産業経済政策課 平成17年7月7日

概況

 県内経済は、総じて横ばいの中で推移しているが、一部業種で明るい兆しが見受けられる。

  • 製造業:主力の電気機械においてコンデンサー類等の在庫調整の影響が残るものの、輸送機械、鉄鋼・金属製品などで好調に推移している。
  • 建設業:年度初めの公共事業や民間受注により受注額・完工<高が増加した。
  • 小売業:家電分野を中心として、全分野が前年同月比でプラ
    スに転じる。
  • サービス業:好調さに鈍りが見受けられる。

全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は0.9から▲4.3、現在の資金繰りは▲7.3から▲8.9と悪化しているものの、3か月先の業況見通しは▲5.6から5.2と改善する傾向を示している。

製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.3%減、同5.9%減。3か月先の業況見通しDIは▲2.1から12.2となった。製造業全体では生産額は4ヶ月連続の減少となっており、主力の電気機械においては引き続き在庫調整が残っている。在庫が増加傾向となっている木材・木製品では、市場価格の下落が止まらず、先月に引き続き生産調整を行っているほか、食料品でも厳しい状況が続いている。

一方、鉄鋼・金属製品や一般機械では、原材料の高止まりの懸念材料が残るものの、自動車関連を中心として好調に推移している。また、輸送機械では、先月部品単価の引き下げや受注の端境期により一時的に前年同月比でマイナスとなっていたが、今月から予定通りプラスに転じている。

建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比15.6%増、同18.3%増。3か月先の業況見通しDIは▲17.2から3.4と改善している。これは、年度初めの公共事業や民間工事を受注し、単月の受注額では前年を上回った結果であるが、近年の公共事業の減少など、先行きに不透明感が見受けられる。

小売業では、売上高は0.3%の増で2ヶ月連続して前年同月比を上回った。また、3か月先の業況見通しDIは▲5.6から▲7.5と若干悪化傾向を示しているが衣料品・身回品・飲食料品・家電品のすべての分野で売上高が前年同月比でプラスとなっており、今後の動向が期待される。

サービス業では、売上高は前年同月比5.0%減。3か月先の業況見通しDIは▲11.5から▲3.6となった。旅館・ホテルでは、婚礼部門や宴会部門が落ち込み、再び前年同月比でマイナスに転じている。

また、個人輸送や運送部門では今までの好調な動きが幾分鈍くなっている。

製造業の動向

1 食料品「酒造が低迷」

生産額は前年同月比6.2%の減。3か月先の業況見通しDIは▲25.0から0.0となった。

酒造では、焼酎ブームなどによる日本酒離れの傾向が続き生産量の減となっており、依然として先行きが不透明である。

また、一部食品の企業では、お中元等の進物商戦を控え、ダイレクトメール等により新規顧客の掘り起こしを始めているが、食料品全体の回復は、まだ時間が掛かると見られる。

ゴールデンウィーク後半の好天の影響から、土産用品が堅調に推移した。

2 繊維・衣服「夏物の生産がピーク迎える」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比2.9%の増、同3.3%の減。3か月先の業況見通しDIは▲37.5から▲6.7となっている。

各企業では、夏物の生産がピークに達し、一部では秋物の製造も始まっている。一般に夏物衣料品は単価が低い傾向があり、特定の品目に特化した生産体系にシフトし業績を伸ばしている企業がある一方、「多品種・小ロット・短納期」や複雑な工程に対応出来ないことから、結果として業績を伸ばすことが出来ない企業も見受けられる。今後は、秋物衣類の生産が本格稼働するが、一定量のロット数の確保など業績が大きく左右することとなる。

3 木材・木製品「生産調整が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比14.8%の減、同15.1%の減となり、3ヶ月連続で生産額・受注額の減額となった。3か月先の業況見通しDIは5.9から11.8となっている。

 合板関係では、全体的に動きが鈍く、原材料が高止まりしているほか、未だ市場価格の下落が続いていることから、先行きが懸念される。

4 鉄鋼・金属製品 「鋼材に高止まりが見られる」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比4.2%の増、同13.3%の増。3か月先の業況見通しDIは0.0から▲12.5となった。

公共事業関連を除く鉄鋼、建具、金属各社においても、新たな受注先を開拓するなど活発な動きが見受けれらる。

今後は、鋼材をはじめとする金属価格、燃料価格が依然として高止まりしていることから懸念材料となるものの、しばらくは堅調に推移すると思われる。

5 一般機「安定感が見受けられる」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比12.6%の増、同16.5%の増。3か月先の業況見通しDIは0.0から27.3となった。

