研究報告第10号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9141

秋田県果樹試験場研究報告(1978) 第10号 1-26

既成リンゴ園のヘッジロー化に関する研究
第1報 樹形改造が生産力、果実品質、受光量その他要因におよぼす影響

久米靖穂・今 喜代治・田口辰雄・鈴リ 宏・神戸和猛登

摘要

 1957年から1970年までの13年間は計画密植園の樹体の成長、収量変化についてゴールデンデリシャスで検討した。1971年から1976年までの6年間は樹体改造後の果実肥大、果色、果実品質におよぼす樹冠幅、ヘッジングの角度、整枝せん定法、受光量についてゴールデンデリシャス、スターキングデリシャス、ふじを供試して検討した。

樹形改装前

1.幹周、樹高、樹冠幅、樹冠容積の増大と収量との間には正の高い相関関係が認められた。

2.栽植後15~16年までは幹周の大、小によって樹冠の大きさ、着果数、収量の多少をある程度推定することが可能であった。

3.10a当たり、33本植(5.4m×5.4m)では15年生で、10a当たり、50本植(4.5m×4.5m)では11年生で密植の弊害があらわれた。計画密植園を間伐するか、樹形改造するかの目安は樹冠占有率70%と判断された。

樹形改造後

4.ヘッジロー仕立てに改造後はわい化処理(窒素肥料の制限、はく皮逆つぎ、夏季せん定)で樹勢を安定させる必要があった。

5.高品質、多収を維持する樹高、樹冠幅はそれぞれ、10a当たり、33本植では3.5m、3.6m、10a当たり50本植では3.5m、3.0mであった。

6.ヘッジング角度20度は頂芽数、着果数の減少が著しかった。

7.ヘッジ樹は樹形構成の面から次のタイプに分けることができた。
  Ⅰ型 主幹-主枝-亜主枝-側枝
  Ⅱ型 主幹-主枝-側枝
  Ⅲ型 主幹-側枝

8.ヘッジロー仕立て樹は樹冠内への光の投入が良好で、既成仕立て樹より果実品質のバラツキが少ない傾向が認められた。

秋田県果樹試験場研究報告(1978) 第10号 27-35

樹園地における石灰の浸透に関する試験
第1報 表面散布した石灰の浸透と土壌の排水性との関係およびニトロフミン酸マグネシウム塩の浸透促進

効果

松井 巌・新妻胤次・田口辰雄・山崎利彦

摘要

  1. 表面散布した石灰の浸透は土壌の排水性の良否によって異なり、下層がれき土の園では10a当たり600kgの苦土石灰を施用した場合、3年間で40cmまで達したが下層が第三紀層で透水性が比較的小さい園では10cmにすぎなかった。
  2. ニトロフミン酸マグネシウム塩を石灰と併用すると石灰の浸透は促進され、鉱質土壌では100kg/10aの施用で石灰単用区のほぼ2倍の浸透効果が認められたが、腐植質土壌ではその効果は劣った。また分施した場合は効果が低下した。
  3. カラム試験では、浸出液中への溶脱Ca量は腐植質土壌で多かったが、ニトロフミン酸マグネシウム塩の添加による浸透促進効果は鉱質土壌で著しく、現地試験の結果を裏づけるものであった。
     これらのことからニトロフミン酸系資材を石灰と併用することは根圏への石灰の浸透を促進し、表面散布だけでは浸透の遅い鉱質土壌での土壌改良方法の1つと考えられる。

秋田県果樹試験場研究報告(1978) 第10号 37-44

水田転換園における土壌の特性とリンゴ樹の生育

新妻胤次・松井 巌・山崎利彦

摘要

 水田転換リンゴ園の問題点をさぐり、将来の水田へのリンゴ樹の植栽に対する技術的対策を確立するため、既成転換園の土壌、地下水位と樹体の生育および果実品質との関係について1970年から1972年まで調査を行った。

  1. 既成転換園の土壌は一般に塩基含量が高かったが母材と堆積様式によって含量にちがいがみられた。
  2. 転換園の樹の根群分布は根の伸長期の地下水位やれき層の出現位置により規制され、地下水位は周囲の水田の水管理に強く影響された。
  3. 転換園の樹は普通畑の樹と比較し、新しょう生長が遅くまで続き、特にスターキングデリシャスの10年生樹は6月27日から8月20日まで13.1cmも伸長した。しかし、ゴールデンデリシャスの同樹齢樹では7cm伸長しただけであり、20年生樹では両品種ともさらに伸長量が少なかった。また、その果実は硬度が低く、明らかに水分過剰の生育反応を示した。葉中成分ではCa含量が高く、土壌の塩基含量を反映していたが、Mn含量は生育期間中の地下水位が高い園地で過剰吸収される傾向があった。
  4. 転換園の土壌は比較的塩基含量は高かったが一部に排水不良の土壌があり、水溶性Mn含量も高く、リンゴ樹の植栽には排水対策、土壌改良が必要なことが認められた。
  5. 水田をリンゴ園に転換する場合は下層が砂れきからなる漏水田を選択することが望ましいと考えられる。

