平成18年7月7日 産業経済政策課

概況

県内経済は、依然として厳しい部分もあるものの、電気機械など主要製造業を中心に緩やかな持ち直しの動きが見られる。

  • 製造業:電気機械を中心に生産額の増加が続く
  • 建設業:工事量が減少し受注競争が激化
  • 小売業:デジタル家電以外は総じて低調に推移
  • サービス業:宿泊部門が概ね好調

 全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は▲4.5から▲5.1となった。現在の資金繰りは▲9.6で前月と同じ、3か月先の業況見通しは2.5から3.2となっている。

 製造業では、生産額、受注額とも前年同月比14.4%増。3か月先の業況見通しDIは9.1から13.8となっている。製造業全体では前年同月比の生産額が11カ月連続してプラスであり、主力の電気機械が生産額の増加を続けているほか、輸送機械以外の全ての部門で生産額が前年同月比でプラスとなるなど、県内製造業における生産額は着実に増加を続けており、持ち直している状況にある。

 建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比38.3%減、同73.7%減、3か月先の業況見通しDIは▲43.8から▲6.3となっている。公共工事の減少は依然として続いており、このため、激しい受注競争により利益幅が減少しているなど、業界全体として厳しい状況が続いている。

 小売業では、前年同月比の売上高で3.3%の減。3カ月先の業況見通しDIは、0.0から▲10.0となっている。家電品ではデジタル家電のみが動いており、衣料品、身回品、飲食料品では一部の企業を除いて、競合店の増加や燃料価格の高騰、低温など、様々な要因から客足は減少しており、総じて低調な推移となっている。

 サービス業では、売上高は前年同月比0.5%の増。3カ月先の業況見通しDIは13.6から3.2となった。旅館・ホテルでは、婚礼部門が低調であったが宿泊部門が概ね好調で、インターネット経由の宿泊が稼働率を引き上げたため、前年同月比2.5%の売り上げ増となっている。輸送関係では、旅客部門は低調であったが、貨物部門は概ね好調であった。

製造業の動向

1 食料品

 「首都圏向け清酒が好調」

 生産額は前年同月比1.6%の増。3か月先の業況見通しDIは▲14.3から▲7.1となった。

 酒造では、県内需要になお厳しさが残るものの、首都圏や関西・中京圏向けが好調で、各社とも生産額を増加させている。

 全体の生産額は、4ヶ月ぶりに前年同月比プラスとなったが、酒造以外は依然として厳しい状況が続いている。

2 繊維・衣服

 「利益率が上がりにくい状況」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比2.2%の増、同8.7%の減。3か月先の業況見通しDIは▲25.0から0.0となった。

 各社とも受注は確保できているが、依然として短納期、小ロットであることに加えて、手間の掛かる複雑な製品が多く、利益率がなかなか上がりにくい状況である。

 一方で、値上げに成功した企業も出始めているなど、一部に明るい兆しも見受けられる。

 今後は、夏物が終わり受注が減る時期を迎えるため、各社とも秋冬ものの受注に期待を寄せている。

3 木材・木製品

 「首都圏向けが引き続き好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比12.3%の増、同19.6%の増となった。3か月先の業況見通しDIは33.3から8.3となった。

 依然として北洋材などの原材料費が高騰している中で、価格競争はさらに激化し、値下げ競争で厳しい経営環境におかれている企業は多いが、利益確保のため製品単価を値上げした企業も出始めている。

 また、首都圏向けのフローリング材や厚物合板、関西方面からの受注が引き続き好調を維持しており、市場動向が上向いてきたとする企業も複数見受けられる。

4 鉄鋼・金属製品 

 「業態や製品によりバラツキ」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比15.7%の増、同6.1%の減。3か月先の業況見通しDIは8.3から16.7となった。

 受注が一段落している企業もある一方で、家電や携帯電話、自動車関連を取引先とする企業では好調を維持しているなど、業態や製品により業況にバラツキが見られる。

 金属価格の高止まりや、燃料価格の高騰により利益を圧迫されている企業も多いが、価格転嫁が可能となった企業も見受けられる。

5 一般機械

「県外需要が好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比19.0%の増、同4.2%の減。3か月先の業況見通しDIは、12.5から14.3となった。

 仕事が選べるほど好調な企業、新たな取引先を開拓し受注が増加している企業など、この先しばらく好調な生産が続く見込みの企業も多い。特に県外需要が好調で、自動車関連や航空機関連など、民需を中心に引き合いが途切れない状況が続いており、今後も堅調な推移が見込まれる。

 しかしながら、依然として原材料価格は高騰したままであり、今後更なる値上がりによる利益の圧迫が懸念される。

6 電気機械

 「生産額増加が続く」

 生産額、受注額は、それぞれ前年同月比21.1%の増、同22.3%の増。3か月先の業況見通しDIは23.8から28.6となった。

 生産額は、前年同月比で11カ月連続のプラスが続いている。

 一部で業績を落としている企業もあるものの、主力のコンデンサや液晶・光ファイバー関係など、自動車や携帯電話、テレビ向けの部品が力強い推移を続けており、フル稼働状態の企業も多い。また、大手メーカーからの受注が見込まれる企業や、増産に向けた設備増強を計画している企業もあるなど、今後生産額はさらに増加していくものと思われる。

