研究報告第02号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9105

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第2号 1-18

リンゴの高つぎ更新法に関する研究
第1報.つぎ木本数および中間台の除去期間

今喜代治・神戸和猛登・久米靖穂

 リンゴの品種更新における効率的な高つぎ更新法を確立する目的で行った。中間台木を国光の成木(栽植距離7.3m×7.3m、10アール当たり18.8本植)、更新品種にゴールデン・デリシャスを供試して、一樹当たりつぎ木の本数および中間台の結実部位を除去する期間が樹冠、頂芽数、収量、経済性におよぼす影響について1962年から8年間調査を行った。

  1. 一樹当たりつぎ木の本数と更新の速度
     ゴールデン・デリシャスの頂芽数、着果数はつぎ木の本数に比例して増加数が多かった。40本つぎ木は4年目で成木に近い着果量となり、30本つぎ木は5年目、20本つぎ木は6~7年目、10本つぎ木は7年目で成木の約70%にとどまっており、更新速度の遅いことを示している。収量及び経済性については粗収入で比較してもつぎ木の本数が多いほどすぐれているが、40本つぎ木と30本つぎ木では非常に近接していた。
     一樹当たりつぎ木本数は収量、更新速度7年目の残ったつぎ木本数、経済性からみて、一樹当たり30本つぎ木が最も適正な本数と考えられる。
  2. 中間台の結実部位を除去する期間
     樹冠の変化は3年目除去がもっとも急激に縮小され、他は大きな変化はみられなかった。ゴールデン・デリシャスの頂芽数、着果数、収量ともに大差はないが、わずかに7年目除去区が劣る傾向を示した。国光の収量は中間台の短期除去区ほど早期に低下した。経済性については3年目除去区が一時的経済犠牲が大きく、他は更新期間中に大きな減収はなく年次の経過にともなって増大した。とくに5年目除去が累積粗収入でもっとも多かった。
     中間台の結実部位を除去する期間はゴールデン・デリシャスの収量、累積粗収入、一時的経済犠牲、樹体の保護から考えて、高つぎ更新を計画的に行う際は、5年目除去が最も理想的である。

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第2号 19-40

リンゴの開花結実に関する研究
第1報.リンゴの発芽および開花予想

鈴木宏・丹野貞男

1.リンゴの発芽初め、開花初めの予想方法を確立するため、秋田県果樹試験場(秋田県平鹿郡平鹿町醍醐)における、昭和35年から昭和44年までのリンゴの生態調査成績と気象観測成績(測点東経140度32分、北緯39度14分、海抜85m)を資料として、ゴールデン・デリシャスを中心に、早生種、祝、晩生種、国光について検討を行った。

2.リンゴの発芽初めおよび開花初めはつぎのとおりである。

  発芽初め 開花初め
品種名 最も早い年 最も遅い年 平年 最も早い年 最も遅い年 平年
第30表 リンゴの発芽、開花初め
ゴールデン
デリシャス
4月4日 4月16日 4月10日 5月2日 5月16日 5月7日
4月3日 4月15日 4月8日 5月1日 5月15日 5月5日
国光 4月11日 4月25日 4月17日 5月5日 5月18日 5月9日

(昭和35年~昭和44年)

3.リンゴの発芽について

(1)リンゴの発芽と旬別平均の9時気温、最高気温、最低気温と相関関係の最も高いのは、3月上旬の平均最低気温であり、各品種との間には次の関係式が成り立つ。

品種名 相関係数 回帰式
 第31表 リンゴの発芽と回帰式
ゴールデン
デリシャス
r=-0.812** y=-1.397x+2.515
r=-0.814** y=-1.324x+1.180
国光 r=-0.825** y=-1.772x+8.040

(注)3月上旬平均最低気温との関係

(2)積算温度と発芽との関係
 ゴールデン・デリシャスについて、1月1日から発芽日までの積算温度(0℃以上)と発芽の間には、相関関係が低く、3月の最高温度(0℃以上)の積算、さらには、5℃から10℃まで、おのおの差し引いた積算温度との間には高い相関関係がみられた。

