光る怪鳥(鹿角の伝説)

2009年12月15日 | コンテンツ番号 380

第1話 光る怪鳥

 鹿角市尾去沢(おさりざわ)の奥に大森山という大きな山があり、樹木がたくさん生えている。

 昔、文明13年(1481年)、この山から光る物体が現われ、村の上を飛び回り、村人を恐怖におののかせていた。村人が日中にその飛び回る光る物体をよく見ると、それは大きな鳥であり、その鳥は羽根を広げると左右の長さが20メートルほどもあった。その鳥は、人までも襲って食べてしまうほどの勢いがあり、口からは金色の火を吹き出し、まるで牛が吠えているような大きな鳴き声を山々に響かせていた。この化け物のような鳥は、特に晩になると飛び回って田畑を荒らしていた。

 村の人は恐ろしくて生きた心地がしなく、村で山伏をしている慈顕院(じけんいん)の神主といっしょに、この恐ろしい鳥を退治してくれるよう、毎晩、天に向かって一心に拝んでいた。

 あるとき、大森山の方から、あの化け物のような鳥の泣き苦しむような叫び声が聞こえ、翌日からは、あの鳥は飛んでこなくなった。

 村人は、不思議に思い、鳥の鳴き声の聞こえてきた方へと行ってみることにした。途中、赤沢川の水の色が、血を流したように真っ赤な色になっていることに気づいた。村人は、その赤い水が流れくる場所を探しに上流へと進んだ。しばらく進むと、沢水が流れこんで滝になっている黒滝の場所で、全身が赤く染まりうつ伏せになって死んでいるあの鳥を発見した。村人は皆で、この鳥を引っ張り起こして恐る恐る観察すると、広げた羽根の長さは24メートルもあり、大きな蛇のような頭と、牛の足にそっくりな足をつけていた。鳥の毛は赤い色と白い色が混ざり、ところどころに金の毛と銀の毛が生えていた。そして、その鳥には、背中と首の部分に数箇所の大きな傷がついていた。

 村人は、さらに、鳥の食べたものを観察するため腹を裂いてみると、胃袋の中には金、銀、銅、鉛の鉱石がいっぱい詰まっており、鳥が普通に食べる穀物や魚、虫、草木などは全く入っていなかった。

 村の村長は、不思議に思い、しばらくこのことについて考えると、あることを思い出した。「実は私は最近、夢の中で白髪の老人に新しい山を掘れと6回も告げられた。しかし、掘れと告げられた山がどこであるか全く見当がつかなかったが、今わかった。この鳥の胃袋から鉱石が出てきたということは、これこそ、この山を掘れという神様のお告げに違いない。」と言った。

 村人は、村長の言葉を信じ、この山のところどころを掘ってみることにした。すると、4色に輝く金・銀・銅・鉛の鉱石が大量に出てきた。こうしてこの場所で鉱山採掘が始まり、この鉱石が出る山一帯は、大森山からの分かれで峰つながりの子山なので、沢も含めて尾去沢と呼ぶようになった。

 村人は、なぜこの鳥が大きな傷を付けて死んでいたのか不思議に思った。「誰が鳥を退治してくれたのだろうか。」と思い、周辺の山や谷を歩き回ってみると、大森山のふもとの土の上に獅子の頭の形をした大きな石が発見された。そして、その頭の口の部分に血がいっぱいついていた。村人は、「鳥を退治してくれたのは、きっとこの獅子頭の神様石であろう。ここの土の上に獅子の頭が出ているということは、この大森山は獅子の体で、この山につながっている山々は、この獅子の手足であろう。」と言った。

 村人は、この石が発見された場所にお堂を建て、あの死んだ化け物のような鳥もここに埋めるとともに、このお堂を村の守り神様として、毎年お祭りをすることにした。そして、この神様を大森山獅子大権現(おおもりやまししだいこんげん)と言った。

 後に、化け物のような鳥を退治した獅子は、もともと勢至菩薩(せいしぼさつ:悪魔を退治する強い神仏)の化身であり、村人を苦しめた鳥は阿修羅(あしゅら:人を苦しめる悪魔神)の化身であったため、獅子と鳥は激しく戦ったのだと言われている。そして、この戦いは、獅子と鳥に化身した神様が、この山に金・銀・銅・鉛があることを教えるための戦いであったと伝えられている。

 現在、毎年9月15日の尾去沢の八幡神社のお祭りがおこなわれ、この伝説による神楽である大森山獅子大権現舞が奉納されている。