八郎湖に係る湖沼水質保全計画(第1期)の対策の評価
コンテンツ番号:26071
更新日:
1 評価の概要
第1期計画では、生活排水、工場・事業場排水、農地からの濁水などの発生源に係る負荷の削減対策を中心に展開した。これにより、流域の下水道等の整備率は90%に達し、水田の落水管理の取組面積が9割を超えるなど、排出負荷の削減に一定の成果を上げることができた。また、閉鎖性が高く、汚濁が進んでいた西部承水路については、導水量を増加させて流動化を促進したことにより、一層の水質改善が図られた。
第1期計画期間における八郎湖の水質は、平成19年度以降、改善の傾向がみられていたが、平成24年度は夏場の猛暑・少雨により大量発生したアオコの影響を受けて悪化した。
アオコについては、水質悪化の要因となっているほか、風に吹き寄せられて流入河川に遡上・滞留し、腐敗して住民へ悪臭等の被害を与えていることから、緊急かつ継続的な対策の実施が求められている。
2 水質目標・実績
平成24年度目標値は、3つの水域のうち調整池と東部承水路を合わせて目標値を設定したが、実績は各々の水域で整理している。
また、平成24年度は、夏場の猛暑・小雨によるアオコの異常発生の影響で特異的に水質が悪化が見られた年度であったことから、計画期間における変動幅と平均値も併せて示している。
3項目・3水域の水質目標値に対して、平成24年度実績では、CODは調整池・西部承水路、全りんは西部承水路のみの達成となったが、計画期間内の平均値では、CODは3水域で、全窒素は調整池・西部承水路で、全りんは西部承水路で達成となった。
項 目 | 水 域 | 現 況 (第1期計画策定時) |
第1期計画(H19~H24)の状況 | ||||
H24年度 | 計画期間内における 変動幅(平均値) |
||||||
H16年度 | H17年度 | H18年度 | 目標 | 実績 | |||
COD (75%値) |
調整池 | 7.6 | 8.1 | 10 | 9.4 | 9.2 | 6.4~9.2(7.4) |
東部承水路 | 12 | 6.9~12(8.3) | |||||
西部承水路 | 13 | 12 | 12 | 9.5 | 9.2 | 8.8~10(9.5) | |
全窒素 | 調整池 | 0.91 | 0.98 | 0.71 | 0.93 | 1.4 | 0.70~1.4(0.9) |
東部承水路 | 1.5 | 0.68~1.5(1.0) | |||||
西部承水路 | 1.5 | 1.5 | 0.81 | 1.4 | 1.5 | 0.87~1.5(1.2) | |
全りん | 調整池 | 0.065 | 0.081 | 0.090 | 0.067 | 0.11 | 0.070~0.11(0.085) |
東部承水路 | 0.12 | 0.070~0.12(0.087) | |||||
西部承水路 | 0.087 | 0.091 | 0.064 | 0.077 | 0.069 | 0.056~0.084(0.067) |
※ CODは全層平均の75%値、全窒素及び全りんは表層の年平均値
※ 数値の単位は、mg/L
3 水質保全対策等の実施状況
※以下は、平成25年7月30日 第4回八郎湖水質保全対策検討専門委員会に示された「第1期計画における対策の評価」から抜粋です。
(1)点発生源対策
下水道の整備及び接続率については、普及率は第1期期間中に11.1%上昇し90.1%、接続率は6.0%上昇し75.2%となった。第1期における目標値までは、普及率で5.2%、接続率で6.4%達しなかったが、その理由としては、環境保全意識の不足や、高齢者世帯が多いこと及び経済的な負担が困難なことが挙げられる。
農業集落排水施設の高度処理化は、15施設での実施を予定していたが、うち9施設については下水道への接続がなされたことで、一層の負荷削減につながった。
合併処理浄化槽の整備、排水規制の強化は目標どおり実施された。
(2)面発生源対策
環境保全型農業の普及促進では、落水管理については、全体として90%以上の取り組みが見られ、目標を大きく上回った。一方、無代かき、不耕起といった農法転換については、設備の導入や雑草の発生、収量低下といった課題もあり普及が進まなかった。施肥の効率化については、概ね目標どおり取り組みが普及した。
