研究報告第07号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9124

秋田県果樹試験場研究報告(1975) 第7号 1-34

リンゴの貯蔵に関する研究
第1報.リンゴ果実のポリエチレン包装による鮮度保持

神戸和盛登・今喜代治・久米靖穂・田口辰雄

摘要

 本研究はリンゴ果実のポリエチレン包装による鮮度の保持を主体に、フィルムの厚さ、大きさの決定、フィルム包装によるガス障害とその防止法、開封後の品質変化について1962~70年に行った調査および研究結果をとりまとめたものである。

  1. リンゴ果実の鮮度保持に及ぼすポリエチレン包装の効果はきわめて顕著で、減量の抑制、果色変化の抑制、果肉硬度の保持、酸含量の損失防止など鮮度保持効果が明らかで、特に冷温貯蔵と併用することによって、さらに効果が向上し、かつ安定する。
  2. ポリエチレン袋内のO2およびCO2の推移は封入直後の数日は温度に影響されて空気組成が著しく変化するが、一定期間後は温度に影響されることなく一定値の濃度で平均状態になることが明らかとなった。
  3. フィルムの厚さによって袋内のO2およびCO2の組成が異なり、薄いフィルムは鮮度の保持効果が劣り、逆に厚いフィルムは果肉の軟化を抑制する効果は大きいが、ゴールデンデリシャスは果肉かっ変障害の発生がみられ、最適の厚さは0.05mmであった。
  4. ポリエチレン容器の比較では大きな容器は小さな容器よりも明らかに鮮度の保持に効果があった。実用的にはリンゴ木箱の内装袋が理想的である。
  5. 果肉のかっ変障害の発生は袋内CO2濃度が密封直後の急増樹では10%以上、平衡状態以後は6%以上の際に危険性を伴う。果肉かっ変の発生原因はCO2の過剰障害と推察される。
  6. 果肉のかっ変障害はポリエチレン袋内に適量の消石灰を封入することにより過剰なCO2を吸収してかっ変を防止することができた。消石灰の適量はポリエチレン0.05mmの厚さでは果実15kgに対して消石灰100gである。
  7. 袋内に消石灰を封入することにより、袋内のCO2およびO2が一定期間著しく低濃度となるが鮮度保持効果は劣らなかった。
  8. 開封後の品質変化は普通冷蔵に比較して20℃10日間放置並びに開封20日後の消費地(東京)における官能検査でも包装の効果が持続されている。
  9. ポリエチレンフィルムの年次別販売量(果樹協会調)では秋田県南部だけでも毎年、平均20,000枚程度使用されている。

秋田県果樹試験場研究報告(1975) 第7号 35-42

リンゴ東光種の後期落果について

熊谷征文・工藤哲男

摘要

  1. リンゴ東光種の後期落果(Preharest drop)と心かび病について1968年から1971年に調査した。
  2. 落果は8月末から始まり、収穫期まで続いた。
  3. 落果原因として心かび病と果こう(梗)基部のき裂が観察された。心かび病に起因する落果は9月中に多く、収穫期(10月下旬)が近づくにつれてき裂による落果が増加した。
  4. 心かび病の被害はがく筒(Calyx tube)の広い果実や大型の果実に多い傾向が認められ、また、側果よりも中心果に多かった。
  5. 果心部から分離された寄生菌の内、Alternaria sp、Fusarium spp. の比率が高かった。

秋田県果樹試験場研究報告(1975) 第7号 43-66

リンゴモニリア病に関する研究
第2報.トップジンM水和剤の葉ぐされに対する治療防除効果

高橋俊作・水野 昇

摘要

 リンゴモニリア病の葉ぐされ(稚葉感染)防除のために、トップジンM水和剤を供試し、治療防除剤としての効果について、1969~1973年までの結果をとりまとめて報告する。

