もしも、あなたの愛犬が人を咬んでしまったらどうしましょう。
傷が原因で被害者が何らかの感染症に感染してしまうかもしれません。

万が一、愛犬が人を咬んでしまった場合、飼い主としてきちんと対応すべきいくつかの事項がありますので、お知らせします。

 

1.被害者の治療

 まず、被害者の傷の治療を優先しましょう。
 犬の口内は、人間の口腔内と異なる細菌が住んで(常在して)います。犬が普段生活している環境から口内に取り込む場合や屋外の散歩中に口内に取り込む場合など様々ですが、犬にとっては健康に何ら危害を及ぼさなくても、人にとって何かしらの影響を及ぼす細菌がいるかもしれません。土壌などから破傷風菌が犬の口内に侵入してしまう可能性もあります。
 咬傷事故発生直後は、傷口を水道水など清浄な水で洗い流し、医療機関を受診するなど傷の治療を行いましょう。

※ 犬に咬まれた被害者は、狂犬病に感染するのではないかと心配します。飼い主は、日頃から愛犬の健康状態に注意を払い、狂犬病予防注射を毎年確実に受けさせ、万が一人を咬んだ場合であっても、被害者の不安が増幅しないようにしておくことも大切です。

 

2.咬傷事故の発生届

 犬の飼い主は、「秋田県動物の愛護及び管理に関する条例」(以下「条例」という。)に基づき、保健所に「飼い犬事故発生届出書」を提出します。

【秋田県動物の愛護及び管理に関する条例】(抜粋)

(事故発生時の措置)
第十四条 特定動物飼養者又は飼い犬の飼い主は、当該特定動物又は当該飼い犬が人の生命又は身体に害を加えたときは、直ちに、その日時及び場所、被害の状況その他規則で定める事項を知事に届け出なければならない

(罰則)
第二十一条 略
2 次の各号のいずれかに該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
  一 第十四条の規定による届出(特定動物に係るものを除く。)をしなかった者
  二~三 略

※ 万が一に備え、咬傷事故を起こした飼い犬は、狂犬病に罹患していないことを確認するため、一定期間獣医師による健康観察を実施します。

 

3.発生原因の究明

 愛犬が人を傷つけてしまったら、必ずその原因を考えましょう。
 被害者側にのみ咬傷事故の発生原因がある場合は、極稀です。
 「愛犬をつないで飼養していたが、ロープや首輪が外れてしまい逸走し、事故に至った。」「訪問者の通路に愛犬をつないで飼養していて、郵便や宅配便の配達員を咬んでしまった」など、咬傷事故に至る様々な原因があることを考えて、再発防止対策に役立てましょう。
 なお、人を咬んでしまった場合に限らず、飼い犬が路上に飛び出したことで通行人が転倒して手足を骨折してしまった場合などについても、発生原因の究明は大切なことです。(この場合は、飼い犬事故発生届は不要です。)

 

4.再発防止対策

 明らかになった咬傷事故の発生原因を分析し、同様の咬傷事故を再び発生させないための対策を考え実行しましょう。
 これまで発生した咬傷事故と再発防止対策を例示しておきます。

【 咬傷事故の発生原因と再発防止対策の例 】

  咬傷事故の発生原因 再発防止対策


走中



・ 係留していたが、長年使用していた首輪が劣化して切れ、逃げ出してしまった。

・日頃から係留しているロープや鎖、首輪の状態を確認して、緩んだり、切れたりして飼い犬が逸走しないように管理します。

・ 屋内で飼養していたが、玄関の隙間から逃げ出してしまった。

・玄関の扉をきちんと閉めるなど、日頃から玄関の出入りに注意を払います。また、玄関に風除室を設置するなど二重扉で飼い犬の逸走を防ぐ対策等を施します。

・ 慣れているので、リードを外して散歩していた。

・ 散歩中の他の犬との遭遇や大きな環境音の発生など突発事故に備え、常にリードを付けて散歩します。

・ 犬がたくさん運動できるようにリードを最大限伸ばして散歩していた。

・ 飼い主が常に犬を制御可能な状態となるよう、適切な長さのリードで散歩します。


・ 番犬として、訪問者の通路に係留していた。

・ 道路や訪問者通路に届く程、長いロープで係留していた。

・ 訪問者通路から離れた場所に係留場所を移動したり、係留ロープ等を訪問者通路に届かないよう適切な長さで犬を係留します。

・ 住居の出入り口や外部から見えやすい場所に犬を使用していることを示す下記の標識を確実に掲示して、訪問者に注意を促します。

【 秋田県動物の愛護及び管理に関する条例 】(抜粋)

(飼い犬の係留義務等)
第九条 飼い犬の飼い主は、当該飼い犬を常時係留しておかなければならない
 ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
 一 警察犬、狩猟犬、盲導犬その他の使役犬をその目的のために使用するとき。
 二 当該飼い犬を制御できる者が、人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれのない場所又は方法で当該飼い犬を
   訓練するとき。
 三 当該飼い犬を制御できる者が、当該飼い犬を、丈夫な綱又は鎖で確実に保持して、人の生命、身体又は財産に害を
   加えるおそれのないように、移動させ、又は運動させるとき。
 四 当該飼い犬を制御できる者が、人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれのない場所又は方法で、当該飼い犬を
   興行、展示、競技会その他規則で定める目的のために使用するとき。
 五 当該飼い犬が生後九十日以内であるとき。
2 飼い犬の飼い主は、当該飼い犬の飼養施設の所在する住居の出入り口その他の外部から見やすい箇所に、規則で定める
標識を掲示しなければならない

 

5.その他

 屋外で飼養していた愛犬が咬傷事故を起こす場合には、様々な原因がありますが、上記の「4.再発防止対策」に記載した直接的原因以外にも飼い犬に対する継続的なストレスが間接的原因となっていると考えられる場合もあります。
 給餌や散歩の時間が不規則であったり、運動もさせず繋いだまま飼養したり、糞尿を放置したまま劣悪な環境で飼育したり、狭いケージに入れたまま長期間飼養したりすることは、犬にとって大変なストレスであり、無駄吠えなどの問題行動にも発展しかねません。

 条例にも「飼い主の遵守事項」として記載されていますが、犬の飼い主は、飼い犬にストレスを与えないよう普段から犬の習性等に応じた適正飼養を心がけ、家族の一員として愛情を持って接することが大切です。

 

【秋田県動物の愛護及び管理に関する条例】(抜粋)

(動物の飼い主の遵守事項等)
第八条 動物の飼い主は、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
 一 動物の種類、発育状況等に応じて適正にえさ及び水を与えること。
 二 疾病を予防する等動物の健康及び安全を保持すること。
 三 動物の種類、習性等に応じて適正な飼養施設を設けること。
 四 動物の汚物及び汚水を適正に処理し、飼養施設及びその周囲を常に清潔に保つこと。
 五 動物の体臭、羽毛、異常な鳴き声等により他人に迷惑を掛けることのないようにすること。
 六 動物が道路、公園等の公共の場所又は他人の土地、建物等を汚し、又は損傷することのないようにすること。
2 動物の所有者は、動物が繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがある
 と認めるときは、その繁殖を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。