研究報告第04号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9115

秋田県果樹試験場研究報告(1971)第4号 1-14

リンゴ園の栽植密度に関する研究
第1報.成木園の間伐について

今喜代治・神戸和猛登・久米靖穂

 リンゴ園(20年生)10a当たり約18.7本植密度(7.2×7.2m)の園地10aを供用、斜方間伐方法により、昭和33~37年の5か年で漸進的に半数間伐を完了し、その間、3年間収量及び樹冠変化を昭和33~40年の8か年にわたり検討した。調査対象樹は国光の永久樹5本、間伐予定樹4本とし、その追跡調査を樹冠、収量について行った。場所は秋田県横手市楢沢高橋弥太郎氏園である。その結果を要約する。

  1. 永久樹、間伐樹別の1本当たり樹冠変化:樹冠の半径について、永久樹は試験当初に比較し、7年目で122.7%、間伐樹は5年目で84.1%、高さについては、永久樹は同じく116.9%、間伐樹109%、半径:高さの比率で永久樹は同じく96.1%、間伐樹は128.7%、容積は永久樹で同じく166.9%、間伐樹で95.2%となった。
  2. 永久樹、間伐樹の合計利用面積については、試験当初に比較し、7年目で86.7%となった。
  3. 永久樹、間伐樹別の1本当たり収量変化:果数について、永久樹は試験当初に比較し、6年目で110.9%、収穫箱数は7年目で150%、間伐樹は同様の比較で果数が5年目で95.5%、収穫箱数で同じく105.5%であった。
  4. 永久樹、間伐樹別の10a当換算による植付本数と収量の経年変化:植栽本数について、永久樹は試験当初10a当たり19.9本、これが7年目で12.7本植、間伐樹は当初の30.5本植、これが5年目には42.7本のそれぞれの可能植栽本数となった。
     収量については、永久樹は当初10a当たり219箱(20kg入)、これが、7年目には224.8箱とわずかに増し、間伐樹では当初165箱、これが5年目で247.7箱の可能生産となった。
  5. 永久樹、間伐樹の合計収量については、試験当初に比較し、7~8年目で108.8%、その間も大きな変化がなかった。しかし、間伐年は、一時的に低下した。この園地の10a当たり収穫箱数は約165箱と試算された。

秋田県果樹試験場研究報告(1971)第4号 15-32

リンゴ園の栽植密度に関する研究
第2報.ゴールデン・デリシャスの栽植本数

今喜代治・神戸和猛登・久米靖穂

 秋田県果樹試験場において、リンゴ、ゴールデンデリシャスを用い、1956~1966年の10年間にわたり粗植区(10a当、16.8本植密度)、中密植区(10a当、33.6本植密度)、高密植区(10a当、67.2本植密度)を設定し、1957年秋に2年生苗木を植え、以後、樹冠、収量の経年変化を検討した結果、植付初期10年間の適正植栽密度をおおむね明らかにすることができたので次に要約する。

  1. 植栽密度と樹冠の経年変化については占有面積、容積、頂芽数の間に明らかな関係が認められた。
  2. 収量は高密植区ほど多く、収量と、占有面積、容積、頂芽数との間には高い相関関係が認められ、初期収量の増大には単位面積当たり樹冠占有面積の拡大が第1条件であった。
  3. 栽植密度と経済性については粗収入でみると、粗植区に比し中密度区が1.7倍、高密植区が2.0倍となった。しかしながら、収益性及び1人当り所得については高密植区より中密植区がまさっていた。
  4. 適正栽植密度については前記樹冠生長、収益性試算よりみて、10a当り40本内外が適当であると推察した。

秋田県果樹試験場研究報告(1971)第4号 33-56

リンゴの開花結実に関する研究
第2報.各地における3月上旬の最低平均気温と発芽・開花予想

鈴木宏・丹野貞男

 秋田県果樹試験場において、3月上旬の最低平均気温と発芽初め、開花初めとの間の相関関係が認められたことから、これを基準にし各地の発芽初めの予測を実施した。この予想方法が各地に利用しうるかどうかについて、東北、北海道、長野、富山の各地の試験場より、昭和35年から、昭和45年までの11か年の祝(早生種)ゴールデンデリシャス(中生種)国光(晩生種)の3品種の発芽初め、開花初めと1月以降の旬別最高、最低平均気温調査などの資料の提供を得て、その相関関係を検討した。

