目的

比内地鶏は、鍋料理に利用されることが多く、脂肪が多いほど好まれる傾向にある。雄は肉が硬い、脂肪量が少ない、精巣の発達が風味を損なう等の理由で流通業者から敬遠され、素ひなを生産するふ化場では鑑別時にほとんどが淘汰されている。一方、肉用鶏では去勢することによって、腹腔内脂肪や肉中の粗脂肪含量が増加し、肉質が改善されることが報告されている。そこで本研究では、去勢が比内地鶏の発育や肉質に及ぼす影響について検討を行い、雄びなの有効活用が示唆されたので報告する。

方法

比内地鶏のひなを4週齢に15羽ずつ体重が等しくなるように雄区、去勢区に分け、運動場が付随したパイプハウスで30週齢まで飼育した。飼料は不断給餌とし、飲水は自由とした。去勢は8週齢に行った。10週齢以降4週間ごとに体重測定及び血液採取を行い、発育及び生化学成分について調査を行った。生化学成分の調査項目はテストステロン、ヘモグロビン、トリグリセリド、総コレステロールとし、各区6羽ずつ採取した。26,30週齢に各区5羽ずつ解体し、解体調査および肉質分析を行った。調査項目はと体成績、肉色、一般成分、脂肪酸組成、硬さとした。脂肪酸組成、硬さの分析にはもも肉を用いた。

結果

生体重は18週齢以降両区間に差は認められなかった。しかし、去勢区では26-30週齢において雄区より増体が劣り(P<0.01)、飼料要求率も大きく劣った。去勢区ではテストステロン、ヘモグロビン濃度が減少し、総コレステロール濃度が増加した。トリグリセリド濃度に差は認められなかった。去勢区のもも肉、心臓割合は低下(P<0.01)したが、砂肝割合が増加(P<0.01)した。腹腔内脂肪割合に有意な差は認められなかったが、26週齢では去勢区の腹腔内脂肪量は雄区の2倍であった。去勢区の肉色は雄区と比較してL値(P<0.05)とb値が高く、a値(P<0.05)が低かった。一般成分では去勢区は雄区より粗脂肪含量が高く、水分、粗蛋白含量が少なかった。脂肪酸組成は26週齢では差がなかったが、30週齢では去勢区の飽和脂肪酸の割合が少なく、不飽和脂肪酸の割合が高かった(P<0.05)。肉の硬さは去勢区が雄区より柔らかかった(P<0.05)。以上の結果から、26週齢までであれば雄と同等の発育が得られ、腹腔内脂肪量も多いことから、比内地鶏生産において、未利用だった雄のひなを去勢によって有効活用できることが示唆された。

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