このたび提案いたしました議案の説明に先立ち、諸般の報告を申し上げます。
はじめに、小野喬(たかし)さんの文化功労者顕彰についてであります。
能代市出身で、体操競技における日本人初のオリンピック金メダリストである小野喬さんが、「平成28年度文化功労者顕彰」を受けられました。
 小野さんは、体操選手としてヘルシンキ、メルボルン、ローマ、東京と4度のオリンピックに出場され、金メダル5個を含む13個のメダルを獲得するなど、日本の男子体操黄金時代の礎を築かれるとともに、国内で初めて民間スポーツクラブを設立されたほか、日本スポーツクラブ協会の理事長等多くの要職を務められるなど、広く我が国のスポーツ振興に貢献された功績は高く評価されております。
 このたびの小野さんの顕彰を県民とともにお祝い申し上げますとともに、今後とも健康に留意され、益々ご活躍されることを願っております。 
 次に、世界情勢の変化について申し上げます。
 アメリカ合衆国の第45代大統領にドナルド・トランプ氏が選出されました。
 実業家としての豊富な経験と高い知名度を有しながらも、政治経験の全くないトランプ氏の大統領選出は、EUからの脱退を決めたイギリスの国民投票結果に続いて、世界に強い衝撃を与えております。国民の間に広がった既存の政治に対する不信感を背景にしたものと言われておりますが、大統領選挙を通じて、アメリカの国益最優先を掲げ、外交・通商政策や移民問題について過激な主張を繰り返してきたことから、今後順次示されるであろう具体的な政策の動向に注目が集まっております。
 また、TPP協定からの離脱を公約に掲げ保護主義の姿勢を鮮明にしていることや、安全保障面において、これまでのアメリカとは異なる見解を示していることから、我が国の経済外交政策に大きな影響を及ぼすことが懸念されます。
 ボーダレス化が進む今日の世界経済においては、一国のみが成長することはあり得ず、一定のルールのもと、自由貿易を基本に世界経済の成長を持続させていくことが重要です。
 国においては、一定の戦略の練り直しも必要になるものと思いますが、国益を最重要視した上で、グローバルな観点から、冷静、的確に対応していくことが求められていると考えます。
 このほか、温暖化対策の新しい国際的な枠組みである「パリ協定」の発効や、韓国内での政情不安、来月に予定されている日露首脳会談など、我が国の今後のあり様に影響を及ぼすような動きが続いております。
 こうした国際情勢の変化は、本県にも有形無形の影響が及ぶ可能性があることから、海外の状況とともに国の対応についてもアンテナを高くして情勢把握に努め、適切に対応してまいりたいと考えております。
 次に、大森山動物園における高病原性鳥インフルエンザの発生について申し上げます。
 先般、大森山動物園で死亡した2羽のコクチョウに対する鳥インフルエンザの簡易検査で陽性反応が確認されたため、県では、直ちに、総合相談窓口の開設や、養鶏農家等への情報提供と飼養管理対策の徹底を図るとともに、「野鳥監視重点区域」に指定された動物園の周辺10キロメートル圏内におけるパトロールを実施するなど、感染防止に必要な措置を迅速に講じてまいりました。
 その後、確定検査において高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されたことから、「危機管理連絡部」を立ち上げるなど庁内体制を強化し、感染防止対策の更なる徹底を図ったほか、国から派遣された「野鳥緊急調査チーム」による鳥類の生息や死亡の状況等の調査が行われたところであります。
 隣県においても発生が確認されており、今後も、国や秋田市等と連携を密にし、迅速な情報提供に努めるとともに、養鶏農家や動物取扱業者に対する飼養状況の確認や適正な管理指導を徹底するなど、県民の不安解消と感染の拡大防止に取り組んでまいります。
 次に、交通事故防止について申し上げます。
 県では、今年度からスタートしている第十次秋田県交通安全計画において、65歳以上の高齢者の交通事故防止対策を最重要課題に掲げ、市町村や関係機関などと連携しながら、様々な取組を実施してきておりますが、今年は11月28日現在で、昨年同期を大幅に上回る47名の方が亡くなられ、このうち30名の方が高齢者となっております。
 特に、先月来の交通事故の多発を受け、県民に注意喚起を図るための死亡事故多発注意報発令制度を設けたところであり、今後も、来月11日から始まる「年末の交通安全運動」を県民総ぐるみで展開するなど、安全対策を強化し、交通事故防止に全力で取り組んでまいります。
 県民の皆様には、交通安全に対する意識を高め、交通事故から自らを守るよう心掛けるとともに、本格的な冬を迎えるにあたり、自動車の運転には十分注意していただくようお願いいたします。
 次に、「山・鉾・屋台行事」の無形文化遺産登録について申し上げます。
 本県の代表的な祭りである「角館祭りのやま行事」、「土崎神明社祭(さい)の曳山行事」、「花輪祭(まつり)の屋台行事」を含む日本の「山・鉾・屋台行事」について、政府がユネスコの無形文化遺産への登録を提案しておりましたが、先般、事前審査をしたユネスコの補助機関から、登録が適当である旨の勧告がありました。これを受けて、現在、政府間委員会がエチオピアで開かれており、間もなく登録が正式決定される見通しとなっております。
