研究報告第09号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9140

秋田県果樹試験場研究報告(1977) 第9号 1-8

リンゴの果実肥大と気象要因の関係

鈴木 宏・久米靖穂・田口辰雄

摘要

  1. 昭和38年から昭和49年までの12カ年のゴールデンデリシャスの果実の発育調査成績と、気象観測結果を用いて、各時期別肥大量と気象要因の関係を検討した。
  2. 果実重量は8月中の最高気温との間に、r=0.611の相関関係がみられる。
  3. 果実の縦径は落花後から5月31日までの積算温度とr=0.624の関係がみられる。横径の場合も同様である。
  4. 10月1日の果実糖度と積算気温の間にはr=0.667の相関関係がみられた。
  5. 10月1日と9月1日の果重の間には、r=0.798の相関がみられ、回帰式y=88.10+0.8884xが成り立った。
  6. 10月1日の果実の縦径と8月中の降水量の間にはr=-0.60で縦径の伸びが劣り、9月に日照が多いと果実の縦径が伸びた。

秋田県果樹試験場研究報告(1977) 第9号 9-16

リンゴ樹のリン欠乏レベルとリン酸施肥に対する反応

松井 巌・新妻胤次・田口辰雄・山崎利彦

摘要

 生育と葉中リン含量に及ぼすリン酸施肥の影響をみるために、1968年から1972年の5年間にわたってリン酸施肥の来歴のない樹園地に3年生スターキングデリシャス樹を植え試験を行った。

  1. 無リン酸区の木の生育は著しく劣り、その葉中リン含量は試験期間中を通じて0.100%以下であった。また土壌の有効態リン酸含量はTruog法でtraceであった。
  2. 新梢と幹の生長は無リン酸区と比較して少量のリン酸施肥により有意に増加した。また、施用量間の差(20、200、600gP205)は主幹断面積にあらわれた。
  3. 8月の葉分析でのリン欠乏レベルは0.100%であり、リン含量はCa、Mgとは正、Kとは負の相関がみられた。
  4. 供試土壌はリン酸固定容量が小さかったので20gのP205の施用により1970年まで葉中リン含量は適量レベル(>0.120%)に保たれたが、1971年には0.085%まで低下した。一方、200gP205の施用では葉中リン含量は1969年の0.161%から1972年には0.119%に低下し、600gの施用では0.190%から0.124%まで減少した。これらの結果から植栽時に1樹あたり200g以上のリン酸を施せば施用後少なくとも4年間はリン欠乏の症状はみられない。

秋田県果樹試験場研究報告(1977) 第9号 17-24

リンゴの窒素施用基準の設定
第2報 スターキングデリシャス及び国光に対するN制限3年間の影響とゴ-ルデンデリシャスおよび国光に対するN制限10年間の影響

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄・松井 巌

摘要

 試験は3年間のN制限試験と、10年間の長期N制限試験からなり、前者の試験にはスターキングデリシャス園2園と国光園5園を供試し、対照のN施用量を10a当たり12~18kgとし、N制限区はその1/2とした。10年間のN制限試験は前報(11)の継続あり、ゴールデンデリシャスは8Nと4N、国光は16Nと4Nの比較で、6年目から10年目の成績を示した。結果は次のとおりであった。

  1. スターキングデリシャスと国光のN制限3年間の影響
     葉中Nに対する影響は花輪統の2園でのみ観察され、N制限によって処理3年目の葉中Nは有意に低下した。しかし、他の5園では処理間の差は認められなかった。
     新梢の生長は花輪統の1園でのみN制限によって減少した。
     果実の着色は花輪統の2園でのみN制限によって改善されたが、他の土壌では処理間の差は認められなかった。
     収量と屈折計示度などの果実品質に対するN制限3年間の影響は認められなかった。
  2. N制限10年間の影響
     国光の葉中N含量は常にN制限区で低く、10年間の平均含量は16N区で2.92%、4N区で2.78%であった。ゴールデンデリシャスでは10年間のうち7年間はN制限区で低く、10年間の対照区の含量は2.32%であったのに対して、N制限区では2.23%であった。
     生育はゴールデンデリシャスのN制限区で1年枝総長が少なく、この差は10%レベルで有意であったが、国光では処理間に差はまったく認められなかった。なお、処理5年目と9年目の比較でも両品種とも生長量に差は認められなかった。
     果径、結実数などに対する処理の影響は両品種とも明らかでなく、10a当たり4kgのN施用量でも収量は低下しなかった。
     屈折計示度はゴールデンデリシャスではN制限区で約0.6%高く、差は有意であったが国光における差は有意でなかった。
     滴定酸度は両品種ともN制限区で高い傾向が認められた。
     共選場における選果結果によれば、ゴールデンデリシャスのN制限区は8年目までは黄実の比率が高かったが9年目以降は差が認められず、いくらか小果が多くなる傾向がみられた。
  3. N制限に対するリンゴ園の反応について考察した。

