研究報告第01号概要

2015年01月07日 | コンテンツ番号 9104

秋田県果樹試験場研究報告(1969)第1号 1-20

りんごの苗木生育障害に関する研究
第1報.ゴールデン・デリシャスの苗木生育におよぼす台木、穂木、ウイルスの相互関係

今喜代治・神戸和猛登・久米靖穂

マルバカイドウ台に接ぎ木されたゴールデン・デリシャスの苗木、幼木の生育不良であることを、島、後沢氏によって報告されているが、現実には健全なものがかなりに存在し、すべてが生育不良でないことも観察であきらかである。よって、その原因につき1959~1966年にわたり研究をすすめ、次のような結果をえたので報告する。

  1. 生育障害の兆候としてはわい化の症状が顕著で、総生長量でみるに、1年目より2年目以降にあらわれ、2年目で、幹周で70%、新梢長約65%、分岐数57.1%~70.3%となり、この障害樹を7年間園地にて普通管理のもとで生育させたところ、樹冠容積で42.1%となり、わい化の様相が一層顕著となった。
  2. 障害樹の根の伸長は6月上旬~7月中旬の期間に著しく抑制され、草秋に葉色変化が明らかであった。
  3. 障害樹の台木の皮部にnecrosis、木部にpittingがみられる。pittingの発現はかなり後期である。
  4. 一般にマルバカイドウといわれているものに2つの系統があり、そのものの分類と記載を行ない、1つはMalus prunifolia var.ringo Asamiで別名「きみのいぬりんご」であり、いわゆる、マルバカイドウと称されるもので、われわれはこれを便宜上直立型としてきた。他の一つは従来から前記の直立型と混同されてきたものであるが、便宜上これを下垂型と称し、和名を「カスイマルバ」と命名、学名をMalus prunifolia var.ringo Kubotaとした。
    本種の顕著な特徴は樹姿が著しく下垂性で、葉は湾曲がはなはだしく、光沢に富み、根系は細根性、種子は肥満性、果実、がくは永存、果色真黄色、果大、果形、果梗の細い点はマルバカイドウによく似ている。挿し木繁殖力は直立型より大で苗木業者は本系を多く使用している。
  5. マルバカイドウの2つの型による生育障害差はなく、ミツバカイドウ、リンゴ、エゾノコリンゴ、コバノズミの各実生台の生育は良好であった。
  6. 高接ぎ病障害樹、苗木生育障害樹、長野産苗木生育障害より穂木を採取し、「カスイマルバ台」に接ぎ木、生育させたところ、いずれも生育障害を起こした。
  7. 生育障害を起こすものはウイルスの性質をもったもので、接ぎ木によって感染する。
    ゴールデン・デリシャスの穂木には障害を起こすものと、起こさないものとがあり、これはウイルスの保毒、無毒に基因している。
  8. ゴールデン・デリシャス苗木生産でマルバ系の台木を用いる場合はウイルスを保有しない無毒系を使用することによって解決される。
  9. ウイルスの検定指標植物としてはマルバの系統は好適であり、その判定は台木皮部のnecrosisの有無による。

秋田県果樹試験場研究報告(1969)第1号 21-46

りんごモニリヤ病に関する研究
第1報.菌核に対する低温処理がその後の菌核の発芽、子実体生育におよぼす影響

高橋俊作・加賀谷松和

りんごモニリア病(Sclerotinia mali Takahashi)の菌核からの子実体発生、生育などに及ぼす低温(2℃±1)の影響および温度と光線の相互関係、さらに実ぐされ被害果に対する時期別低温(2℃±1)処理によってもたらされる子実体の発生、生育の経過からの推定で菌核形成期を検討した。

  1. 完熟菌核に対する低温処理:2℃±1に全期間おいたもの、2℃±1に24日、40日、および65日間各々おいた後に10℃±2においたものは、連続高温(10℃±2)区に比較し菌核の初期の発芽は若干遅延し、発生量も少ないが、低温(2℃±1)処理終了後の高温(10℃±2)下で発芽率及び子実体数の急増、最多発生量を示すまでの日数短縮、子実体の発育促進、および子のう盤形成上に有効であった。連続高温(10℃±2)区の場合には子のう盤を形成するまでに子実体は発育せず、Ⅱ型子実体で停滞するか軟腐した。
  2. 以上の結果、低温(2℃±1)の効果の発現のためには低温(2℃±1)処理期間20日前後以上の経過が必要であること、低温(2℃±1)処理日数が少ない場合(10~13日)は10℃±2下での効果の発現が不十分であることを確認した。
  3. 温度(2℃±1と10℃±2)と光線の有無が菌核に及ぼす相互関係について試験した結果、菌核の発芽率とその増加の消長、子実体の発育、および子のう盤形成などに光線の有無は関係なかった。しかし暗処理区では子実体の菌茎の徒長的伸長を示し、菌茎の湾曲、ねじれを生じせしめたが子のう盤は形成され、子のう胞子も形成され、正常な病原力を示した。子のう盤の奇形化(サンゴ状化など)は1~2%程度であり、明処理区と差はなかった。
    以上の結果から、光線は子実体の正常な形状を保つための必要な要因ではあるが、S.mali菌はHawakerら(17)がいっている光線必須群に属する病原菌ではないと思われる。
  4. 実ぐされ被害果に対する時期別低温(2℃±1)処理の6月15日処理区(Ⅰ区)と7月15日処理区(Ⅱ区)では試験Ⅰで記述した低温(2℃±1)処理の効果はなかった。しかしながら8月15日処理区(Ⅲ区)と9月15日処理区(Ⅳ区)では明らかに効果があった。特に子実体の発育がⅠ及びⅡ区で大部分Ⅱ型子実体で停滞または軟腐し、Ⅰ区では低温(2℃±1)処理299日区(Ⅰ-7区)、Ⅱ区では低温(2℃±1)処理257日区(Ⅱ-7区)で子のう盤の若干の形成を認めたのみである。しかしながらⅢ区では低温(2℃±1)処理50日区(Ⅲ-5区)、Ⅳ区では低温(2℃±1)処理20日区(Ⅳ-2区)が完熟菌核でみられたと同じ傾向に経過した。
    以上の結果、菌核は被害果内に徐々に形成され、一応7月末~8月上旬(実ぐされ発現後約2ヶ月間)でほぼ完成されるもののように推定された。