 今回の遺産登録を機に、地元においては、これら行事の継承・発展に今後も尽力いただくとともに、県としても地域振興や観光振興につなげていくため、地元市町村や保存会など関係団体と連携し、地域の伝統を守りながら誘客拡大など地域活性化に向けた取組を進めてまいります。
 次に、フィジー訪問について申し上げます。
 今月8日から13日にかけて、県議会議長や秋田市長、秋田商工会議所会頭、県ラグビー協会会長などとともに、フィジーラグビー協会や政府関係機関等を訪問してまいりました。
 フィジーラグビー協会では、2019年ラグビーワールドカップ及び2020年東京オリンピックにおけるナショナルチームの秋田市での事前合宿を要請するとともに、今後の相互交流等について意見交換を行ってまいりました。
 また、青年スポーツ省を訪問し、本県及び秋田市とのスポーツ交流に係る基本協定を締結したほか、スポーツ国際交流員の本県への派遣について要請してまいりました。
 今後は、スポーツのみならず、教育・文化など多面的な交流を推進しながら、ラグビーナショナルチームの事前合宿誘致の実現に取り組んでまいります。
次に、県政を取り巻く情勢について申し上げます。
 県内経済は、電子部品・デバイスなど生産の一部に新興国経済の減速の影響が見られるものの、個人消費が全体としては堅調に推移し、企業倒産件数についても低水準を維持するなど、緩やかな回復を続けております。特に、雇用・所得環境については、有効求人倍率が今年5月以降1.20倍前後を維持するなど過去最高水準となっているほか、給与水準も前年を上回って推移しております。
 一方で、消費者物価指数が前年を下回る傾向が続き、デフレから完全に脱却したとは言い難い状況にあるほか、民間調査機関による調査では、昨年、首都圏へ本社機能を移転した企業数が、昭和56年以降で最高となるなど東京一極集中に歯止めがかからない状況が続いており、本県においてもAターン就職者数が伸び悩み、また、一部業種においては人手不足による業績悪化が懸念されるなど様々な不安定要素も認められます。
 また、先月発表された国勢調査結果において、日本の総人口が初めて減少に転じ、大きな転換期を迎える中で、本県においては高齢化率が初めて3割を超えるなど少子高齢化が進行し、経済規模の縮小や地域活力の低下が懸念されるなど、ますます将来を見通しにくい状況となっております。
 このような状況を打開するため、昨年策定した「あきた未来総合戦略」では、「産業振興による仕事づくり」、「移住・定住対策」、「少子化対策」、「新たな地域社会の形成」の4つの基本目標を掲げ、人口減少の抑制と地域の活性化を図るための攻めの取組を集中的に展開してきたところであります。
 「産業振興による仕事づくり」については、成長が見込まれる航空機や自動車、再生可能エネルギー、医療福祉、情報関連産業を重点分野として、中核となる企業の誘致や県内企業の参入に積極的に取り組んでまいりました。
 航空機、自動車分野では、大手メーカーに直結するサプライヤーの進出や県内企業の国際認証取得による受注拡大など、輸送機産業が新たな柱の一つに育ちつつあるほか、グローバル展開するICT関連企業や大規模情報サービス関連企業の立地により、特に女性の働く場の拡大が進んできております。
 新エネルギー関連産業においては、風力発電設備の大幅拡大に伴い、風車メンテナンス等の関連産業の集積や、世界有数の規模となる洋上風力発電の事業化に向けた取組、さらには、東北最大級の木質バイオマス発電事業の開始や大規模地熱発電所の建設など、我が国の経済を支える新エネルギー供給拠点の形成に向けた取組が順調に進んでおります。 
 農業分野については、「米依存からの脱却」に向け、園芸メガ団地や大規模肉用牛団地の整備など複合型生産構造への転換を進めてきており、重点的に取り組んできた「えだまめ」は東京都中央卸売市場への出荷量が2年連続で日本一となったほか、新ブランド「秋田牛」も徐々に市場に浸透し、昨年から海外への輸出も行われております。
 生産対策と併せて、実需者のニーズと生産現場をつなぐマッチング活動や、県産農産物の統一キャッチコピーによるPR、大手企業と連携した物流システムの構築など、海外を含めた新たな販路開拓も積極的に進めているところであり、こうした総合的な取組により農業の成長産業化が進展してきております。 
 観光を中心とした交流人口の拡大については、大手観光交通事業者と連携した観光キャンペーンや、ありのままの秋田の魅力を効果的に発信することによる秋田ファンの拡大、さらには全国まるごとうどんエキスポや大館きりたんぽ祭りなど地域が主体となった新たな大型イベントへの支援に加え、日本スポーツマスターズなど全国レベルのイベント誘致により、県内外からの誘客拡大を進めてまいりました。
