自動車関連産業の育成に向けて

商工業振興課長 大田 泰介

 今日、日本で最も元気の良い製造業と言えば自動車産業、というのは衆目の一致するところと思いますが、中でもトヨタ自動車は、GMを抜いて世界一の自動車会社に躍り出る勢いで、復活する日本経済の象徴として目覚ましい活躍振りです。
 そのトヨタ自動車の車体組立子会社である関東自動車工業の岩手工場(岩手県金ヶ崎町)では、年間15万台の生産能力が25万台に増強されました。この増産による経済効果は最大で7,400億円に上る、との推計が東北経済産業局より発表されております。
 本県の輸送機械に係る製造品出荷額は平成15年度で400億円にとどまっていますが、今回の増産をきっかけに関東自動車工業やそのサプライヤーに部品を供給することができれば、出荷額の向上に繋がり、ひいては県内経済の活性化に貢献することが確実であり、県としても大きな期待を寄せているところです。  こうしたことから、去る11月8日、金ヶ崎町に東北自動車道・秋田自動車道で直結している横手市において、「自動車産業育成フォーラム」を東北経済産業局、横手市、(財)あきた企業活性化センターとともに開催いたしましたところ、県内の企業や関係機関から約100名という多数の皆様の御参加をいただきました。自動車産業に対する関心の大きさを実感いたしました。

平成17年11月8日、横手市において開催された自動車産業育成フォーラムの様子

 当日は予想外の荒れ模様の天候であったため、「自動車産業の未来展望 ~ものづくり革新と人づくり~」と題して御講演をいただく予定であった豊田自動織機顧問の磯谷智生氏が秋田空港に到着できず、残念ながら御欠席となってしまいました。自然だけには太刀打ちできないものです・・・。
 しかし、もう一人のゲストとして御出席いただいた岩手県自動車関連技術アドバイザーの鈴木高繁氏からは、「岩手県内企業の自動車産業への挑戦」と題する大変含蓄に富む御講演をいただいたほか、企業の有志の方々との意見交換会においても適切な御助言、御指導をいただき、私も大きな感銘を受けました。

岩手県自動車関連技術アドバイザーの鈴木高繁氏

 鈴木氏のお話からは、自動車関連産業における厳しさがひしひしと感じられました。その厳しさとは、例えば製品について必要な品質等が要求されたときには、それに応える生産能力があることは勿論、能力があることを保証でき、保証できる仕組みがあり、その仕組みを動かすことができる人材がいなければならないという徹底した取組の必要性です。  また、待っていて自動車会社やサプライヤーから新規の発注が来ることはなく、自分から他社に比べて高品質、低コストの製品を提案していかなければ参入機会を与えられない完全競争の世界であること。これは、どんな企業にも参入の門戸が開かれているのと同時に、たとえ参入に成功しても、常に潜在的な競争相手との闘いを続けなければならないことを意味しています。  安全でかつ価格競争力のある自動車を製造するために何が必要なのかを突き詰めて考えれば、当然に求められる厳しさではあるのでしょうが、その「当然」を実現し、持続することが如何に難しいか。日本の自動車産業の世界一の競争力は、こういった現場でのすさまじい努力に支えられていることを改めて痛感させられました。  これまで自動車関連の製品を製造していない企業にとって、このような厳しい要件を満たす力を身につけることは決して容易ではないことと思います。しかし、そのハードルを乗り越えたときに得られるものは、自動車産業の今後の発展可能性を考えれば非常に大きいと確信しています。
 また、自動車産業への参入に取り組むことは、直接自動車関連の売上に結びつくだけでなく、身につけた高い競争力や、そのための努力が企業を大きく成長させる筈です。現に、県内で自動車部品の製造に取り組んでいる企業の社長さんは、「この取組により社内に求心力が生まれた」と話しておられました。ハードルが高い分、闘志も湧いてくるし、達成感も大きいのではないでしょうか。この社長さんの活き活きとした表情は、挑戦し続けることの素晴らしさを物語っていました。  県内企業の皆様には、この厳しいけれども将来に大きな夢の持てる挑戦に是非取り組んでいただきたいと思います。そして、県外の自動車産業の皆様には、このような本県の取組を是非一度御覧になっていただきたくお願い申し上げます。

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