研究報告第06号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9122

秋田県果樹試験場研究報告(1973)第6号 1-82

リンゴの品種育成に関する研究

今喜代治

総括

 青森県りんご試験場は、主として、りんご品種、国光、紅玉に代わるべき新品種育成の目的で、1928~1938に?スり、品種間交配による実生を育成してきた。用いられた品種数47、組合せ数188、その総育成本数5267本におよんだ。
 本論文は同試験場在任中(1946~1955)以上の品種間交雑実生の諸形質の研究結果から、新品種としての特性をそなえた個体の選抜と、これと平行した、品種間交雑実生の両親として用いた品種の形質の遺伝性を分析し、優良品種育成の交配親の検討を行ったものと、さらに、現任地の秋田県果樹試験場で1956~1965にわたり、その補完的研究をとりまとめたものである。

I.諸形質の遺伝
 諸形質の調査対象として取り上げた組合せは、その実生個体数を20以上のものに限定したが、果色、風味、品質などの場合はそれ以外の個体数でも対象とした。
 果色、風味、品質については、遺伝の筆者の判断により、果重、果径、貯蔵生理障害、ビタミンC含有量、成熟期、発芽期は測定値により、花粉の形状、毛茸の多少につては判断によった。

  1. 果色
     果色は量的遺伝であり、着色量の多い品種間の子孫は一般に着色量が多く、着色様式については表面果色の一様的なものは縞状型に対し劣性である。また、濃紅着色因子は淡紅または黄緑色因子に対して優勢である。
     品種的には国光の色調は両親の中間より花粉親品種の影響を受け易く、暗、鈍紅色子孫が生ずる。紅玉は鮮紅色の子孫を生じ易く、花粉親の影響を受けにくい。G.Dはその色調をよく伝える。とくに印度との組合せでそうであった。
     印度×白龍の組合せで着色子孫の比率が高いのが注目された。
  2. 果重
     一般的には、両親の平均より小型の傾向であるが、紅玉×デリシャスには該当しなかった。
     品種的には、国光は小型を、紅玉は国光より大型を、G.Dは小型子孫の比率を増すが、印度との組合せでは両親に近いか、または、それ以上の大型子孫を生ずる。
  3. 果形
     各組合わせとも、両親の型に近い子孫を生じ、その平均値はおおむね近似しているが分散度は大きい。
     品種的には、国光を母本とする場合、G.Dが父本の場合は長円形、デリシャスで稍長円形、紅玉、祝で円形から偏円形に、また、紅玉を母本とする場合、国光、祝、デリシャスは円形から偏円形に、国光、紅玉の自殖の場合は円形から長円形の傾向に、G.D×印度の場合は明らかに長円形の子孫の比率が大きく、これは、G.Dの長円形、長円錐形の優性を現している。
  4. 風味
     甘酸×甘酸では甘酸、甘酸×微酸では甘酸、甘酸×酸では酸、強酸×微酸では強酸、甘酸×甘、強酸×甘、酸×甘の場合、甘の代表的品種である印度を一方の親とする場合は、甘がやや優性か、優性であったが、それぞれすべての組合せには該当しなかった。
     品種的に、デリシャスは、甘、微酸の子孫を生じやすく、印度は甘の子孫比率が多かった。
  5. 品質
     総育成実生本数に対する優良と認められる個体数の比率は約1%であったが、品種、組合せによっては高率のものもあった。とくに、G.Dを一方の親にもつ組合せの子孫は良好な品質の割合が高い。とくに、G.D×印度、印度×G.Dにおいて顕著であった。また、国光を母本とする子孫は両親の中間よりも一方の親品種の影響を受けやすい。紅玉は一般に良好な品質子孫の割合が多い、しかしながら、すべての組合せには適合しなかった。
     組合せ的に良好なものはG.D×印度、国光×紅玉、反面、不良子孫の多い組合せは、紅玉自殖、旭×紅絞、紅玉×ワインサップであった。
  6. 貯蔵中の生理障害
     両親のもつ罹病性は明らかに、しかも、高率に遺伝する。