  1. トップジンM水和剤のモニリア病葉ぐされ発生に対する保護防除効果は期待できなかった。
  2. トップジンM水和剤は病斑拡大抑制として作用し、とくに接種6日後(病斑発現当時)前後に散布した場合が最も効果的であった。
  3. トップジンM水和剤を小型病斑に散布した場合は病斑拡大抑制の結果として、また、大型病斑に散布した場合は、胞子柄形成阻止として分生胞子形成を抑え、その効果は顕著であった。
  4. 現地の葉ぐされ多発園で、トップジンM水和剤の病斑拡大および分生胞子形成抑制効果が実証され、その結果として、実ぐされ(分生胞子の花器感染)発生が極めて少ない結果も認められた。
  5. 現地の防除体系化試験で、標準防除区であるサンキノン水和剤1500倍3回散布区に対してトップジンM水和剤500倍2回散布区および1回散布区が、葉ぐされ発生量ではほぼ同等であり病斑拡大および分生胞子形成抑制効果は顕著に優れた。

秋田県果樹試験場研究報告(1975) 第7号 67-77

モモシンクイガ(Carposina niponensis Walsingham)の産卵管習性に関する研究
第2報.産卵の垂直分布について

成田 弘・高橋佑治・佐藤修司

摘要

  1. モモシンクイガの産卵の垂直分布を圃場成木で検討した。モモ樹は1953年に東京都の東京農業大学旧用賀農場で、リンゴ樹は1960、1961、1965年の3年間に秋田県平鹿町の現地で調査した。
  2. 初産卵はモモ樹の場合、結果部位の高さに関係なく各段に同時産卵したが、産卵数は高い果実ほど多く、低い果実ほど少なかった。また、リンゴ樹の場合は年間産卵数の多少にかかわらず、上段の果実だけに産卵した。
  3. 両樹種とも産卵数は結果部位が高い果実ほど多く、低い果実ほど少なかった。しかしながら産卵後期には高さによる差がみられなくなった。
  4. 両樹種とも上段の果実は産卵数、産卵果数、産卵頻度数が多かった。この習性から、産卵の早期発見は上段の果実に調査の重点を置くことによって簡易化できる。
  5. リンゴ樹では、産卵数と産卵果数との間に高い正の相関が認められた。

秋田県果樹試験場研究報告(1975) 第7号 79-125

秋田県における昭和49年豪雪による果樹の被害実態調査

鈴木 宏・丹野貞男・久米靖穂・田口辰雄・丹波 仁

摘要

  1. 昭和48年11月から昭和49年4月に秋田地方気象台始まって以来の記録的な豪雪に見舞われ、秋田県果樹試験場と現地で降雪と雪質の変化、雪害の実態、消雪方法について調査した。
  2. 積雪期間は昭和48年11月17日から、昭和49年4月20日までの154日で、総降雪量1327.4cmに達し、最積雪深は昭和49年2月14日247cm、日降雪深は昭和49年1月26日の90cmが最も多かった。
  3. 秋田県内の積雪深と雪害の関係を、リンゴ「ゴールデンデリシャス」10~15年生樹の調査で150cm以下では枝の損傷が少なく、150cm以上になると損傷の度合いが著しくなり、300cmを越えると80%以上の損傷であった。また、積雪深250cm(2月18日)の時点でスターキングデリシャスの雪中に埋没した樹の損傷程度は65.4%であった。
  4. リンゴの品種による枝の損傷割合いは明らかな差が見られなかった。
  5. リンゴ園の条件差による損傷程度は、傾斜地の場合北斜面の損傷が多かったが、栽植密度との関係は明らかでなかった。樹令による損傷のちがいは、老木と5年以下の若木の損傷が多かった。
  6. 樹体の骨格形成による枝の損傷は、枝の発出角度の広狭による差は明らかでなかった。また、枝の発出位置では地上50~200cmの枝の損傷が多かった。
  7. 雪害の影響で樹冠の地上から150cm以下は上部より1週間ほど開花がおくれた。また、リンゴの損傷枝と頂芽数の脱落との間には高い相関が認められた。
  8. パイプ支柱によるブドウ棚では、直径3.5cmの囲周柱の場合は殆ど折れ曲がった。
  9. 積雪期間の長いことから、リンゴ樹のみならず、ブドウ、オウトウ、ナシなどの野ネズミ被害が著しかった。
  10. リンゴ園の消雪には地下水利用が、人力より能率が高く、また、最深積雪後の除雪が早いほど枝の損傷が少なかった。
    冬期間リンゴ園に水を掛け流すと、枝の損傷が少なかったが、幼木では地際の部分から腐敗枯死し、5年生の木でも生育が押さえられた。
  11. 苦土石灰、ようりん、モミガラクンタンの散布は消雪を早めることができた。