七滝伝説(鹿角の伝説)

2009年12月17日 | コンテンツ番号 308

七滝伝説

  鹿角郡七滝(ななたき)村の藤原(現在の小坂町藤原地区)には、落差60メートルで各段とも5~6メートルほどの、七段にわたって落ちる“七滝”と呼ばれる滝がある。壮観をきわめるこの滝は、「日本の滝100選」の一つにも選ばれた滝であり、これにまつわる伝説である。

 その昔、七滝は村人から不思議な力があると恐れられ、物を投げ入れることは禁じられていた。この滝は、水量豊かで、流れる水はしぶきを放ち、まるで七つの段を渡る女神のまぼろしのようであり、滝は、朝に陽がさすときには赤く光り、夕方には山を映し、神秘な山鳴りを四方にどどろかせていた。

 そのころ、七滝村の高清水という部落に昆孫左衛門(こんまござえもん)という大地主がいた。彼は、自分の土地の広さをいつも自慢していた傲慢な人間であった。

 その孫左衛門は、あるとき、自分の土地の林から薪を切り出し、村々に自分の力を誇示するため村人から恐れられ、物を投げることが禁じられていた七滝に、70余棚の薪を上から一度に投げ入れた。1段・2段・3段、ごうごうと薪が落下するすざましさに、孫左衛門は、自分の権力の盛んなことを見るようで心地よい気持ちでほほ笑んでいた。

 やがて、4段目の鍋倉という滝つぼに落下すると同時に、天地を揺るがす大鳴動がおこり、苦痛のうめき声が怪しく水中から聞こえ、薪は二度と水面に浮かび上がらなかった。ただ、滝のすざましい音だけが山にこだまして、不気味な声が響き渡るだけであった。深さも判らぬ滝つぼは暗い雲に包まれ、見つめる孫左衛門の顔は真っ青になった。

 彼は、いまさらながら滝つぼの不思議さに震えあがった。70余棚の薪が1本も浮き上がらないことが信じられず、後悔の思いで頭がいっぱいになった。「なんということだ。」体の中の血が凍るような気がして、ふらふら家に帰ると、それっきり病にかかり床に寝込むようになってしまった。

 この滝は実は大蛇の化身であった。病気に伏している孫左衛門の夢まくらに15メートルばかりの巨大な大蛇が現れ、その体は傷だらけで生々しい血が流れていた。「我の体の傷を見るんだ。お前は罪深いことをした。我のたたりでお前を滅ぼしてやるぞ。」孫左衛門は、ただ伏してわびるだけであった。やがて、大蛇は煙となり消え、松林に雲がわきおこって見えなくなった。

 「どうしたらよいのだ。浅はかな事をしてしまった。私は罪深いことをしてしまった。」と、彼は一心に思い詰めたすえに、七滝に不動神社を建てることを思いついた。そのときには、今までの彼の思い上がりの心はすでに消えていたのであった。

 こうして、七滝の横に孫左衛門が建てた神社は、今も不動さまと言われ、信神深い人の参拝でにぎわっている。そして、大蛇の物語を伝えるように、鉄でつくった蛇のとぐろ様がある。