 インバウンド対策については、経済成長の著しい東アジアを中心に、集中的なプロモーションを展開するとともに、チャーター便、クルーズ船の誘致や、地域と連携した外国人旅行者の受入態勢の整備を加速してきたことにより、外国人旅行者は着実に増加しております。国全体の訪日外国人が増加を続ける中、更なる誘客に向け、秋田犬や農家民宿等の本県ならではの魅力を最大限活かした旅行商品を造成するなど、より訴求力のある取組を展開しているところであります。
 「移住・定住対策」については、移住に関する相談窓口の充実・強化や、きめ細かな受入体制の整備、首都圏等に向けた総合的な移住情報の発信等により、平成27年度以降の移住者数が大幅に増えているほか、全国的にも注目されている移住起業者を育成する「ドチャベン事業」により、移住された方が地元農家と連携して事業化を図るなど、地域活性化に向けた好循環が生まれております。さらに、若者の一層の県内定着を図るため、今年度、対象者数としては全国最大規模となる奨学金返還助成制度を創設したところであります。
 「少子化対策」については、保育料や医療費助成の更なる拡大を図るとともに、多子世帯に対する新たな奨学金や住宅リフォーム助成の制度を創設したほか、あきた結婚支援センターにおけるマッチング事業を強化したところであり、こうした中、合計特殊出生率や第3子以降の出生割合が改善するなど明るい兆しも見えてきております。 
 「新たな地域社会の形成」については、地域コミュニティを支える仕組みづくりとして、地域住民の連携によるお互いさまスーパーの開設など、住民の自発的な取組を支援してきているほか、県市町村未来づくり協働プログラムが、多くの市町村で地方版総合戦略の中心事業として位置付けられ、まちの賑わいづくりや地場産業の振興等の取組が進められております。
 このほか、中長期的な視点から、人づくりや社会基盤の整備にも力を注いでおり、今年9月には、将来の秋田の発展につながる新たな取組として、奥羽・羽越両新幹線の整備促進に向けた官民一体の期成同盟会を立ち上げたところであります。
 このように総合戦略に掲げた施策を中心に、本県が抱える最大の課題である人口減少対策をスピード感を持って進めているところでありますが、成果が現れるまでに時間を要するものも多く、総合政策審議会での意見や県民意識調査の結果などからしても、十分な成果を実感していただくまでに至っていないことも事実であります。
 今後も戦略に沿った取組を着実に推進することにより、一つひとつ成果を積み重ねてまいりますが、その際、人口減少抑制の大きな鍵となる社会減の縮小に向けて、高校生の県内就職率の向上、ICTなど新しい分野での若者の雇用拡大、女性の活躍推進の取組には、なお一層力を入れていく必要があると考えております。
 特に、女性の活躍推進については、これまでの男女共同参画といった視点に加え、時間や距離などの制約が少なく柔軟な働き方が許容される情報関連産業や、高い感性を活かしたデザイン分野など、女性にとって魅力ある就業の場の拡大に、これまで以上に積極的に取り組んでまいります。
 次に、提出議案の主なものについてご説明申し上げます。
 今回の補正予算案は、国の補正予算に対応した事業のほか、公共事業の発注を前倒しするための債務負担行為等について計上しております。
 「第2期ふるさと秋田元気創造プラン」に基づく事業については、県・市連携文化施設の整備に向け、基本設計に着手し、当該施設付属の駐車場整備に係る移転補償調査等を実施するほか、障害者支援施設や児童養護施設の防犯対策強化に対し助成してまいります。
 また、市場ニーズに応じた農産物の生産・販売等を促進し、産地の収益性向上を図るため、加工施設の整備に対し助成してまいります。
 さらに、合板・製材の生産性向上と木材の安定供給を一体的に進めるため、高性能林業機械の導入等に対し助成するとともに、県産材のブランド向上を図るため、オリンピック・パラリンピック関連施設での活用に向け、森林認証を受けた県有林の素材生産を行うほか、平成31年度に開催する全国豊かな海づくり大会に向け、本県の地魚や漁村文化をPRする動画等を制作し、県民及び関係団体の機運醸成を図ってまいります。
 このほか、かねてから国に強く要望しておりました、いわゆる「雪国ゼロ国制度」が認められたことから、債務負担行為の設定により、年間工事量の平準化につながる公共事業の前倒し発注を積極的に推進してまいります。
 一般会計補正額は、29億1,863万円の増額であり、補正後の総額は、6,379億9,623万円となります。
 次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
 「秋田県公安委員会の委員の任命について」は、委員の任期満了に伴う一部委員の任命について、議会の同意をお願いしようとするものであります。
 「一般職の職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例案」は、人事委員会の勧告に鑑み、職員の期末手当及び勤勉手当の額の改定等を行おうとするものであります。
 以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。

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