みたらせ清水と岩ガキ

秋田県由利郡象潟町小砂川地区(現在はにかほ市象潟町小砂川地区)

写真:鳥海山と小砂川地区

鳥海山を望む秋田県海岸部南端に位置する象潟町小砂川地区は、水の郷(さと)にふさわしい数多くの湧(ゆう)水個所があります。

旧由利郡象潟町

図:清水の位置図

写真:獅子ケ鼻湿原出つぼ
鳥海山の懐にある獅子ケ鼻湿原の湧水池”出つぼ”
写真:みたらせ清水の水洗い場              
      みたらせ清水

水道が整備される前、飲み水や炊事用の水をくむ場所として使われた水場は、ほぼ湧水個所ごとにあり、最も歴史を刻んでいる水場は、当地区のほぼ中間にある、通称”みたらせ”で、現在も野菜の洗いものなどで利用されています。

写真:清水場の出つぼ1

現に当地区の簡易水道は、清水場にある湧水、通称”出つぼ”と呼ばれている所が水源で、鳥海山の獅子ケ鼻湿原の湧水池”出つぼ”と、くしくも同じですが、どちらも尽きることなく湧き出る様子から付けられたと思われます。また、水源の近くにも湧水個所があり、清水場の名のゆえんも測り知ることができます。

写真:清水場の出つぼ2

隣には八幡神社があり、旧国道ができる前はここで参拝の際に手や口を清めたとのこと。 とすると、『御手洗(みたらし)』が語源ではなかろうか。”みたらせ”の水場は三つの槽に仕切られています。湧き出ている槽には水神様が祭られ飲み水用に、そこからオーバーフローした水がためられる二つ目の槽では野菜や食器の洗い場として、さらにひとつ下の三つ目の槽では鍬(くわ)などの農具を洗ったそうです。このように先人たちは、水を大切に、しかも合理的に使っていたわけです。

写真:清水場の出つぼ3

小砂川地区の沢部の奥まったところに地下水が湧いている泉があり、これを地元では”出つぼ”と呼んでいる。

写真:出つぼの上にある石の水神様

泉の上側に小さな石の水神様が見える。

写真:清水が流れる水路1

湧水が流れる水路脇は道路から一段低くなっており、地元のご婦人方が洗い物に利用できるようになっている。対岸は石積みで作られていて地元の鳥海山から昔、噴出した石を加工して作ったものだろうか。最近の公共事業でも景観を重視して自然石を使用した水路が見られるが、この頃は、ごく自然に地元産の資材を使っただけだろう。

写真:水路そばに咲く彼岸花

石積みのそばには彼岸花が朱色の可憐な花を付けていた。

写真:水温は年中12℃の清水が流れる水路

湧水の水温は年中12℃(上水道16℃)くらいだという。

写真:スイカを冷やしている水場

ここを訪れた8月中旬は暑い日の続く時期である。水路にはどこかの家のスイカが冷やされていて、早くテーブルに上がるのを待ち望んでいるようだ。

写真:ガツギの葉を乾かした馬の人形

小砂川集落ではガツギの葉を乾かした物で馬の人形を作り、旧盆の13日から15日に自宅の外に下げて置くそうである。馬の向きは、13日に先祖の霊を迎える時と、15日に送る時では首の向きを逆にするのだそうだ。

写真:岩ガキを育てる伏流水がわき出る小砂川の海岸

小砂川の海岸部には、陸に限らず海域にも伏流水が湧き、海水の塩分を和らげ、魚介類の生育を助長するたくさんのプランクトンを養います。これが鉄分とミネラルを大量に含む、甘味いっぱいの岩ガキに仕立てます。

写真:象潟のカキまつり

カキまつり・・・カキと言えば広島が有名だが旬は冬。ところが、象潟の天然岩ガキは夏の味覚の代表だ。カキだけでなく、夏の海の幸を楽しんでもらおうと始まったのが毎年7月の最終土曜日に象潟漁港の特設会場で開かれる「きさかた港海の幸まつり」。上の写真は、とれたての岩ガキを焼いているところ。

写真:夕日が沈む象潟の海岸

県南部漁協上浜支所管内の岩ガキの素潜り漁は、今年は象潟支所管内では7月2日から解禁でした。毎年この日を待ちきれない人がたくさん居ることでしょう。

引用・参考文献 象潟町広報(平成13年7月号)
記事作成年月 平成13年11月

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取材編集:由利地域振興局 農林部 農村整備課