  1. 3月上旬の最低平均気温と発芽初めとの相関関係の高いのは、秋田(祝、ゴールデンデリシャス、国光)花輪(ゴールデンデリシャス、国光)青森南(祝)岩手(祝、ゴールデンデリシャス)宮城(ゴールデンデリシャス)山形(祝、ゴールデンデリシャス、国光)であった。
  2. 3月上旬の最低平均気温と開花初めとの相関関係の高いのは、秋田(祝、ゴールデンデリシャス、国光)花輪(国光)のみで他は明らかでなかった。
  3. 4月中旬の最高平均気温と開花初めについてみると、青森、岩手、山形、福島、長野、秋田いずれも供試3品種とも有意差がみられた。富山、宮城、花輪では明らかでなかった。
  4. 調査地点の緯度と発芽初め、開花初めとの関係を、高度(海抜)に関係なくみると、ゴールデンデリシャスの場合、発芽初めは緯度の低い長野(北緯36度42分)で4月5日、緯度の高い北海道(北緯43度)では5月1日で、26日の巾があり、緯度の差6度でみると、緯度1度上昇で4.3日の差があることになる。開花初めでは、長野5月1日、北海道5月26日で25日の差があり、緯度1度上昇で4.1日の差があることになる。祝、国光ともほぼにた傾向を示した。

