産業経済政策課 平成17年9月1日

概況

県内経済は、総じて横ばいの中で推移しているが、一部業種で明るい兆しが見受けられる。

  • 製造業:主力の電気機械が10ヵ月振りに前年同月比でプラ
    スに転じる。
  • 建設業:一時的な増であるが、厳しい経営環境が続く。
  • 小売業:堅調に推移しているが、家電分野の動向には注意が
    必要である。
  • サービス業:燃料価格の高騰が響く

全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は▲7.8から▲3.0、現在の資金繰りは▲11.4から▲12.1、3か月先の業況見通しは▲1.2から1.2となっている。

製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比1.0%増、同2.5%減。3か月先の業況見通しDIは11.6から14.3となった。製造業全体では前年同月比の生産額が6ヶ月振りにプラスに転じているが、これは主力の電気機械において、昨年から続いた生産調整が終了し、増産体制に転じていることが大きい。また、一般機械では、原材料の高止まりの懸念材料が残るものの好調に推移しているほか、輸送機械では受注の端境期により一時的に前年同月比でマイナスとなっているものの、全体としては好調さを維持している。

一方、在庫が増加傾向となっている木材・木製品では、未だ市場価格の下落が止まらず、先月に引き続き生産調整を行っているほか、食料品でも厳しい状況が続いている。

建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比17.9%増、同5.4%増。3か月先の業況見通しDIは▲6.7から▲13.3と悪化している。受注状況は各企業によって大きくバラツキがあり、一部企業に大口民需があったことなどからプラスに転じているが、全体としては厳しい経営環境が続いている。

小売業では、前年同月比の売上高で0.9%の増となっているが、家電分野が大きな落ち込みを見せており、3か月先の業況見通しDIは▲20.8から▲18.9となっている。

サービス業では、売上高は前年同月比11.7%減。3か月先の業況見通しDIは▲22.2から▲10.7となった。旅館・ホテルでは、夏の行楽シーズンを迎えているが、低調な推移をしている。

個人輸送や運送部門では、愛知万博による観光客減の影響や燃料の高止まり等により、厳しい状況が続いている。

製造業の動向

1 食料品「進物の売れ行きが伸び悩む」

生産額は前年同月比2.4%の減。3か月先の業況見通しDIは▲5.0から▲10.0となった。

一部企業では、大手ファーストフード店との大口契約や新企画商品発売により業績を伸ばしたものの、全体的には伸び悩んでいる。

また、お中元等の進物商戦が本格的に始まっているが、生産量の増には結びついていない。

特に、酒造では、近年の日本酒離れの傾向が続いていることや需要が一番落ち込む夏場に向かうことなどの複合的要因から、生産量の減少が続いている。

2 繊維・衣服「暑さにより秋物の生産ピークがずれる」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.1%の減、同6.0%の減。3か月先の業況見通しDIは7.1から0.0となっている。

例年、秋物生産の追加受注が始まる時期であるが、今年は夏の暑さが続いていることから、メーカの生産ピークが例年よりも少し遅れている模様である。

今後の懸念材料としては、原油価格高騰により、化学繊維の値上げ等による影響が考えられる。

3 木材・木製品「市場価格が下げ止まらず生産調整が続く」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比10.7%の減、同12.7%の減となり、5ヶ月連続で生産額・受注額の減額となった。3か月先の業況見通しDIは23.5から11.8となっている。

合板関係では、原材料価格が高止まりしているほか、市場価格の下落が止まらないことから、今後も生産調整が続くと見られる。

県内の新規住宅着工は、ようやく動きが見え始めたものの、動きは鈍く、各企業では秋の需要に期待を寄せている。

4 鉄鋼・金属製品「鋼材に高止まりが見られる」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比11.3%の減、同4.4%の減。3か月先の業況見通しDIはから12.5から17.6となった。

鋼材や希少金属をはじめとする金属価格が高止まりしているほか、燃料価格が依然として高騰していることから、徐々に利益を圧迫している。

受注月にバラツキが見受けられることから、急速な悪化とは考えていないが、今後の推移に注意する必要がある。

5 一般機械「安定感が見受けられる」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.0%の増、同5.2%の減。3か月先の業況見通しDIは0.0から27.3となった。

