目的

比内鶏は1942年に天然記念物に指定された我が国を代表する地鶏である。秋田県畜産試験場(以下、試験場)では、1973年に秋田県声良鶏・比内鶏・金八鶏保存会(以下、保存会)から比内鶏の種卵を導入以来、外部からの異血導入を行わず、比内鶏集団の維持および改良を行ってきた。試験場と保存会では、選抜目的が異なるため、現在の試験場の比内鶏集団は保存会の比内鶏集団と比較して、成長が早く、体重も重くなっている。そこで本研究では、試験場の比内鶏集団における、成長形質のさらなる改良に資するべく、体重に関する量的形質遺伝子座位(QTL)解析を行った。

方法

保存会の雄3個体と試験場の雌15個体の交配から得たF1雄17個体・雌60個体を全兄弟交配し、F2世代359個体から成る資源家系を作出した。F2個体の、孵化日、4、10、14週齢時の体重を測定、記録した。P、F1、F2個体を対象に、全ゲノムをほぼカバーする122個のマイクロサテライトマーカーのタイピングを行った。これらのデータを基に、QTLexpressソフトウェア(Seatonら、2002)を用いて、インターバルマッピングによる主効果QTLの検出と、QTL間の相互効果(エピスタシス)の有無を検討した。Chromosome-wiseレベルでの有意差の指標には、F統計量を用い、5% (significant)および1% (highly significant)水準の閾値を1000回のpermutation testにより求めた。

結果

合計3個の主効果QTLを検出した。4週齢時体重では、significant QTLを第1染色体のABR0204-ABR0284 間(BWH1)に検出した。10および14週齢時体重では、significant QTLを第1染色体のABR0287近傍(BWH2)に、highly significant QTLを第4染色体のMCW0240-ABR0622間(BWH3)に検出した。相互効果のあるQTLは検出されなかった。本研究によって、比内鶏品種内の体重に関する、成長時期特異的な、体重のQTLの存在が初めて明らかになった。