研究報告第03号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9106

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第3号 1-34

リンゴの窒素施用基準の設定
第1報.国光、ゴールデン・デリシャスの葉内無機含量、生育、収量、果実品質に及ぼすN制限の影響

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄

県下の主要なリンゴ園土壌統を供試してN制限の影響を見るための現地試験を行った。国光とゴールデンの対照区の施肥量を10a当たり15~16kgとし、N制限区は4~8kgとした。結果は次のとおりであった。

  1. 葉内N含量はN制限によって低下し、ゴールデンでは2年目から2.1~2.2%(葉柄を含む)に、国光では2.7%前後になり対照区との差は0.1~0.2%であった。
  2. 国光の枝の生長はN制限によって低下しなかったが、ゴールデンでは4kgの施用で3年目以降は対照区より約20%低下した。
  3. 果実の糖、酸、硬度に対する影響はほとんど認められず、ゴールデンの4kg施用区で5年目に糖が約1%高まり、酸が増大したにとどまった。
  4. 果実の着色に及ぼす効果は非常に顕著で、特にゴールデンの4kg制限区の着色良好果の比率は対照区の2倍に達し、サビも少なかった。
  5. ビター・ピットに対するN制限の影響は非常に顕著で、20~60%の発生率の園の被害は実害のない程度にまで低下した。
  6. 収量はN制限によって低下しなかった。果実の大きさに対する影響もほとんどみられなかった。
  7. 以上の結果から、本県南部のリンゴ園では国光とゴールデンのN施用量は8kg程度まで低下できることが明らかになった。

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第3号 35-48

リンゴ園の土壌肥沃度に関する研究
第5報.土壌中のリン酸、カリ含量と葉中含量の関係

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄

 この研究は土壌中のリン酸、カリ含量と葉中P、Kおよび果汁中Kとの関係を明らかにして、リンゴ園のP、K肥沃度を把握するためと、土壌診断に有用な分析方法を知るために行ったものである。試験は1965、1966年には国光で行い、それぞれ38、46園について調査し、1968年と1969年にはゴールデン園をそれぞれ167、150園供試した。
 Kの分析は置換性KとK供給能について行い、PはTruog's法とBray'slA変法(0.2NHCl+0.2N NH4F)によった。結果は次のとおりであった。

  1. 置換性Kと葉中Kとの相関指数は1968年のゴールデン・デリシャスでは0.29、1969年には0.16であった。K供給能、K飽和度、K/Ca+Mg比などと葉中Kの間にもほぼ同じような相関関係が認められた。果汁中Kと土壌中Kとの間に相関関係は認められず、国光では土壌中と葉中Kの間には相関関係は認められなかった。
  2. Yruog's Pと葉中Pとの間には1969年のみ0.38の有意な相関指数が得られ、Bray's変法との間の相関指数はそれより低かった、両年とも国光では土壌中Pと葉中Pの間に相関関係は認められなかった。
  3. これらの結果から、PあるいはKについても土壌中と葉中の含量との間に低い相関関係しか得られなかったのは、土壌がそれら要素に富んでいたためと考えられた。
     またリンゴ園のPとKの肥沃度について考察した結果、本試験の供試園土壌では少なくとも3~4年間は無リン酸、無カリに対する反応はみられないであろうし、リン酸とカリの施用はかなり長い期間にわたって不必要と考えられた。

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第3号 49-60

リンゴ園の土壌肥沃度に関する研究
第6報.土壌の相違と粗皮病の発生との関係

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄

  1. 秋田県の主要なリンゴ園土壌である平鹿、柴内、花輪、釜の川統について粗皮病の発生程度を比較した結果、平鹿統、釜の川統で発生はきわめて少なく、北野、柴内統では発生が多かった。
  2. 平鹿統は易還元性Mnが最も高かったが水溶性Mnは少なく、北野、柴内統では易還元性Mnは低く水溶性Mnが多かった。
  3. 柴内、北野統ではpHが5.5以下に低下するにつれて水溶性Mnは高まったが、平鹿統ではその傾向が認められなかった。
  4. 石灰の多量添加によって易還元性Mnは低下したが、少量添加では効果が認められなかった。Mnに対するリン酸二アンモンの効果も石灰と同じ傾向が認められたが、これは一時的な吸着と考えられる。
     リン酸の添加はpHに影響を及ぼさず、平鹿統の易還元性Mnを低下させたが、柴内統では影響が認められなかった。

