写真:イセゴイ
図1 イセゴイ

和名:イセゴイ(カライワシ目イセゴイ科)
学名:Megalops cyprinoides (Broussonet)
地方名:―
大きさ:体長390mm,全長505mm,体重1,015g
採集日:2012年10月16日
採集地:男鹿市戸賀
採集法:底定置網(設置海域の水深42m)

2012年10月16日に、男鹿市戸賀で操業する底定置網の平川氏から見慣れない魚を提供頂きました。いかにも南方系で古代魚とも呼ばれる独特の姿、糸状に伸びる背鰭が特徴のイセゴイでした(図1)。

本種は暖海性の表層性魚類で、日本海での分布は新潟県佐渡島以南、太平洋側では東京湾以南から西部太平洋の暖海域に分布するとされていますが(中坊2000)、近年は青森県での採集例も報告されています。幼魚は汽水域や淡水域にも侵入することが知られています。

主に大西洋に分布しかなり大型になる同属のターポンMegalops atlanticusは、その釣り味の良さからゲームフィッシュとして高い人気を誇るようです。

一方、イセゴイとターポンに関する情報には必ずといって良いほど「身が柔らかい、大変不味い」と記してあります。毒もないのに、そのような不名誉な称号を与えられる魚はそうはいません。さて、ほんとうに不味いのでしょうか?

そこで、水産振興センター職員による調理と試食を行いました。3枚に下ろすと、前評判どおり、それ以上は包丁ではさばけない身の柔らかさでした(図2)。そこで、身を指先あるいはスプーンで削ぎ取り、つくね風に味付け・加熱したほか、ハラスの部分は塩焼きにしました(図3)。

さて、試食結果ですが、いずれの品も「不味い」との評価はなく、むしろ「かなり美味い」との意見が大勢を占めました!

前評判では「不味い」理由として、「肉に特有の金属臭がある」ことが挙げられていますが、今回試食した個体については、生も加熱後も、さらには冷めても金属臭は全くなく、つくねは淡泊な味と適度な固さもあって申し分ない一品でした。

さて、このように前評判を極端に覆す結果となった理由は、今回の試食だけでは不明です。魚の味が大きく異なる要因としては、季節変化、個体差、採集場所(餌条件・水質)などが考えられます。今後も機会があれば試食を行い、結果をお知らせいたします。

最後に、標本をご提供いただいた平川氏に心よりお礼申し上げます。

注意!

最近、秋田沿岸でも南方系の珍しい魚の採捕報告が増えています。中には食べると中毒を起こす可能性のある魚も見られますので、見慣れない魚をむやみに食べることは避けてください。また、魚の種類を調べる際に、インターネット情報を過信するのは危険ですのでご注意ください。

写真:イセゴイの身
図2 イセゴイの柔らかい身質
写真:今回試食したイセゴイ料理
図3 今回試食した3品