目的

比内地鶏はブロイラーよりも官能検査結果が良好である。藤村ら(1994)は、8週齢のブロイラーと18週齢の比内地鶏を比較し、比内地鶏のイノシン酸(IMP)含量の高さ、およびグルタミン酸(Glu)とIMPのバランスから、それらと比内地鶏の旨味との関係を推論した。しかしながら、旨味成分であるGlu含量や遊離アミノ酸総量は、ブロイラーの方が高く、比内地鶏の旨味の起因物質が特定されたとは言い難い。この問題の解決には、環境要因を斉一にし、比内地鶏とブロイラーの肉質特性を比較することが重要である。そこで、本研究では同一飼養管理をした比内地鶏とブロイラーの肉質特性を比較した。

方法

8週齢ブロイラー(8W Bro)、22週齢ブロイラー(22W Bro)および22週齢比内地鶏(22W Hinai)の3試験区を設定した。比内地鶏およびブロイラーの雌を18羽ずつ、運動場が付随したパイプハウスで飼育した。2週齢まではブロイラー前期飼料を、それ以降は同後期飼料を給与した。8および22週齢で各区5羽ずつ無作為に鶏を選び、解体後、もも肉の肉質を分析した。分析項目は一般成分(水分、粗タンパク質、粗脂肪)、遊離アミノ酸、IMP、脂肪酸組成とした。

結果

水分は、8W Broが他区に比べて有意に高かった。粗タンパク質は、22W Hinaiが他区に比べて有意に高かった。粗脂肪は、22W Broが他区に比べて有意に高かった。遊離アミノ酸総量は、8W Broが他区に比べて有意に高かった。Glu含量は、22W Bro < 22W Hinai < 8W Broであり、各区間に有意差が認められた。IMP含量は、22W Bro および22W Hinaiが、8W Broに比べて有意に高く、22W Bro と22W Hinai間には有意差は認められなかった。脂肪酸組成では、22W Hinaiのアラキドン酸含量が8W Broおよび22W Broよりも有意に高かった。以上の結果から、既報で認められたブロイラーと比内地鶏のIMP含量の違いは、系統間差ではなく、週齢差を反映するものであったことが示唆された。また、比内地鶏の旨味に関与する可能性がある物質として、アラキドン酸が初めて見出された。