産業経済政策課 平成17年10月31日

概況

県内経済は、総じて横ばいの中で推移しているが、一部業種で明るい兆しが見受けられる。

  • 製造業:電気機械を中心に生産増加が続く
  • 建設業:厳しい経営環境が続く。
  • 小売業:全体としては低調な推移である
  • サービス業:コンピュータが堅調に推移している。

全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は1.7から▲3.0、現在の資金繰りは▲11.2から▲9.4、3か月先の業況見通しは▲13.1から▲10.1となっている。

製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比9.5%増、同8.4%増。3か月先の業況見通しDIは▲4.3から▲10.8となった。製造業全体では前年同月比の生産額が3カ月連続してプラスであるが、主力の電気機械が前年比同月比で大きな伸びを示していることが理由である。また、鉄鋼金属や一般機械では引き続き好調に推移している。一方、木材・木製品では、ようやく市場価格の下げ止まりの兆しが見え始めたものの引き続き生産調整を行っているほか、食料品でも厳しい状況が続いている。

建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比▲6.9%減、同1.9%増。3か月先の業況見通しDIは▲43.3から▲44.8と悪化しており、厳しい経営環境が続いている。

小売業では、前年同月比の売上高で4.1%の減となっている。前月に続き、飲食料品では農産物の価格低下などの理由により生鮮食料品の売上が落ち込んでいる。3か月先の業況見通しDIは▲18.9から7.7となっている。

サービス業では、売上高は前年同月比5.0%の増。3カ月先の業況見通しDIは、▲14.3から▲3.7となった。 旅館・ホテルでは、一部企業の宴会部門が好調であったことから、前年同月比でプラスに転じているが全体としては、婚礼数の減少や小規模化の影響により低調に推移している。

コンピュータ関連では、各種積算ソフト販売や市町村合併関連で堅調に推移している。

製造業の動向

1 食料品「酒造が低迷」

生産額は前年同月比2.8%の減。3か月先の業況見通しDIは0.0から▲10.0となった。

一部企業で、季節商品(鍋物商品)の売上を伸ばしているものの、全体的には伸び悩んでいる。

酒造では、首都圏の女性をターゲットとしたワンカップの売り込みに力を入れているが、近年の日本酒離れの傾向が続いており、顕著な生産量の増加には繋がっていない。

複数の企業で、原油価格高騰による包装資材の値上がりが見受けられる。

2 繊維・衣服「厳しい状況が続く」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.0%の減、同4.0%の減。3か月先の業況見通しDIは▲20.0から▲33.3となっている。

秋・冬物の生産が始まる時期であるが、残暑が長引いた要因からか、各企業では全体的に受注が少ない傾向である。

また一部では、原油価格高騰による原材料・運送費の値上げがあり、収益を圧迫している。

3 木材・木製品「市場価格が下げ止りの兆し」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比10.2%の減、同10.2%の減となり、7ヶ月連続で生産額・受注額ともに減少となった。3か月先の業況見通しDIは▲5.9から▲29.4となっている。

 合板関係では、依然原材料価格が高止まりしているが、ここにきて製品単価の市場価格が下げ止まりの兆しを見せ始めたことから、一部企業では生産調整を解除する動きも見せ始めている。

 また、ようやく動きを見せ始めた県内の新規住宅着工は、依然動きは鈍いものの、各企業では秋の需要に期待を寄せている。

 なお、木材・木製品製造業では、乾燥材生産や運搬(フォークリフトなど)に様々な機械を使用するが、いずれも燃料価格高騰の影響を受けており、生産額が伸び悩むなかで、その影響は大きい。

4 鉄鋼・金属製品 「首都圏向け建設鋼材に動きが見られる」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比10.4%の増、同0.1%の減。3か月先の業況見通しDIは5.9から0.0となった。

首都圏の再開発等の関係からか、ビルやマンションの建設用鋼材製品が大きく伸び始めている。

鋼材や希少金属をはじめとする金属価格が高止まりしていることや、燃料価格が依然として高騰していることから、価格への転嫁が出来ない企業は、利益を圧迫されている。

5 一般機械「安定感が見受けられる」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比9.2%の増、同21.2%の増。3か月先の業況見通しDIは先月同様0.0となった。

 産業用機械を中心として好調に推移しており、安定感が見受けられる。一部では、今後の受注増加に対応するため、早くも来年の設備投資の計画が持ち上がるなど、好調さを維持している。