 なお、燃料・原材料価格の高騰により利益が圧迫されている企業も多いが、高付加価値化や生産方式の見直しによるコストダウン等により利益率の改善に成功している企業も見受けられる。

7 輸送機械

「一時的に不調も底堅く推移」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.8%の減、同7.4%の減となり、3か月先の業況見通しDIは16.7から33.3となった。

 引き続き一部メーカーの不調の影響を受けて生産額が落ち込んでいる企業も複数あるが、付加価値が高い分野での利益を見込んでいる企業や今後生産量の増加を計画している企業もあり、全体的には底堅く推移していくものと思われる。

8 精密機械

「一部に伸び悩み」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.8%の増、同0.9%の減。3か月先の業況見通しDIは0.0から14.3となった。

 時計関連が堅調なほか、光学レンズや精密部品関係は好調を維持している。医療機器関連や計量器関連については、大きな落ち込みはないものの、伸び悩んでいる状況にある。

 各社とも、燃料費や原材料価格の高騰により利益が圧迫されており、厳しい状況が続いている。

建設業の動向

 「厳しい状況が続く」

受注額、完工高はそれぞれ前年同月比38.3%の減、同73.7%の減。3か月先の業況見通しDIは▲43.8から▲6.3となった。

受注額、完工高とも前年度比で大幅な減となっている。

各社とも、公共工事の減少に伴う激しい受注競争により利益幅が減少しており、また、受注した企業には受注直後から多くの下請け要請があるなど、業界全体として厳しい状況が続いている。このため、業種転換を検討しようとする企業も見受けられる。

なお、原油高騰の影響で、アスファルトなどの原材料価格が上昇し始めている。

小売業の動向

1 衣料品

「客数が減少傾向」

売上高は前年同月比7.2%の減。3か月先の業況見通しDIは▲12.5で前月と同じである。

好天が続いたため客足が順調に伸びた企業もある中で、大部分は客数減少により対前年比で売り上げを落としている。

今後梅雨の時期に入り、客足の減少も見込まれ、また、それ以降の見通しにも不透明感が漂っており、各企業のおかれている状況は依然として厳しい。

2 身回品

 「伸び悩みが続く」

 売上高は前年同月比6.0%の減。3か月先の業況見通しDIは▲28.6から▲14.3となった。

 ホームセンターでは、期待されていた連休中の売り上げも、客足が連休の後半に集中し園芸用品が品薄となるなど、効率的な売り上げに結びつかなかった。

 一部で新商品の売り上げが好調な企業もあったものの、売値が低く売り上げの増加にはなかなか結びつかない状況である。

 また、大型店や同業他社との競合などによる客の分散化に加え、燃料高騰による仕入れ価格の上昇など、依然として厳しい状況が続いている。

3 飲食料品

 「競合店が増加し客数減少」

 売上高は前年同月比2.2%の減。3か月先の業況見通しDIは▲8.3から▲9.1となっている。

 一部の企業では、客数、客単価共に前年を上回っているものの、多くの企業では競合店の増加による客数の減少や燃料価格の高騰による影響などにより、売り上げや利益が減少している。

 今後も競合店の増加により見通しが厳しいとしている企業もあるが、夏祭りやお中元の季節に向けて期待を寄せている企業も多い。

4 家電品

「エアコン、冷蔵庫が不調」

売上高は前年同月比10.6%の減。3か月先の業況見通しDIは100.0から0.0となっている。

デジタル家電については、薄型テレビを中心として引き続き動きが見られるものの、低温のためか主力のエアコンや冷蔵庫等の売れ行きが思わしくなく、客足も遠のくなど、各社とも厳しい状況におかれている。

サービス業の動向

1 旅館・ホテル

「インターネット経由の宿泊予約が好調」

売上高は前年同月比2.5%の増。3か月先の業況見通しDIは、23.1から▲21.4となった。

婚礼部門は、依然として婚礼組数が減少傾向にあるなど不振が続き、低調に推移している。

宴会部門では、一部に件数の増加が見られた。

宿泊部門では、連休中の観光客や修学旅行件数の増加が見られたほか、インターネット利用による宿泊客が稼働率を押し上げているなど、概ね好調であった。

好調な部門もある一方で、利益率の高い婚礼部門が不振であるなど、各社とも利益の確保が難しい状況が続いている。

2 その他サービス

「堅調に推移」

売上高は前年同月比1.9%の減。3か月先の業況見通しDIは0.0で前月と同じである。

コンピューター関係では、売り上げが減少したもののソフト関連で大口の受注があった企業や、引き続きフル稼働状態の企業もあるなど、今後も堅調に推移すると見られる。

運送部門では、旅客関係は対前年比売り上げが減少しているが、貨物関係は増加している企業も多い。なお、燃料価格の高騰による経費の増加により利益が圧迫されている企業も多い。

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