秋田県果樹試験場研究報告(1977) 第9号 25-74

リンゴ(ゴールデンデリシャス)の葉分析法の実用化に関する研究

山崎利彦・新妻胤次・松井 巌・田口辰雄

総括

  1. 葉分析による栄養診断法は手法としてはすでに確立されているにもかかわらず、現地のリンゴ園に応用されていない。この原因について究明した結果、次のことが明らかになった。
    1. 現地のリンゴ園の大部分はN施用量が過剰であり10a当たりのN施肥量を4~8kg程度に減少させても収量は低下しないばかりか、品質が高まり生理障害が減少した。
    2. N過剰園に対してN施肥量を低下させた場合の反応の現れ方は、まず葉中Nが減少し、ついで果実の着色が良好となり、生理障害が減少した。さらにN吸収量が低下すると、生長が鈍りその後に収量の低下が認められた。これらのことから葉分析法による診断が可能と考えられた。
  2. 栄養診断に用いるためのゴールデンデリシャスの葉中Nの診断基準を求め、次の結果が得られた。
    欠乏レベル・・・・・1.53~1.96%以下
    不足レベル・・・・・1.90~2.06%
    適正レベル・・・・・1.92~2.26%
    やや過剰レベル・・・2.46%以上
  3. 現地リンゴ園のN施肥量が低下するにつれて果実の品質は改善され、生理障害は減少したが、より均一でより良質の果実を生産するためには、さらにきめの細かい施肥の合理化が必要となった。このような段階においては一律の土壌統ごとの施肥基準では要求に応じられないので、約150園地のゴールデンデリシャスを供試して栄養診断法の実用化を試みた。なお、果実の品質は栄養条件のほかに、栽培管理法や気象条件などの影響もうけるので、それらの要因を含めて重回帰分析法によって総合的な診断を行った。
    1. 葉中成分および果汁中Kと果実形質との関係
       葉中Nおよびクロロフィル含量は果色の支配的な要因として選択され、それらの含量が低下するにつれて果色はよくなった。また、屈折計示度に対しても葉中N(クロロフィル)は負の要因として採択された。さらに葉中Nとクロロフィル含量を支配している要因を解析した結果、N施肥量が最も重要な要因として採択された。
       葉中CaとMgは果実の大きさに影響する要因として採択されたが、葉中P、Kなどの影響には一定の傾向がみられなかった。
       果汁中Kは屈折計示度と滴定酸度に対して支配的な要因と認められた。また、果汁中Kの多少を支配する要因としては葉中Kが採択された。
    2. 着果量、新梢長、立地条件と果実形質との関係
       着果量は果実の大きさに対して最も大きな負の影響力を有していたが、果実品質に対する影響は少なかった。
       新梢長は屈折計示度と滴定酸度に対しての負の影響力を有する要因として採択されたが、支配的な要因ではなかった。
       立地条件は果色や屈折計示度、あるいは滴定酸度に対してしばしば重要な要因として採択された。
    3. 土壌と果実形質との関係
       果色と屈折計示度については、4年間のうち2年間は平鹿統の果実が他の土壌よりすぐれていた。
    4. 気象要因と果実形質との関係
       果実の大きさ、果色、屈折計示度に対する気象要因の寄与率は50%前後で高かった。しかし、滴定酸度に対する影響は少なかった。
    5. 葉中成分間の相互作用
       P:Ca、Ca:Mg間では常に正の相関関係がみられ、K:Ca、K:Mg間の相関関係は常に負であった。その他の成分間の相関関係は条件によって変化した。また、診断に重要な葉中Nに対する他成分の影響は窒素飢餓の条件下でのみ観察され、寄与率は51%であった。
    6. 実際栽培への応用
       重回帰分析の結果から、葉中Nはクロロフィルによって代表されることが明らかになったので、リンゴの葉色を比較しうるカラーチャートを作製して供試した結果、実用に供試しうることが明らかになった。また、栄養条件以外の要因の影響も重回帰分析によって評価することが可能になった。

秋田県果樹試験場研究報告(1977) 第9号 75-81

リンゴ黒星病に関する研究
第2報 初期散布の防除効果について

工藤哲男・高橋俊作・水野 昇

摘要

 リンゴ黒星病防除の中で、特に初期防除の重要性を知ろうとして一連の圃場試験を行った。

  1. 果、葉そう葉の発病量は芽出期から開花直前までの散布によって大きく左右され、散布回数が少なく、散布時期がおくれると多くなった。
  2. 果、葉そう葉の発病を多くすると、落花後からの定期散布をしても新しょう葉の発病はおさえがたく、逆に少なくおさえると新しょう葉の発病も少なくできた。
  3. 使用した薬剤の種類による効果差は明確に認められなかった。
  4. 以上のことから本病の防除には、果、葉そう葉の発病を直接的におさえることが大切であり、このためには芽出期から開花前までの散布が重要であると考えられた。