6 電気機械「生産額が大幅な伸びを示す」

 生産額、受注額は、それぞれ前年同月比18.3%の増、同16.6%の増。3か月先の業況見通しDIは3.4から▲3.4となった。

 前年同月比では3カ月連続でプラスに転じており、生産額も伸びている。

 受注状況を見ると、コンデンサの受注が増加しているほか、アメリカのハリケーン復旧活動やインドにおける長距離光ケーブル埋設などの理由により、光ファーバー・半導体が急激に伸びており、一部企業では、生産能力を上回る受注を受けている。

7 輸送機械「原油高でトラック更新の抑制」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比14.7%の減、同12.5%の減。3か月先の業況見通しDIは14.3と変わらずである。

 全体としては、生産額がマイナスとなっているものの、受注見通しもあり堅調に推移していると言える。

 昨今の原油高の影響により、トラック業界では設備投資(トラックの買い換え)を控える動きが見受けられ。この影響から一部企業では、トラック部品の受注が大きく落ち込んでいる。今後の推移を注視する必要がある。

8 精密機械「医療機器関連が堅調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比8.6%の増、同0.4%の減。3か月先の業況見通しDIは▲20.8から▲12.5となった。

 医療機器関連は依然として堅調に推移しているものの、度重なる原材料のプラスチック製品の値上要請等により、利益が圧迫されている。

 計量器関係や光学レンズなどは、需要の伸び悩みによる生産調整、石油製品の値上がりや納品単価引き下げ要求のほか、工場の海外シフトなどの理由により厳しい状況が続いている。

建設業の動向

「厳しい状況が続く」

受注額、完工高はそれぞれ前年同月比6.9%の減、同1.9%の増。3か月先の業況見通しDIは▲43.3から▲44.8となった。

公共事業の減少により各企業とも厳しい経営環境が続いている。特に油脂等は、原油高騰により受注時よりも大幅に値上がりとなっていることから、利益が圧迫されている。

今後も厳しい経営環境は変わらないと推測されることから動向を注視する必要がある。

小売業の動向

1 衣料品「セールの影響により売上増」

売上高は前年同月比8.2%の増。3か月先の業況見通しDIは▲7.7から7.7となっている。

依然として厳しい状況に変わりはないが、一部企業では、商品仕入れの際に、対象年齢層を若干変化させるなど、営業戦略に工夫をすることで、売上に結びつけている。

2 身回品「季節商品の動きが見られず」

売上高は前年同月比2.3%の減。3か月先の業況見通しDIは▲23.1から▲7.7となった。

ホームセンターでは、早くも暖房器具や防寒着の販売を始めており、堅調に推移している。また、園芸商品が好調である。

大方の企業では、営業努力はしているものの売上に繋がらず、景気に対する閉塞感を感じている。全体としては低調に推移している。

3 飲食料品「売上が落ち込む」

 売上高は前年同月比5.8%の減。3か月先の業況見通しDIは▲38.9から17.6となっている。

 農産物の価格が安いことや顧客の分散化などの複合的な理由から、売上が伸び悩んでいる。

 また、一部企業では、原油価格高騰により、発砲スチロールの価格が上昇しており、利益を圧迫している。

4 家電品「薄型テレビが伸び悩み」

売上高は前年同月比9.1%の増。3か月先の業況見通しDIは11.1のまま変わらずであった。

今まで好調であった「薄型テレビ」であるが、年末や値下がりを見越した買え控えなどにより、伸びが見られなくなった。

一方、白物家電は新製品発売前のセールなどの影響により好調さを取り戻しており、全体の売上も3カ月振りに前年同月比でプラスに転じている。

これから、新製品が出る時期であるが、今後のデジタル家電の値下げ価格や新製品の動向が注目される。

サービス業の動向

1 旅館・ホテル「宴会部門が低調」

売上高は前年同月比0.5%の増。3か月先の業況見通しDIは、▲26.7から0.0となった。

一部企業の宴会部門が好調であったことから、前年同月比でプラスに転じているが、全体では婚礼数の減少や小規模化の影響により婚礼・宴会部門が低調に推移している。

また、原油高騰の影響で、各企業共に、冷暖房等の光熱費が増大し、利益を圧迫している。

2 その他サービス「コンピューターが堅調に推移」

売上高は前年同月比8.1%の増。3か月先の業況見通しDIは▲23.1から▲3.7となった。

コンピュータ関連では、各種積算ソフト販売や市町村合併関連で堅調に推移している。

個人輸送や運送部門では、燃料価格の高騰による影響が鮮明になっており、荷主との値上げ交渉も不調に終わるケースも見受けられる。今後の燃料価格の推移には注意が必要である。

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