 産業用機械を製造する企業を中心として好調に推移しており、安定感が見受けられる。今後は原材料となる鋼材価格の動向が注目されている。

6 電気機械「依然として在庫調整が続く」

 生産額、受注額は、それぞれ前年同月比4.6%の減、同7.6%の減。3か月先の業況見通しDIは10.3から31.0となった。

 主力のコンデンサー類は、依然として在庫調整が続いており、単価引き下げによる影響も加わり生産額及び受注額ベースで8ヶ月連続して前年同月を下回っている。

 輸出用液晶や自動車関連の電気機械製品を製造している企業では、堅調に推移しているものの、全体としては国内外の需要が伸び悩んでいることから生産額が落ち込んでおり、本格的な回復は夏以降になると予測される。

7 輸送機械「生産額、受注額がプラスに転じる」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.0%の増、同2.9%の増。3か月先の業況見通しDIは14.3から変化していない。

 先月は部品単価の引き下げや受注の端境期等の理由から一時的に前年同月比でマイナスとなったが、モデルチェンジ等に伴う相当程度の需要を抱えている企業があるなど、今後は堅調に推移することが予想される。今後の懸念材料としては、原材料の値上がりや製造部品の車種の売上げ動向が挙げられる。

8 精密機械「医療機器関連が堅調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.2%の増、同12.0%の減。3か月先の業況見通しDIは12.5から20.8となった。

 医療機器関連は依然として堅調に推移しているものの、新年度の薬価引き下げの影響が出始めており徐々に利益が圧迫されている。

 計量器関係や光学レンズなどは、依然動きの鈍い状態が続いており、今後は石油製品の更なる値上がりや納品単価引き下げ要求により、ますます厳しくなる傾向となっている。

建設業の動向

「受注高、完工高がプラスに転じる」

受注額、完工高はそれぞれ前年同月比15.6%の増、同18.3%の増。3か月先の業況見通しDIは▲17.2から3.4となった。

公共事業の減少により厳しい状況が続いているが、今月は偶然にも前年度の工事完工契約金の入金や新年度の公共・民間事業を受注した企業が多かったことから、受注額・完工額が増となっている。

今後も公共事業の減少の傾向は変わらないことから、この推移を見守る必要がある。

小売業の動向

1 衣料品「春夏物に動き」

売上高は前年同月比0.1%の増。3か月先の業況見通しDIは▲21.4と変わらない。

依然として厳しい状況に変わりはないが、季節的な要因やセールを行った企業があることなどから、春夏物に徐々に動きが見受けられるようになっている。売上の傾向として価格の二極化が進んでおり、今後とも厳しい状況が続くと見られるが、夏物衣料品は単価が下がることから、それまでの間に期待感が見受けられる。

2 身回品「園芸・農作業用品に客足戻る」

売上高は前年同月比0.3%の増。3か月先の業況見通しDIは0.0から▲15.4となった。

家具製品や時計などに高額品の動きが見られたものの、全体的には幅広感が見られず厳しい状況が続いている。

ホームセンターでは、園芸・農作業用品・資材などへ客足が戻ってきており、幾分動きがあるものの競合店の影響もあり、先行きに対する不透明な状況が続いている。

3 飲食料品「酒造販売が低調」

 売上高は前年同月比0.2%の増。3か月先の業況見通しDIは▲5.6から▲5.9となった。

全体的には底堅い動きをしており、スーパーの動きが特に堅調である。一方、酒類販売では、ホテル・飲食店関係の低迷が続いており、売上に影響を及ぼしている。

4 家電品「エアコンに伸び」

売上高は前年同月比4.6%の増。3か月先の業況見通しDIは11.1から22.2となった。

依然として液晶テレビやプラズマテレビを始めとするデジタル家電の動きが堅調である。また、今月は、特にエアコンの売上が伸び始めるなど、夏に向けて全体的な底上げが期待される。

サービス業の動向

1 旅館・ホテル「宴会部門が落ち込む」

売上高は前年同月比9.3%の減。3か月先の業況見通しDIは、0.0で変わりない。

ホテルでは、例年ゴールデンウィークの稼働率が落ちる傾向があるが、今年は営業の多角化の違いが企業間の業績に鮮明に出ると共に、婚礼等の宴会部門での落ち込みが傾向として現れている。

今後は、6月の婚礼シーズンや夏場のビアガーデンの予約等に期待を寄せている。

2 その他サービス「好調さが鈍る」

売上高は前年同月比0.3%の増。3か月先の業況見通しDIは▲25.0から▲7.7となった。

個人輸送や運送部門では、例年は首都圏からの観光客が新緑ツアーで来県する時期であるが、今年は愛知万博等の理由からか若干様相が異なっており、燃料の高止まりも相まって、好調さに鈍りが出始めている。

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