目的

一般に、比内地鶏はブロイラーよりも嗜好性が高い。我々は、同一飼養管理をした比内地鶏とブロイラーの肉質を比較し、グルタミン酸(Glu)を含む遊離アミノ酸やイノシン酸(IMP)含量は週齢の違いを反映していること、系統間ではアラキドン酸(AA)含量が比内地鶏で有意に高いことを報告した(JAPR 印刷中)。さらに22週齢の比内地鶏は、同週齢のブロイラーよりも有意に肉の味が濃厚で嗜好性が高いことを官能評価で確認し、比内地鶏の肉の味に影響する候補物質としてAAを提唱した。本研究では、比内地鶏に脂肪酸組成の異なる油脂を添加した飼料を給与し、得られた肉の成分分析と官能評価を実施することによって、飼料による味の制御の可能性を検討した。

方法

パーム油(P区)、コーン油(C区)、AA高含有油(AA区)をそれぞれケイ酸と7:3で混合し、これらを比内地鶏仕上げ用飼料に5%添加する3試験区を設定し、試験飼料を屠殺前2週間、100g/日/羽、給与した。22週齢で屠殺・解体し、もも肉の水分、粗脂肪および脂肪酸組成を分析した。官能評価には、各区のもも肉をひき肉にし、電子レンジで加熱した「蒸し肉」と、水を加え30分直火加熱し固形物を除いた「スープ」の2品目を用いた。官能評価は、分析型パネル16名による標準を用いた5段階評点法により実施した。また、スープのGluおよびIMP含量を測定した。

結果

水分、粗脂肪では、各区で有意差がなかった。脂肪酸組成では、AA区のAA含量は、P区、C区よりも有意に高かった。官能評価では、蒸し肉、スープともにAA区のうま味、コク味、後味などがC区、P区よりも有意に高いと評価された。C区もAA区よりは弱いが、P区に対して、うま味、コク味などが有意に高かった。各区のスープのGlu、IMP含量の差は、一般的なうま味強度の弁別域以下であった。以上の結果から、飼料の脂肪酸組成を調整することによって肉の味を制御できることが示唆された。