平成19年7月13日

産業経済政策課

概 況

県内経済は、一部に依然として厳しさが残り、電気機械においては携帯電話向け部品の生産額が減少したため、一服感が広がっているものの、全体としては引き続き回復の基調が続いている。 

  • 製造業 :概ね堅調な生産活動が続くも、原材料価格の高騰や製品単価の低下により利益が圧迫されている
  • 建設業 :受注額・完工高が前年同月比大幅増となるも、依然として厳しい状況が続いている
  • 小売業 :家電品が堅調に推移
  • サービス業 :ソフトウェアや保険が堅調に推移

全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は▲3.3から▲5.9となり、現在の資金繰りは▲4.6から▲12.6、3か月先の業況見通しは▲5.3から5.9となっている。

製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比1.4%減、同0.6%減。3か月先の業況見通しDIは0.0から11.9となっている。主力の電気機械は、全体としては堅調に推移しており、コンデンサを中心に高操業が続いている一方、携帯電話向け部品が大きく落ち込むなど、生産品目により業況が分かれる状態となっている。また、木材・木製品、一般機械、精密機械、輸送機械において生産額が前年同月を上回っており、好調な生産活動が続いている。総じて概ね堅調な生産活動が続くも、原材料価格の高騰や製品単価の低下により利益が圧迫されている。

建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比95.7%増、同421.9%増となった。3か月先の業況見通しDIは▲43.8から▲46.7となっている。今月は、受注額、完工高とも前年同月比大幅増となっているが、これは前年同月の数値が低かったことと大口契約によるものである。入札要件の厳格化や公共工事の減少により受注確保のための競争が益々激化するなかで、燃料費の高騰によるコスト増など、各社とも利益確保が困難となっている。

小売業では、売上高は前年同月比で5.6%増、3カ月先の業況見通しDIは▲10.3から3.3となった。家電品は堅調な推移を示している一方、衣料品、身回品では、土日の天候不順により低調であるほか、競合店との価格競争なども相まって厳しい状況が続いている。飲食料品では、一部の企業が好調で回復の兆しが見受けられるが、総じて厳しい状況となっている。

サービス業では、売上高は前年同月比8.9%減、3カ月先の業況見通しDIは8.3から21.7となった。旅館・ホテルにおいては、対象とする客層によって平日と休日の稼動数が大きく異なることや、婚礼組数の減少により厳しい状況となっている。一方、ソフトウェアや保険は堅調に推移している。

製造業の動向

  1. 食料品
    • 「多くの企業で苦戦が続く」
    • 生産額は前年同月比10.3%減、3か月先の業況見通しDIは▲38.5から▲21.4となった。
    • 首都圏や関西との取引がある一部の企業を除き、多くの企業では前年同月比で生産額の減少が続いており、依然として厳しい状況である。
    • 酒造では、県外需要は旺盛だが、県内需要が伸び悩む状況が続いている。また、昨年4月は酒税法改正による減税のため買い控えが起き、昨年5月にその反動で例年に比べ生産額が増加したことにより、今月は大きく生産額が落ち込んでいる。  
  2. 繊維・衣服
    • 「業界全体として厳しい状況が続く」
    • 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比14.2%減、同2.6%減。3か月先の業況見通しDIは▲28.6から28.6となった。
    • 引き続き夏物の生産が好調で売上を確保している企業があるなか、連休のため稼働日数が少なかったことや秋冬物への切り替えによる受注量の減少の影響を受けている企業もある。
    • 業界全体として生産額が低迷しており、依然として厳しい状況にあるが、追加注文を複数回受けたことにより、市況に動きが出てきたとの声もある。
  3. 木材・木製品
    • 「旺盛な首都圏需要に牽引され、好調な生産」
    • 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比18.1%増、同14.7%増となった。3か月先の業況見通しDIは18.2から0.0となった。
    • 引き続き首都圏を中心としたマンション建設の需要が高いことにより、合板や板材などで好調な生産活動が続いている。また、輸入材、国産材とも資材単価の値上がりは続いており、各社の対応により業況が分かれる状況となっている。
    • 今後も旺盛な県外需要を中心に、県内でも5月から8月は住宅建設が上向く時期に入ることから、好調な生産が続くものと思われるが、県内については、足元に弱めの動きが広がっており、不安視する企業も見受けられる。
  4. 鉄鋼・金属製品 
    • 「原材料価格の高騰により、利益を圧迫」
    • 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比1.6%減、同23.0%増。3か月先の業況見通しDIは9.1から8.3となった。
    • 依然として原材料価格が高騰を続けており、一部企業では全てを価格に転嫁できていないため、利益が圧迫されている。
    • 携帯電話関連の企業では、メーカーが在庫調整を終え動きが出始めている。また、産業機械関連の企業でも、他社の設備投資により安定した生産が続き、堅調に推移していくものと見込まれる。
  5. 一般機械
    • 「複数の企業で安定した生産活動」
    • 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比14.8%増、同13.6%増。3か月先の業況見通しDIは0.0から14.3となった。
    • 依然として原材料の品薄による価格高騰が続いており、経費が圧迫されている状況が続くが、この原材料の品薄により納期に遅れが出るため、それにより数ヶ月後までの受注を確保している企業もある。それ以外の企業についても、複数の企業で数ヶ月先まで受注を確保しており、安定した生産活動が続くため、今後も堅調に推移していくものと思われる。
  6. 電気機械
    • 「堅調に推移するも、生産品目により業況が分かれる」
    • 生産額、受注額は、それぞれ前年同月比7.4減、同7.9%減。3か月先の業況見通しDIは22.2から27.8となった。
    • 全体としては堅調に推移しており、主力のコンデンサを中心に、プリント配線板、光学部品などで高操業が続いているが、携帯電話向け部品が大きく落ち込んだことにより、全体の生産額は前年同月比で5ヶ月連続マイナスで推移し、生産品目により業況が分かれる結果となっている。総じて生産量自体は増加傾向にあり、今後も堅調な生産活動が続くものと思われる。
  7. 輸送機械
    • 「海外販売を中心に業界全体として成長が続いている」
    • 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比13.5%増、同16.5%増。3か月先の業況見通しDIは0.0から28.6となった。
    • 原材料価格の高騰により利益率が悪化しているが、北米や欧州を中心とした海外での販売が好調なことに加え、円安が進行していることにより、業界全体で成長が続いている。今後の動向についても、多くの企業で堅調に推移していくと見ている。
  8. 精密機械
    • 「医療機器関連や光学部品の生産が堅調に推移」
    • 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比8.6%増、同7.7%増。3か月先の業況見通しDIは0.0から28.6となっている。前半の連休により稼働日数が減少したが、医療機器関連においては堅調に推移している。また、光学部品については、デジタルカメラ関係で引き続き高操業を続けているが、取引先メーカーの海外での事業展開による影響を受けている企業もあり、取引先メーカーにより業況が分かれる状況となっている。
    • 原材料価格の高騰などの不安要素も見受けられるが、今後も堅調な生産活動が続くものと見込まれる。