産業用機械を中心として好調に推移しており、安定感が見受けられる。一部では、フル稼働の状態に対応するため、従業員の新規雇用や工場増設等の設備投資が予定されている。

鋼材に品薄感が見られるが、これ以外の懸念材料が見受けられないことから、しばらくはこのままの基調が続くと見られる。

6 電気機械「10ヶ月振りに前年同月比でプラスに転じる」

生産額、受注額は、それぞれ前年同月比4.4%の増、同0.1%の減。3か月先の業況見通しDIは24.1から34.5となった。

主力のコンデンサー類は、市場価格の低迷や需要の冷え込みの影響から、在庫調整が続いていたが、今月に入って10ヶ月振りに前年同月を上回っているほか、増産に伴う新規雇用等を見込んでおり、昨年後半から続いた生産調整は終了したと言える。

通信機器関連の企業では、携帯電話関連の液晶や部品で生産の伸びが著しく、今後の推移に注目する必要がある。

7 輸送機械「生産の端境期による一時的なマイナス」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.3%の減、同0.4%の増。3か月先の業況見通しDIは28.6から14.3となっている。

生産額がマイナスとなっているものの、一部企業で受注の端境期により一時的に前年同月比でマイナスとなっていることが影響しており、全体としては堅調に推移していると言える。

今後の懸念材料としては、原油価格高騰による油脂等の値上がりなどが考えられる。

8 精密機械「医療機器関連が堅調」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.2%の増、同9.1%の減。3か月先の業況見通しDIは4.2から12.5となった。

医療機器関連は依然として堅調に推移しているものの、受注に関しては一段落した状況である。

計量器関係や光学レンズなどは、需要の伸び悩みによる生産調整、石油製品の値上がりや納品単価引き下げ要求のほか、工場の海外シフトなどの理由により厳しい状況が続いている。

建設業の動向

「一時的なプラスに転じる」

受注額、完工高はそれぞれ前年同月比17.9%の増、同5.4%の増。3か月先の業況見通しDIは▲6.7から▲13.3となった。

公共事業の減少により各企業とも厳しい経営環境が続いているが、一部企業が、大口民間工事を受注したことや比較的大きな規模の公共事業を受注したことから、今月は前年同月比でプラスに転じている。

今後も厳しい経営環境は変わらないと推測されることから動向を見守る必要がある。

小売業の動向

1 衣料品「特売効果が現れている」

売上高は前年同月比3.2%の増。3か月先の業況見通しDIは▲14.3から7.1となっている。

依然として厳しい状況に変わりはないが、特定企業の売上が伸びたことから前年同月比でプラスに転じている。

クールビズの影響からか夏物を中心として、徐々に動きが見受けられるが、夏物衣料は購買単価が低く、利益は伸び悩んでいる。

2 身回品「季節物の売上で差が出る」

売上高は前年同月比3.3%の減。3か月先の業況見通しDIは▲16.7から▲23.1となった。

ホームセンターでは、園芸肥料や扇風機等の季節商品などで売上にバラツキが見受けられるものの、全体としての売上は今ひとつ伸びがない状況である。

3 飲食料品「ビールに伸び」

売上高は前年同月比2.3%の増。3か月先の業況見通しDIは▲33.3から▲41.2と悪化している。

農産物については、8月から一部の肉類価格が上昇することが見込まれるため、その推移に注目する必要がある。

酒類販売では、季節柄ビールの需要が伸びているが、ホテル・飲食店関係が低迷しているため、大きな売上増とはなっていない。

4 家電品「エアコンが伸び悩み」

売上高は前年同月比21.3%の減。3か月先の業況見通しDIは▲11.1から▲11.1となった。

ここ数ヶ月堅調な推移を示していたが、梅雨が長引き、7月中旬に思ったほど気温が上がらなかったことから、エアコンの売れ行きが伸び悩んでいる。また、エアコン売れ筋価格も安価なものが中心であり利益は上がっていない。

一部企業では、白物家電に動きが出ているが、全体的な底上げになるか否かは、今後の推移を注視する必要がある。

サービス業の動向

1 旅館・ホテル「低調な推移」

売上高は前年同月比6.0%の減。3か月先の業況見通しDIは、▲28.6から0.0となった。

婚礼数の減少や小規模化の影響により、期待されていたほどの売上には結びついていない。

一方、天候に恵まれたビアガーデンは、堅調に推移しているものの、今一歩売上を伸ばし切れていない。各企業では、お盆の同窓会等に期待を寄せている。

2 その他サービス「燃料価格の高騰が響く」

売上高は前年同月比16.4%の減。3か月先の業況見通しDIは▲15.4から▲23.1となった。

個人輸送や運送部門では、首都圏からの観光客が今年は愛知万博等の理由からか若干伸び悩んでいる。また、昨今の燃料価格の高騰と共に、高速道路のハイウェーカード廃止の影響も出始めており、今後の推移には注意が必要である。

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