     国光、紅玉、デリシャス、G.D、印度のもつ生理障害の罹病性の遺伝につき、Internal break-down群の子孫の多い組合せは、紅玉×デリシャス、紅玉×国光、その相反、国光×デリシャスでG.D×印度の子孫にも8.3%あった。Scald群の子孫の多い組合せは、、国光×デリシャス、紅玉×デリシャス、国光×G.D 、G.D×印度、国光×紅玉、その相反の順序となっており、Jonathan spot、Jonathan freckleの多い子孫の組合せは国光×紅玉、その相反で、国光×デリシャス、国光×G.D、紅玉×デリシャスにもわずかながら出現していた。
     Internal browning群の多い子孫の組合せは、紅玉、国光、G.D、印度を一方の親にもつ組合せに多く、デリシャスを一方の親にもつ組合せにもわずかながらあった。
  7. 成熟期
     熟期の遺伝は両親に準ずるが、両親よりさらに早熟のもの、または晩熟のものが生まれる。
     一般的にみて、晩生×早生では、両親の中間より晩生に、晩生×中生は両親の中間より晩生に、また、中生×中生でも晩熟子孫を多く生ずる例もある(紅玉×デリシャスの例)。品種的には、国光印度は晩熟子孫を多く生ずる。
  8. ビタミンC含有量
     りんご果実のビタミンC含有量の遺伝は両親に準ずる。しかしながら、両親の何れより高い子孫が国光×デリシャス個体数の40%、最低でG.D×印度で6.5%、総平均で22.1%が両親より高含量であった。
     将来、ビタミンC高含有量品種育成の期待は明るいものと思う。
  9. 発芽期
     発芽期の早、晩は両親に準じて遺伝する。しかしながら、早×晩、中×晩、中×早の何れの場合においても、おそい発芽性が優性であり、従って、子孫の平均は、両親の平均より遅芽性を示すのが通例であった。
  10. 花芽
     花芽の形状の中に先端の鋭い品種、国光、G.D、ワインサップ、祝、デリシャス、先端の円味を帯びた品種、紅玉、印度の交配による、それぞれの子孫は、先端の鋭型が優性である。また、花芽の毛茸の多少の程度について、毛茸の多い品種、紅玉、印度、少ない品種、国光、G.D、これらの中間からやや少ない品種はデリシャス、祝、ワインサップであるが、これらの交配による子孫は、毛茸の少型が優性であった。
  11. 母本別品種の遺伝の特徴
    1. 国光を母本とした場合
       国光の果実形質であるその色調、果形、果重、風味、貯蔵中の生理障害については、その子孫に対して優性的に遺伝する。品質については、各組合わせ共、劣悪品質の比率が少ない。この品種の交配母本としての価値は、成熟期、発芽期の晩性の点にあると思考する。
    2. 紅玉を母本とした場合
       紅玉の果実形質であるその色調などは特徴的に遺伝するが、貯蔵中の生理障害発生子孫の比率が高いことが欠点である。従って、組合せを考慮すれば母本的価値は高い。
    3. 母本別優良実生の比率
       母本別総育成本数に対する優良実生個体(この場合の優良実生とは食味的に優良であることに限定)の比率は国光1.10%、紅玉0.64%、印度3.11%、G.D8.99%、花嫁1.21%、エーキン0.39%、総育成本数に対する早優良実生の比率は1.14%であった。
  12. 組合せ別遺伝の特徴
     第10表にしめす通り、A+B’上の級内に入れられるものの中、比較的良好な組合せは、国光×紅玉、国光×G.D、G.D×印度で次いで、紅玉×国光、花嫁×祝となっている。 
     近親交雑の自殖、または、近親と思われる組合せ紅玉×ワインサップ、旭×紅絞の子孫の良好割合は低率であった。
     第11表の総育成本数との対比でみると、G.D×印度、国光×祝、花嫁×祝、国光×G.D、国光×紅玉が良好な組合せとなっており、近親交雑と思われる組合せについては第10表のとおり低率であった。