(3)月平均気温との関係
 ゴールデン・デリシャスの発芽と月平均気温では3月が影響が強くr=-0.777であった。

(4)ゴールデン・デリシャスの発芽と積雪量との関係では、3月31日の積雪量との間にr=+0.778がみられた。

(5)ゴールデン・デリシャスの発芽と消雪日との間にr=+0.741の関係がみられた。

(6)10月1日から12月31日までの最高気温が7.2℃以下の日数と、ゴールデン・デリシャスの発芽との関係では相関関係が低かった。

4.リンゴの開花について

(1)旬別気温とゴールデン・デリシャスの開花では、3月上旬の平均最低気温が最も関係が高く、次いで、4月中旬の平均最高気温であった。さらに、祝、国光でも3月上旬の平均最低気温が相関はみられるが、より以上に4月中旬の平均最高気温の影響が高くなっている。
 3月上旬の平均最低気温との間には左の関係式が成り立つ。
 また、4月中旬の最高平均気温との間には下の式が成り立つ。

品種名 相関係数 回帰式
第32表 リンゴの開花と回帰式
ゴールデン
デリシャス
r=-0.771** y=-1.411x-1.155
r=-0.741* y=-1.382x-2.210
国光 r=-0.808** y=-1.492x+1.490

(注)3月上旬の最低気温との関係

品種名 相関係数 回帰式
第33表 リンゴの開花と回帰式
ゴールデン
デリシャス
r=-0.767** y=-1.463x+27.74
r=-0.814** y=-1.582x+28.32
国光 r=-0.766** y=-1.444x+30.36

(注)4月中旬最高気温との関係

(2)1月1日からの最高気温で0℃以上の積算では、各品種とも関係は低く最高気温より6℃および7℃を差し引いた積算温度でも関係が低かった。3月の気温では、最高気温より8℃以上を積算した温度で関係が高い。さらに、4月の最高気温の積算温度は開花と高い相関関係を示した。

(3)月平均気温と開花日では、ゴールデン・デリシャスでは、4月の9時気温、最低気温、最高気温の平均では相関関係が高い。1月から3月までの月平均気温との相関は非常に低い。

(4)ゴールデン・デリシャスの開花日と積雪量との間には、r=0.855の関係がみられた。

(5)ゴールデン・デリシャスの開花日と消雪日との間にはr=0.771の関係がみられた。

5.リンゴの発芽日および開花日を予想するには、3月上旬の平均最低気温で予想ができることを明らかにした。さらに開花日については4月中旬の平均最高気温も影響が強い。

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第2号 41-64

クワコナカイガラムシの生態と防除に関する研究
第2報.クワコナカイガラムシの薬剤散布による防除法について

成田弘・高橋佑治・佐藤修司・工藤哲男

  1. 慣行防除法の実用効果に疑問を持ったので、ふ化幼虫移動の実態調査に並行させて、殺虫剤散布による防除法の検討を行った。
  2. 1959~1962年に検討した袋かけを第1世代ふ化幼虫の移動期までずらす方法、1961~1964年に検討した慣行栽培どおり6月中旬に袋かけし、第1世代ふ化幼虫の移動期にあわせて殺虫剤を散布する方法の2つとも、防除効果は高く、実用性が認められた。
  3. 慣行防除法の越冬世代ふ化幼虫の移動期に殺虫剤散布を2回行う方法、越冬世代ふ化終了期と第1世代ふ化幼虫移動最盛期の2回に殺虫剤を散布する方法とも、防除効果は低く、実用性は認められなかった。
  4. 袋かけを遅らせる方法は、第1世代ふ化幼虫の移動開始から10日内に殺虫剤を散布して袋かけを行い、10日後さらに袋上から散布する。移動開始前に散布した場合の効果は低い。この方法はふ化幼虫移動型の1~5型全部に適用できるが、モモシンクイガ第1世代期の防除対策と、袋かけの非能率が問題になる。果実の着色は販売上の支障にならない程度であった。
  5. 第1世代ふ化幼虫の移動期にあわせて殺虫剤を散布する方法は、ふ化幼虫の移動期を適確につかみ、移動開始から3日内に第1回、前回散布から10日後に第2回の散布をし、高い防除効果があった。散布時期が移動開始前や移動開始後5日以上たつと、防除効果は劣った。この方法は移動型の2~5型に適用し、1型への適用は未確認である。
  6. 秋田県の現状では、移動型の1型が少ないので、第1世代ふ化幼虫の移動期にあわせて殺虫剤を2回散布する方法が適していた。
  7. 第1世代ふ化幼虫の移動開始期は、現地の被害樹の卵のうをそのままタングルフードで囲み付着虫の観察によって知る。

