湖沼水質保全計画に基づく西部承水路の流動化運用と成果(H21~H27)

2016年08月08日 | コンテンツ番号 11321

湖沼水質保全計画の位置づけ

 H20年3月策定の第1期湖沼水質保全計画では、それまでの非かんがい期の流動化による成果や課題を踏まえ、浜口機場からの導水量増量を計画した。
 浜口からの導水量を増やすことで、①非かんがい期の流動化水量の増加、②かんがい期に、調整池よりも水質が良好な東部承水路の水の注水割合の増加が可能となり、年間を通じた水質改善が図られるものと考えた。
 西部承水路の流動化促進は、西部の汚濁負荷を調整池に移す水域間でのトレードオフだとの指摘もあったが、他の2水域より明らかに悪い西部承水路の水質を改善することを第一とした。
 H26年3月策定の第2期湖沼水質保全計画では、第1期に引き続き流動化を推進する計画とした。

導水量増量方法

浜口からの導水量増量は、第1期計画期間のH20年度当時、農林水産省の浜口機場改修により撤去予定だった旧樋管を県が再利用する形でゲート設備等を整備することで倍増することが可能となった。

流動化の方法

H21からは、かんがい期(5月1日~9月10日)と非かんがい期(9月11日~11月30日)の両期間での流動化運用(以下「流動化2期」という)を開始した。
 かんがい期は、農業用水補給のために浜口・南部から毎年約1億m3注水されるが、各取水口で農業用水の不足が生じない範囲で、浜口からの導水を優先させるようにした。
非かんがい期は、これまでと同様に、南部排水機場での強制排水(1日あたり6時間、ポンプ能力10m3/s)による水位低下に応じて浜口から自動注水する方法とした。

流動化2期の成果

 かんがい期の注水量のうち浜口からの注水割合は、従前(H19~H20)は平均56%であったが、H21~H27は平均69%に増加させることができた。
 しかし、降水量や取水量によっては南部からの導水割合が多くなる年もあり一定の割合にはなっていない(図1)。
 非かんがい期の南部排水機場の西部排水量は、年平均1,700万m3であり、流動化1期(H15~H20)までの年平均1,600万m3と比較しても大きな差は無い。年度毎の違いは、かんがい用水の取水期間や天候などに起因すると考えられる。
 非かんがい期運用では、南部排水機場の強制排水による水位低下分が浜口から注水されるが、その水量は排水量に比べ平均で42%にとどまる。これは、降雨や地下からの湧水等が考えられる(図2)。

グラフ:かんがい期の注水量 グラフ:非かんがい期の注水量

 水質について、対策前、流動化1期、流動化2期と段階的な水質の変化を見ると、運用期間の拡大に応じて水質は改善されてきたと考えられるが、期間以外(12月~4月)は従前と同様であり、流動化の効果が他の時期に影響が及ばず、春にはまた元に戻るという繰り返しになっている(図3~5)。

グラフ:COD月別 グラフ:T-N変化

グラフ:T-P変化 

課題

 CODの経年動向では、流動化1期から流動化2期に移行したことで、西部承水路の年平均値をさらに押し下げ、かつて3水域の中で突出して悪かった西部承水路の水質は他の2水域に近づいてきたが、最近は横ばい状態になってきた。しかも、他の2水域に近づいたとはいえ、未だに西部承水路の水質が悪い状況は変わっていない(図6)。
グラフ:COD経年変化
 これは、流動化による水質改善の限界に来ていると考えられる。その要因として、例えば、西部承水路内には干拓堤防築立のために湖底を浚渫した痕跡が今も水路底に凹地(水深6m程度)として存在し、ヘドロが堆積していて、低層部の貧酸素化によって栄養塩の溶出元となっており、流動化が内部生産に影響していないことが考えられる。

今後の方針

 八郎湖では、湖に流入する小河川及び湖内で水深が3m程度の浅層域において、高濃度酸素水による水質浄化実証試験を実施しており、底層の貧酸素化の解消による栄養塩の溶出抑制や、有機質の分解促進を検証中である。
 西部承水路の水質をさらに改善するために、流動化と合わせて底層部の水質・底質改善を図ることとして、H28年度から西部承水路の中で水深が6m程度と比較的深い深層域において高濃度酸素水による水質浄化実証試験を開始することとしている。