流出水対策地区として、平成20年に大潟村全域を指定した。
(3)湖内浄化対策
西部承水路への導水量の増加、湖岸の植生機能の回復を目的とした消波工の整備はほぼ目標どおり実施した。
防潮水門の高度管理は、平成22年まで試験的に実施したが、3月の開閉では流動が少なく、期待していたほどの効果が得られなかった。
(4)その他の取組
水生生物調査・出前授業をはじめとする環境学習や啓発活動を実施したほか、住民活動の支援を実施した。
公共用水域の水質やアオコの発生状況の監視を実施したほか、八郎湖研究会等を開催し、調査研究の推進を図った。
※以下の表は、平成25年7月30日 第4回八郎湖水質保全対策検討専門委員会に示された「第1期計画における対策と水質の状況」より。(一部修正あり)
区分 | 対 策 | 目 標 H18→H24 |
H24年度までの 実施状況、成果 |
||
点発生 源対策 |
下水道等の整備と接続率の向上 | ・普及率 79.0% → 95.3% ・接続率 69.2% → 81.6% |
90.1% 75.2% |
||
農業集落排水施設等の高度処理化 | ・農集の高度処理化 0施設 → 15施設 | 15施設整備完了 (うち9施設下水道接続) |
|||
・合併浄化槽の高度処理化 0基 → 270基 | 269基実施 | ||||
工場・事業場の排水規制の強化 | ・条例等の制定 (COD、窒素、りんの上乗せ排水規制の強化、汚濁負荷量規制基準の制定、畜房等の構造基準等の制定) |
条例等制定 (H20) |
|||
面発生 源対策 |
環境保全型農業の普及促進と濁水流出防止 | ・落水管理 | 0 ha | → 14,010 ha | 19,320 ha |
・農法転換 | 363 ha | → 2,200 ha | 351 ha | ||
・施肥の効率化 | 13,583 ha | → 18,100 ha | 17,725 ha | ||
流出水対策地区の指定 | ・大潟村全域を指定 | H20年1月指定 | |||
・落水管理 | 0 ha | → 7,810 ha | 9,200 ha | ||
・農法転換 | 363 ha | → 2,000 ha | 349 ha | ||
・施肥の効率化 | 6,800 ha | → 8,400 ha | 9,857 ha | ||
流域の森林整備 | ・植栽、下刈り、間伐等 1,255 ha/年 → 1,545 ha/年 | 1,547 ha/年 | |||
湖内 浄化 対策 |
方上地区自然浄化施設の整備 | ・ヨシ等を利用した自然浄化施設 0 ha → 25 ha |
4 ha (試験施設) |
||
西部承水路の流動化促進 | ・西部承水路への導水量 6.3 m3/s → 12.6 m3/s |
12.6 m3/s | |||
防潮水門の高度管理による湖水の流動化の促進 | ・湖水の入替、湖内の流動化実施 | H18~H22年度 試験実施 |
|||
湖岸の自然浄化機能の回復 | ・植生回復のための消波工 2か所、 延長120 m → 延長2,600 m |
消波工 38か所、 延長2,282 m |
|||
外来魚等未利用魚の捕獲による窒素・りんの回収と魚粉リサイクル | ・未利用魚漁獲量 1.7 t/年 → 50 t/年 |
8.1 t/年 (平均12.7t/年) |
|||
その他 の対策 |
流域住民との協働の取組支援 | ・啓発活動・環境学習 (流域小学生の交流会、水生生物調査、出前授業) ・住民活動の支援 (湖岸の再生、外来魚の捕獲、田んぼの学校、自然観察会等) |
実施 | ||
公共用水域の水質監視・調査研究の推進 | ・水質環境基準調査、アオコ調査 ・汚濁メカニズムの研究、八郎湖研究会等 |
実施 |
4 まとめ
第2期計画では、発生源対策について、取り組み内容を見直しながら引き続き継続していく必要があるほか、湖内における浄化対策の実施や水質改善を目的とした調査・研究を一層推進していく必要がある。
また、夏期には継続的にアオコの発生が見られており、特に平成23、24年度には異常発生し、水質悪化のほか、悪臭等被害をもたらしたことから、アオコへの対策をより強化していく必要がある。