建設業の動向

「業界全体として厳しい状況が続いている」

受注額、完工高はそれぞれ前年同月比95.7%増、同421.9%増。3か月先の業況見通しDIは▲43.8%から▲46.7となった。今月は、特定の企業において大規模な民間工事を受注したため、受注額は前年同月比で大きくプラスとなった。

公共工事の減少や入札要件の厳格化により、受注確保のための競争が益々激化するなか、燃料費の高騰によるコスト増など、各社とも利益確保が困難となっている。民間工事についても1件当たりの金額が減少傾向にあるなど、業界全体として厳しい状況が続いてる。なお、完工高が前年同月比421.9%増と大幅に増加しているが、これは前年同月の完工高が低かったことと大口契約の完成分による。

小売業の動向

  1. 衣料品
    • 「土日の天候不順で客足が伸び悩み」
    • 売上高は前年同月比11.7%減。3か月先の業況見通しDIは▲33.3から▲28.6となった。後半からの気温の上昇によって夏物に動きが見られたが、土日の天候不順の影響で客足が伸び悩み、全体としては売上が落ち込んだ。今後、夏物による春先の売上不振のカバーに期待を寄せているが、猛暑になると消費者の購買意欲がエアコンに向かうのではないかとの声もある。
  2. 身回品
    • 「客足の減少が続いている」
    • 売上高は前年同月比8.1%減。3か月先の業況見通しDIは▲42.9と変わらない。
    • 例年5月は大きな動きのない企業が多いが、土日の天候不順により、園芸用品や農作業用品などの季節商品が不振だったのに加え、連休中は天気の良い日が多く、客足が行楽地に向かったこともあり、売上が伸び悩んだ。
    • 来客数の減少が続いており、各社とも売上確保に苦心している。
  3. 飲食料品
    • 「依然として厳しい状況にあり、今後に期待」
    • 売上高は前年同月比7.9%増。3か月先の業況見通しDIは8.3から33.3となった。
    • 今月は一部の企業が好調だったため、全体的には売上高は前年同月比増となった。競合店から客足が戻ってきた企業や夏物商品が好調な企業があるなど、回復の兆しが見受けられるが、全体的には売上高で前年同月比減で推移する企業が多く、総じて厳しい状況にある。
    • 各社とも今後夏場に向けて売上が増えることに期待している。
  4. 家電品
    • 「携帯電話やゲーム関係中心に回復の兆しが見受けられる」
    • 売上高は前年同月比8.2%増。3か月先の業況見通しDIは25.0から50.0となった。
    • 携帯電話やゲーム関係が好調な一方、これまで好調だった薄型テレビを始めとするデジタル家電や冷蔵庫の売上が悪化している。総じて堅調に推移しており、引き続き回復の兆しが見受けられる。
    • 薄型テレビの販売に一服感があるため、各社ともエアコンの販売に期待している。

サービス業の動向

  1. 旅館・ホテル
    • 「各部門とも客数の減少が続き、厳しい状況」
    • 売上高は前年同月比24.4%減。3か月先の業況見通しDIは、0.0から15.4となった。
    • 宿泊部門では、前半の大型連休が平日を2日挟んだことによる宿泊の短期化、ビジネス客や観光客など、各企業が対象とする客層によって平日と休日の稼働率が大きく異なることにより、総じて不調であった。
    • 利幅の大きい婚礼部門は依然として低調であるほか、宴会等の小規模化により、厳しい状況におかれている企業が多い。
  2. その他サービス
    • 「ソフトウェア、保険が堅調に推移」
    • 売上高は前年同月比10.7%増。3か月先の業況見通しDIは20.0から30.0となった。
    • ソフトウェア関係では、首都圏を始めとした県外需要が好調なことに加え、納期が集中し、前年同月比大幅増となった。また、保険では、新たな法人契約の成立に加え、店舗での販売が好調であった。

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