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第3号 61-74

リンゴ園の土壌肥沃度に関する研究
第7報.Mn過剰障害に対する炭酸石灰、リン酸アンモン、および硫黄の影響

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄

 国光のMn過剰障害に対する石灰、リン酸および水和硫黄の効果を知るために、粗皮病が発生しやすい北野統土壌を用い、スターキング・デリシャスを供試して200L容の鉢で試験を行った。

  1. 石灰の添加はpHを高め、滴定酸度と水溶性Mnを低下させて、粗皮病の発生を完全におさえた。リン酸アンモンの添加はCaと併用した場合はむしろpHを低下させ、水溶性Mnを高めて軽い粗皮病を発生させた。Sの添加はpHをわずかに低めただけであったが、粗皮病を著しく増大させ枯死寸前であった。リン酸アンモンをSMnと併用した場合には水溶性Mnは同じかいくぶん高まる傾向を示し、粗皮病はSMnに比べればいくぶん軽かった。
  2. 土壌中の易還元性MnはpHとほぼ平行して増減し、Mn過剰障害のindicatorとならなかった、これに反して水溶性MnはpHと負の関係にあり、Mn過剰症と最も密接であった。
  3. 地上部のMn含量と処理の関係は葉、皮、新梢、木質部ともに傾向は同じであった。Mnの添加は地上部のMn含量をわずかに高めただけであったが、Ca添加は地上部の各組織中Mnを著しく低下させた。リン酸アンモンの施用はCaと併用した場合は地上部のMn含量を高めた。
     これに反して、細根中Mnは地上部とはまったく正反対であり、Mn過剰障害の発生がなかった樹では細根中にMnの蓄積がみられた。細根中のFe含量はMnとほぼ比例した。

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第3号 75-92

リンゴ園の土壌肥沃度に関する研究
第8報.Mn過剰障害に対する苦土石灰とよう成りん肥の効果と母材による相違

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄

 第三紀凝灰岩を母材とする平鹿統と、腐植質火山灰の醍醐統にスターキング・デリシャスを植え、硫酸マンガンを加え、マンガン過剰に対する苦土石灰とよう成りん肥の効果を試験した。結果は次のとおりであった。

  1. 醍醐統に対するようりんおよび苦土石灰の添加は同じようにMn過剰を著しく軽減したが、平鹿統に対するそれらの効果は醍醐統より少なく、特に苦土石灰の効果は少なかった。
  2. 易還元性Mnに及ぼす処理の効果は認められず、易還元性Mnとマンガン過剰障害(粗皮症状)との間にも関係は認められなかった。水溶性Mnは処理年においては処理の影響を顕著に受け、粗皮症状とも密接な関係が認められたが、処理3年目の水溶性Mnはどの処理でもきわめて低く、粗皮症状との間に密接な関係は認められなかった。これらの分析法に比較して、0.2%のハイドロキノンを含む0.01N NH4Cl可溶Mnは診断のめやすとしてはすぐれているものと考えられた。
  3. 葉および新梢皮部中Mnと粗皮症状の程度との間には正の相関関係が認められ、Mn/Ca比との間にはさらに高い正の相関指数が得られた。
     細根中のMnは地上部の含量とは正反対で、粗皮症状とは負の関係がみられた。細根中のFe含量もほぼMnと平行して高まり、ようりんの単用は細根中のFe含量を高めた。

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第3号 93-104

リンゴ炭そ病の感染源について

工藤哲男

  1. 1966年に秋田県北部のリンゴ園に炭そ病の大量発生をみたのでその原因を調べた。
  2. 炭そ病の激発園はニセアカシアの林に接しており、特に小型病斑(径0.5~1mm)の形成はニセアカシア付近に限られた。
  3. ニセアカシア葉柄上の炭そ病斑とリンゴ果実上の炭素病斑からは形態学的に同一のColletotrichum spが容易に分離され、交互接種試験をかさねた結果、両寄主とも無傷で炭そ病症状をあらわした。
  4. これらの両菌株は同一菌Glomerella cingulata(Stoneman)Spaulding et Schrenkと同定された。
  5. 以上のことから、リンゴ炭そ病の多い年における第1次感染源としてはニセアカシア上の炭そ病菌も大きな役割をはたすものと考えられ、防除にあたってはリンゴ樹以外の寄主にも十分注意しなければならない。