秋田県果樹試験場研究報告(1969)第1号 47-70

りんごモニリヤ病に関する研究(花輪分場)

工藤哲男・堀内富美男・熊谷征文・佐藤重雄

1960年より1965年まで、菌核の発芽温度、発芽率の時期別変化、葉ぐされ、実ぐされの被害様相および被害発生におよぼす子実体の量的な問題などについて調査試験した。

  1. 1961年より1965年までの現地調査で次のことが観察された。
    菌核の発芽は降雪前かあるいは、積雪下で多く認められたが、融雪期後の発芽はきわめて少なかった。
  2. 菌核の発芽は13℃では不良であったが、3℃に移しかえると急激に発芽し始めた。また、最適発芽温度は7±1℃付近にあるものと推察された。
  3. 菌核の平均発芽日数は、その採取時期が遅いほど少なく、これら両者には強い逆相関が認められた。また、平均発芽日数は室内における乾燥と湿潤の交互操作である程度短縮できた。
  4. 葉ぐされおよび実ぐされの発生は集団園の中央部分、林にかこまれた園地、あるいは低湿地に多く認められ、特に低湿地の場合には葉ぐされの発生に比べて、実ぐされ被害の多くなる傾向がみられた。
  5. 葉ぐされの発生量を左右する最も大きい原因の1つとして防除薬剤の適期散布があげられる。

秋田県果樹試験場研究報告(1969)第1号 71-94

りんご園におけるクワコナカイガラムシの生態と防除に関する研究
第1報.クワコナカイガラムシふ化幼虫の移動について

成田弘・高橋佑治・佐藤修司

  1. 慣行防除法の越冬世代ふ化幼虫移動期に殺虫剤を散布する方法は、効果に浮動があり、実用性に疑問があったので、ふ化幼虫の移動の実態を1958~1964年に調査し、さらに、越冬卵の産卵場所の条件差によるふ化、移動期を1959~1966年に実験した。
  2. ふ化幼虫の移動消長は、枝幹部に欠損の多い老木樹と、欠損のない成木樹を用い、同一樹について5月から移動終了期まで10日ごとに6~7年間継続調査した。また、1959年に県南部の10地点について、移動消長の地域差を調査した。
  3. その結果、枝幹部に欠損の多い樹ではかなり複雑な移動型がみられる。欠損の少ない樹では単純な型が多いが、複雑な型も少なくない。しかも、年により、樹によりかなり変動が認められる。
    また、地域差もみられたが、これは供試樹の条件差が主因と考えられる。
  4. 越冬世代ふ化幼虫の移動は、移動量、移動期間とも特に不斉一であるが、弟1世代ふ化幼虫の移動は比較的期間がそろい、そのピークは移動開始から10日内に認められた。弟2世代ふ化幼虫の移動は、9・10月の気温の影響をうけ、移動量、移動期間とも差が多かった。
  5. 越冬産卵場所の条件差によるふ化、移動期間の実験は、人工条件と自然条件での2実験を行った。
  6. ふ化開始期は気温の高い場所の卵のうから始まり、気温の低い場所の卵のうほどおそくなった。
  7. ふ化開始日から移動開始日までの期間は、樹幹部、粗皮下、室内などでは0~1日、樹幹空洞部内では1~3日、根際地中では3~6日を要した。
  8. ふ化幼虫の移動は、ふ化と同じく気温の高い場所から始まり、次第に気温の低い場所におよび同一条件下の移動期間は比較的短期間にそろうが、条件差を通算した期間はかなり長期であった。
  9. ふ化幼虫の移動は、気温と降水量に影響されるようで、気温が低く、降雨の時は移動が抑制された。
  10. この越冬卵産卵位置の条件差によるふ化開始期と移動期間の試験結果は、越冬世代ふ化幼虫の移動消長が不斉一であることを裏付けるものと考える。
  11. 1958~1966年の9年間、110樹のふ化幼虫移動消長の調査結果から、移動型を5つの型に区分することができた。

秋田県果樹試験場研究報告(1969)第1号 95-102

リンゴ園の土壌肥沃度に関する研究(第1報)
土壌中の塩基と苦土欠乏の関係

山崎利彦・新妻胤次・田口辰雄

リンゴの苦土欠乏と土壌中の塩基含量との関係を秋田県の国光園で調査し、次の結果を得た。

  1. 塩基の溶脱が最も起こりやすい断面を有する醍醐統で最も欠乏がはげしかった。
  2. 土壌中のExch.Mgの絶対量は苦土欠乏と最も密接な関係が認められ、深さ20cm、40cm及び20~60cmの分析値と苦土欠乏程度との相関はそれぞれr=-0.61、r=-0.65、r=-0.64であった。深さ60cm以下の土壌にExch.Mgが高く根群がかなり多量にあっても上層部のExch.Mgが低いと欠乏がみられた。
  3. 調査土壌中で最も塩基含量が高かった釜の川統における苦土欠乏は、Kの過剰によるものと考えられた。
  4. 苦土欠乏とMg:K比との関係はExch.Kを用いるよりHNO3-Kを用いた方が明らかであり、密接であった。