秋田県果樹試験場研究報告(1978) 第10号 45-52

リンゴ斑点落葉病菌の初期果実感染によるサビ果発生について

水野 昇・高橋俊作

摘要

 秋田県南部で、異常サビといわれる普通サビと異なる果面障害が以前から発生していた。特に有袋栽培果実でときとして多発した。これはサビ症状で、その特徴は、褐色~濃褐色で、ひび裂れ状を示し、ひどく果面を犯すものである。このサビ症状部分からAlternaria sp.菌が分りされ、ゴールデンデリシャスなどの幼果に接種し同様の発生を確認した。またスターキングデリシャス葉にも病原性を示した。このAlternaria sp.菌はAlternaria mali Roberts(斑点落葉病菌)と形態上ほぼ同一であることを認めた。
 以上の結果から、サビ症状に関与するAlternaria sp.菌はA.mali菌と同一であり、リンゴ幼果への感染によってサビ症状を発現させるものと考えられる。このサビ症状の発生は落花直後から落花30日後頃までの幼果期に感染した場合に生じ、その盛期は落花10日後頃までと思われる。主なリンゴ栽培品種の大部分が感染発病したが旭では発病しなかった。ゴールデンデリシャス、印度およびレッドゴールドは感受性が高く、東光、恵、国光およびスターキングデリシャスは中間的で、ふじ、つがる、紅玉および青り3号は少ない発生であった。殺菌剤のうち斑点落葉病に効果を示すものは有効であった。

秋田県果樹試験場研究報告(1978) 第10号 53-66

モモシンクイガの防除に関する研究
第2報 ダイアジノン粒剤の地表面施用による実用化試験

成田 弘・高橋佑治

摘要

  1. 1968年から1973年に、第1報で選抜した殺虫剤の内、最も有望と考えられたダイアジノン粒剤3%について実用化試験を行った。
  2. 第1回成虫発生期の防除では、地表面施用を2回樹上殺虫剤散布を2回並行した結果、高い防除効果が認められ、発生密度が低い場合はそれぞれ1回の処理でも効果が認められた。
  3. 第2回成虫発生期の防除では、地表面施用を1・2回、樹上殺虫剤散布を1・2回並行した結果、これも高い防除効果が認められた。
  4. これらを組み合わせ、第1、第2回成虫発生期を通じて各世代にそれぞれ2回の計4回に地表面施用し、樹上殺虫剤散布を3~5回並行した結果、高い防除効果が認められた。しかし、各世代それぞれ1回の計2回の地表面施用では、施用量を増しても防除効果は劣った。
  5. 第1回成虫発生初期から終了期にかけて、地表面施用を3・4回連続し、樹上殺虫剤散布を4回並行した結果も高い防除効果が認められた。
  6. しかし、地表面施用を3・4回連続しても、樹上殺虫剤散布を産卵期に並行しなかったり、全く行わなかった場合は、産卵抑制効果は認められたが、防除効果は不十分であった。
  7. 粒剤の適正施用量は、硅石コーテング粒剤で1回当たり5kg/10a程度、造粒ねり込み粒剤で1回当たり6kg/10a以上であり、経済性、使用の簡易性から硅石コーテング粒剤が適するものと考えられた。

秋田県果樹試験場研究報告(1978) 第10号 67-71

モモシンクイガの防除に関する研究
第3報 ダイアジノン粒剤の地表面施用による実証試験

成田 弘・高橋佑治

摘要

  1. 第2報に基づき1973年、1976年に最も防除効果が高かった地表面施用方法を主体として、モモシンクイガ防除の実証試験を行った。
  2. その結果、ダイアジノン粒剤3%の地表面施用は第1回成虫発生初期から終了期にかけ、約15日間隔に3・4回連続施用し、産卵が多かった時期に樹上殺虫剤散布を並行させる方法が最も高い防除効果であった。
  3. 背負式動力散粒機を用いて10kg/20aの処理に要した時間は約10分の短時間であった。
  4. 粒剤処理のさい、地表分散を均一にするためには処理1、2日前までに下草を刈った方が効果を高めた。
  5. この防除法は積極的な殺虫剤効果があるので、短期間で園内の発生密度を低下させる方法として実用性が高いものと考える。