Ⅱ.新品種の選抜と解説
 前項の多数の品種間交雑のうちより、詳細な形質調査の結果、有望と思われる14個体を選抜し、新品種として命名、発表した。
 陸奥(G.D×印度)、恵(国光×紅玉)、王鈴(G.D×デリシャス)、福錦(国光×デリシャス)、豊鈴(国光×G.D)、福民(国光×紅玉)、光鈴(G.D×印度)、新印度(印度×G.D)、新星(ゴールデン×早生旭)、新光(国光×紅玉)、紫(紅玉×デリシャス)、甘錦(国光×印度)、ゴールデンメロン(G.D×印度)、旭光(国光×旭)、この中、恵、福錦、豊鈴、および福民は国光、紅玉に、陸奥、王鈴、光鈴はG.Dに、新印度は印度に、新星、新光は旭と紅玉の中間に、ゴールデンメロン、甘錦、紫は特徴的なものとして、それぞれ比較検討すべきものとして選抜されたものであるが、今後の試作によって、評価がなされよう。
 以上、14種の中、陸奥、福錦については、染色体数で3倍体であることを、花粉、葉、根端細胞による染色体数によって確認した。

秋田県果樹試験場研究報告(1973)第6号 83-92

モモシンクイガ(Carposina niponensis Walsingham)の産卵習性に関する研究
第1報 樹種別産卵趨性について

加藤作美・佐藤修司・成田 弘

摘要

  1. 果実害虫としてのモモシンクイガの産卵習性を明らかにするため、秋田県天王町の果樹園で結果枝が交叉状態のリンゴとモモ、モモと日本ナシの果実を用い、1962~1966年の間、同一樹で産卵の状況を継続調査した。
  2. 産卵開始期はリンゴとモモの果実ではリンゴが早いか同時期であり、モモと日本ナシの果実ではモモが常に早かった。
  3. 産卵量はリンゴとモモの果実ではリンゴが常に多く、モモと日本ナシの果実ではモモが常に多く、この結果は村松(1927)の報告と同じ傾向であった。
  4. リンゴの果実に対する産卵開始期、産卵量を事前予察するために、モモの果実を指標植物とすることは不適当であった。

秋田県果樹試験場研究報告(1973)第6号 93-98

リンゴ園の土壌肥沃度に関する研究(第9報)
ホウ素欠乏と土壌中の水溶性ホウ素および葉中ホウ素含量の関係

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄

摘要

  1. B欠乏と葉中B、土壌中Bとの関係を明らかにするため、1968年には153園、1969年には149園のゴールデン・デリシャス園について調査した。B欠乏は1968年には調査園の24.2%に、1969年には18.2%に認められた。
  2. 土壌中の水溶性Bは、1968年には0.16ppmから2.48ppmの変異がみられ、平均は0.62ppmであった。1969年には0.36ppmから4.09ppmの変異がみられ、平均は1.03ppmであった。
  3. B欠乏の程度と葉中Bとの間には、1968年には0.537、1969年には0.420の負の相関係数が得られた。欠乏園の葉中Bの平均値は、1968、1969年にそれぞれ8.1、8.6ppmであり、正常園のそれは12.1、12.4ppmであった。
  4. 土壌中Bと葉中Bとの間には1968年には0.433、1969年には0.358の相関係数が得られた。結果を総合して、土壌中の水溶性Bが1.0ppm以下、葉中Bが15ppm以下の範囲に含まれる園ではB欠乏発生の危険があり、それらの園のうち少なくとも30%の園には明確な欠乏がみられた。

秋田県果樹試験場研究報告(1973)第6号 99-102

リンゴ果汁中の有機酸とKの関係

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄

摘要

  1. この研究はリンゴの果汁中の有機酸とKの関係を明らかにするために行ったものである。
  2. ゴールデン・デリシャス、国光の果汁中の有機酸の約88%はリンゴ酸であり、他にごく微量の酢酸、ギ酸、クエン酸などがみられた。リンゴの果汁中のカチオンの約92%はKであり、Mg、Caはそれぞれ5.8、2.2%であった。
  3. ゴールデン・デリシャスの果汁の滴定曲線はリンゴ酸のそれとよく一致した。
  4. Kと遊離酸の間に密接な関係が認められない果汁でも、結合酸とpHの間には高い相関関係が認められ、リンゴ酸を滴定して得られた結果とよく一致した。
  5. 190個所のゴールデン・デリシャス園から集めた果汁の遊離酸とK濃度との間には0.51の相関係数が認められたが、相関係数を低く要因はおもにpHの変異であった。