秋田県果樹試験場研究報告(1971)第4号 57-82

Macrophoma属菌によるリンゴ腐敗病(仮称)に関する研究
第2報.病原菌と防除法について

高橋俊作・水野昇

 ゴールデン・デリシャスの無袋栽培に伴って問題になってきたMacrophoma sp.菌による”リンゴ腐敗病(仮称)”についての調査研究の結果である。

  1. 本病の発生はゴールデン・デリシャスのみではないが、黄色系品種で発生多く、着色系品種ではあまり問題にならない。一般には数%の発生であるが、年次、地域によっては20~30%の病果率を示している。
  2. 本病の発生は例年8月下旬~9月上旬であるが、それ以前から発生をみる場合もある。収穫までに発生するものが大半であるが、貯蔵中に発生してくるものもある。二次感染はないようである。病果の発生、増加の経過で特徴的なことは、陽光面が先行し、樹の上部の陽光面から発生し始め、その後の増加も陽光面が先行するし、発生果でも陽光面が先行して発生することである。
  3. 果実での発病は果点からはじまり、褐色のほぼ円い病斑になるが、拡大して不定形な病斑になる。全果に及ぶものもある。病斑の拡大が緩慢なものでは病斑周辺に赤色色素を沈着させるが、拡大が旺盛なものでは赤色色素の沈着はない。また病斑拡大に遅速があった場合には、褐色の濃淡輪紋がみられるときもある。拡大した病斑上に柄子殻が形成される。病果は落下しやすい。
  4. 病果からはほとんどが純粋にMacrophoma sp.菌が分離された。二次的にAlternaria sp.菌が分離された。
  5. 本病菌は熟果に対して無傷では感染しなかったが、有傷では感染し、おう盛な発病を示した。有傷接種で品種間の罹病度を比較した結果、王鈴》東光>ゴールデン・デリシャス>印度>ふじ>国光》スターキング・デリシャス≒紅玉の順に罹病度が高く、現地における発生様相とも平行した結果であった。
  6. 枝に対しても有傷で感染し、病斑拡大もおう盛で、枝を枯死させるものもあった。病斑の拡大は若枝でおう盛であり、5年枝ぐらいになると非常に少なかった。若枝の病斑には柄子殻の形成も多かった。
  7. 本病菌はばれいしょ煎汁寒天培地で良好な発育を示した。菌そうははじめ灰白~灰色であるが、古くなると黒化した。菌糸は分岐し、隔膜有し、ほぼ5μの巾である。柄子殻は球形~扁球形、黒色であり、大きさは230~530μぐらいである。分生子梗は柄子殻の内側に密生し、無色、単胞で先端に1個の柄胞子を形成する。大きさは10~25×2.5~5.0μである。柄胞子はMacrophoma型で柄子殻の内に充満し、多湿下で溢出する。無色、単胞、だ円形~紡鐘形で、大きさは培養菌で17.5~30.0×6.3~8.8μ、枝病斑上に形成された胞子は22.5~40.0×5.0~10.0μであった。
  8. 本病菌は10℃~35℃前後で生育し、発育最適温度は30℃前後であった。柄子殻形成温度は20℃~35℃で、適温は30℃であった。柄子殻形成は光線照射下でのみ認められた。蛍光灯により1000~9000Luxの照射量で正常に形成された。
  9. 品種別果実煎汁寒天培地の菌そう発育差と品種別果実病斑拡大の差と平行する結果を示した。これはpHの差が原因となっているようである。
     年令別bark煎汁寒天培地では菌そう発育に差はみられなかった。
  10. 果実の熟度と病勢の変化を経時的に調べた結果、病勢増加傾向と果実酸度(リンゴ酸として)の減少傾向とが逆傾向を示した。果実の罹病性への転換期は7月下旬であった。
  11. 果実に対する感染は6月~7月が非常に高く、8月以降はきわめて少ないか、皆無であった。6~7月は無傷で感染した。無傷接種した場合、発病は熟期に近づいてからであった。
  12. 防除薬剤について胞子発芽抑制、果実感染防止試験の結果、トモオキシラン50%水和剤(有機銅30%、キャプタン20%)が選抜され、1969年から秋田県リンゴ病害虫防除歴に採用し、6月下旬~7月に、600倍で3~4回使用することにした。有機銅剤はゴールデン・デリシャスに対して薬害の危険性があるので、2、3の注意事項を付記した。注意事項として次の2点を付記した。
    1. ハイバン(水和硫黄57%、ジクロン6.5%、ノックメート14%)と混合または近接散布しない。
    2. 殺虫剤などとの混合薬剤数はできるだけ少なくする。

秋田県果樹試験場研究報告(1971)第4号 83-109

リンゴ園におけるクワコナカイガラムシの生態と防除に関する研究
第3報.クワコナカイガラヤドリバチ(Pseudaphycus malinus GAHAN)によるクワコナカイガラムシの生物防除について

成田弘・高橋佑治・工藤哲男・佐藤修司

  1. 人工的に大量増殖したクワコナガイガラヤドリバチを用いて、リンゴの害虫クワコナカイガラムシの防除法を1965~1969年に試験した。その際、放飼量はコナカイガラムシの寄生量の多少と樹冠の大小により3~5シートとし、シートの取り付け位置は果実のなっている場所に近い第1亜主枝分岐点の主枝背面に釘の固定した。
  2. 放飼適期はコナカイガラムシの越冬世代期で2令幼虫の多い時期が適し、秋田県南部では6月10日頃、県北部では6月15日頃になる。
  3. ヤドリバチ寄生活動の生物的障害要因は、リンゴ樹に営巣し、コナカイガラムシと共棲するアリ(とくにLasius niger L.)であって、これを駆除しなければヤドリバチ放飼による防除効果を高くすることができなかった。アリの駆除法は暫定的に低毒性有機燐剤、NAC剤を実用濃度で巣に大量灌注する方法を用いた。
  4. ヤドリバチ寄生活動の人為的障害要因は殺虫剤の使用で、放飼前約7日から放飼後約10日間は殺虫剤を散布してはならなかった。また、放飼したヤドリバチのほ場での羽化回数は年4回認められたが、羽化期間中に殺虫剤を散布しなかった場合はヤドリバチがコナカイガラムシに再寄生し、これが防除効果をより一層高くした原因と考えられた。
  5. 放飼適期、共棲するアリの駆除、殺虫剤の影響排除などを考慮に入れて実用化試験を行った結果、防除効果は高く、これまで行って来た殺虫剤散布による防除法より安定性があり、実用性の高いことが実証された。