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第2号 65-78

リンゴ園の土壌肥沃度に関する研究
第4報.火山灰と第三紀土壌のリン酸、カリの無施用に対する反応と腐植質火山灰におけるリン酸の形態と肥効について

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄

  1. 花輪第1層(腐植質火山灰)では、カリとリン酸を2年間無施用にしても、ゴールデン・デリシャスの新梢生長には何ら影響がみられなかった。しかし、葉中のK、P含量はそれらの無施用によって低下した。
     花輪第3層(腐植質火山灰)と第4層(褐色火山灰)では、無リン酸区の新梢生長は低下したが、無カリ区では低下せず、葉中P、K含量はそれら要素の無施用によって低下した。
     平鹿統では(第三紀凝灰岩)、新梢生長は無リン酸によって減少し、無カリでもわずかにおさえられた。
    これらの結果から、リンゴ園の表層土壌にはかなりの量のリン酸やカリが蓄積しており、それがカリやリン酸の施用に対して樹が反応を示さない理由の一つと考えられた。
  2. リン酸カルシウムやリン酸アルミニウムは容易に実生によって吸収され、それら化合物の利用率は約11%であった。しかし、リン酸鉄の利用率は2.6%にすぎなかった。
     供給されたリン酸カルシウムの大部分はアルミニウム態となり、一部は鉄態に変化した。アルミニウム態を施用した区では試験期間の4ヶ月の間にアルミニウム態、鉄および難溶態への変化が認められた。鉄態の施用区ではアルミニウム態は増加せず、鉄態と難溶態の増加が認められた。
  3. Truog法とBray変法による土壌中のリン酸含量は土壌の種類によって非常に差があったが個々の土壌については土壌中のリン酸と葉中Pとの間に相関関係が認められた。土壌中の置換性カリは土壌の種類の差による変異は少なく、葉中Kとの間に相関関係が認められた。

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第2号 79-56

リンゴ園の土壌肥沃度に関する研究(第2報)
土壌中の塩基とビター・ピットの関係

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄

 リンゴ園の土壌中の塩基bitter pitとの関係を明らかにするため、おもに国光の bitter pitの発生を程度によって9園ずつ3groupにわけ、group間の置換性石灰の量と苦土、カリの相互関係、および塩基吸着能の差を調査し次の結果を得た。

  1. 置換性石灰とbitter pitとの間には最も密接な関係が認められ、特に石灰飽和度との関係が深く、発生がひどかった園の20~40cmの深さにおける飽和度の平均は7.4%で、発生が軽かった園とまったく発生が認められなかった園の飽和度の平均はそれぞれ22.2、31.0%であった。
  2. 塩基吸着強度、アンモニウムイオンとカルシウムイオンの選択吸収、酢酸による石灰の溶出などの塩基吸着の質的な面からの結果では、土壌によってそれぞれの特徴は認められたが、bitter pitと直接的な関係は見いだすことができなかった。
  3. 結果を総合して、窒素の施用量が10a当たり15kg前後で、本試験と類似した土壌では次の基準が一応の指針となりうるように考えられた。
     置換性石灰の飽和度が10%以下の場合・・・bitter pitが非常に発生しやすい。
     石灰飽和度が20%以上で、石灰が苦土とカリの合計量の2~3倍の場合・・・非常に発生しがたい。
     石灰飽和度が10%以上でも苦土とカリの合計量が石灰と同等かそれ以上の場合・・・塩基以外の他の条件いかんで発生の有無、多少がきまる。

秋田県果樹試験場研究報告(1970)第2号  87-94

リンゴ園の土壌肥沃度に関する研究(第3報)
苦土と石灰の欠乏限界の母材による相違

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄

 秋田県下の主要なリンゴ栽培地帯の土壌を調査し、前に報告した苦土欠乏とビター・ピットに関する診断基準の適用を試み、次の結果が得られた。

  1. 第三紀凝灰岩を母材とする平鹿統と、その混層からなる北野統では診断基準を適用できたが、腐植質火山灰の花輪統では高すぎた。
     腐植質火山灰の苦土欠乏の限界点は、かるい欠乏の場合は1.0me、ひどい欠乏は0.5me以下であった。しかし第三紀とその混層土壌ではかるい欠乏は2.5me以下、ひどい欠乏は1.0me以下であった。ビター・ピットを発生させる石灰飽和度は平鹿と北野統では約10%であったが、花輪統では約5%であった。
  2. 平鹿統に生育したリンゴ苗の葉と新梢皮部中の石灰含量は花輪統より非常に低く、窒素含量はわずかに高かった。
  3. 花輪統の吸着基はN-Ca(OAc)2とN-NH4OAcの等量混液からCa++ を選択的に吸着した。また、0.002N-HOAcや0.005N-NH4Clによって溶出される Ca++やMg++の割合も平鹿統より多かった。こららのことから、現地のリンゴ園でみられた石灰と苦土の欠乏限界の相違は塩基吸着能の差によるものと考えられた。