穂・今 喜代治・田口 辰雄・鈴木 宏

摘要

 樹体のわい化と早期結実を目的に計画密植されたスターキング デリシャス、ふじを供試し、夏季せん定、はく皮逆つぎ、さらに施肥量との組み合わせで1971年から1975年まで検討した。また、はく皮逆つぎによる地上部、地下部に与える影響をみるため、ふじの苗木を供試し1973年・1974年の両年検討した。

  1. 夏季せん定による樹冠の拡大はスターキング デリシャスでは処理枝長10cm区で抑制された。処理時期は早いほどわい化傾向が示された。一方、ふじでは処理枝長5cm区の6月中旬、6月下旬処理でわずかにわい化傾向が認められた。
  2. スターキング デリシャス、ふじとも夏季せん定によって頂芽数は増加した。
  3. 夏季せん定によって受光態勢は改善され、スターキング デリシャスの秀・優果の割合が向上した。
  4. はく皮逆つぎは根量を抑制し、枝伸びを抑え、花芽を誘発させた。これは処理後二年目でとくに顕著であり、処理時期は5月下旬が好ましかった。
  5. 樹体のわい化には窒素の制限、夏季せん定、はく皮逆つぎなどの組み合わせ処理の効果が高く、回復度合いも遅かった。わい化技術の組み合わせ処理を行なう場合、樹相、表層の厚さを考慮する必要がある。

秋田県果樹試験場研究報告(1981) 第13号 19-31

リンゴわい性台木の土壌適応性に関する研究
第1報 横手、平鹿地方における予備試験

松井 巌・佐々木 高・佐々木 美佐子

摘要

 わい性台木のM.9、M.26、MM106とマルバ台ふじ1年生樹を横手、平鹿地方の主要な4土壌統、11園地に3樹づつ植栽し、わい性台木の生育や結実、収量に及ぽす影響や土壌適応性について、1975年から6年間にわたり、マルバカイドウと比較検討した。

  1. M.9は植付後の定着率、生育が他の台木にくらべて明らかに劣り、試験終了年まで正常な生育を維持していたのは2園地にすぎなかった。また、強風による倒木や地際部からの折損もみられ、供試台木のうちでは最も根が弱かった。
  2. 台木別の生育はM.9<M.26<MM106≦マルバの順序であったが、いずれの園地でもM.9を除いて樹高で4m以上の生育を示した。MM106は肥沃な釜の川統の土壌ではマルバと同等な生育であった。
  3. 結実開始期はいずれの台木でも3~4年目で大きな違いはなかったが、1樹当りの収量は生育のよい土壌ほどM.26、MM106がマルバより多かった。特にM.26はいずれの土壌でも花芽を形成しやすく、初期収量を確保しやすい台木であった。
  4. 葉中無機成分は園地、土壌、台木によって異なり、M.26、MM106、マルバ台の比較ではM.26のP、K、Ca含量が低く、逆にMg含量が高い傾向が認められた。
    葉中N含量が低い樹ほど早く結実期に入り、その後の着果数も多かった。また、本格的な結実の開始は3台木ともN含量の2.65%以下への低下と一致していた。
     これらの結果からM.9の土壌適応性はかなり狭く、多雪地帯での利用は困難と考えられた。M.26、MM106は4m以上の生育が可能で、早期多収性を有していたことから、雪害対策を工夫すれば、多雪地帯でもその利用について検討を加えるべきすぐれた台木と考えられた。

秋田県果樹試験場研究報告(1981) 第13号 33-45

ナミハダニ(Tetranychus urticae Koch)の生態と防除に関する研究
第1報 積雪地帯における越冬場所と生存率

成田 宏・高橋 佑治

摘要

  1. 1967年から1968年にかけて、積雪地帯である秋田県において、ナミハダニの越冬生態について調査、実験した。
  2. リンゴ枝上で休眠した雌成虫は冬季間にすべて死亡した。
  3. 枝幹面の粗皮下で越冬した雌成虫の生存率は高く、次年の重要な発生源であった。
  4. 主幹の根際で休眠した雌成虫は見られなかった。また、地表のリンゴ落葉内で越冬した個体は春季の間樹上に移動しなかった。
  5. 越冬コロニーは粗皮下に最も多く分布し、その生存率も高かった。その他はナシホソガ被害痕の下、ハマキムシ幼虫越巣の下に少数分布した。
  6. 変則主幹形仕立てリンゴ樹における越冬コロニーの樹上垂直分布は地上から1~3mの位置に集中した。
    また、年枝別分布は主幹、主枝、亜主技などに集中した。これらの集中位置に粗皮が多く形成された。
  7. 樹上の方位別分布は樹によって差があり、優占方向は明らかでなかった。しかし、共通して南側に分布が少なかった。
  8. 枝上の方向、上下別分布では下側と北側に分布が集中し、日光のあたる場所の上側と南側には著しく少なかった。
  9. 越冬コロニーは暗黒条件の0℃冷蔵庫に湿度差別に分けて58~65日間収納した。その結果、生存率は湿度が高いほど高く、低いほど低く、湿度は越冬のために重要な要因と考えられた。
  10. これらの結果から、積雪地帯である秋田県では樹上越冬率が高く、これが次年度の重要な発生源であり、既往の報告と全く異なった。この原因は越冬場所が冬季間雪の影響を受け、多湿状態で経過するためと考えられる。