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[2010年4月12日登録]

つつが虫病に注意しましょう!

つつが虫病とはどんな病気ですか?

 つつが虫病は、産まれながらに「つつが虫病オリエンチア」という病原体を持っていた特別なツツガムシの幼虫に吸着され、人の体内にその病原体が入った時にだけ発病する感染症のひとつです。つつが虫病の初めの症状は、ひどい風邪とよく似ています。
 まず身体がだるく、食欲がなくなり、次いでひどい頭痛や、さむけと共に、39度から40度もの高熱が出てきます。4、5日目になると、胸や背中から腹部にかけて赤褐色の直径2〜3mmの発疹が現れ、その後、腕や顔にも増えていきます。この頃までに適切な治療を受ければ、早々に熱が下がり、時には風邪よりも早く治ります。しかし、治療が適切でないときは、高熱が続き、肝臓や腎臓の機能が侵され、脳炎の様な症状も起こります。
 こうなると数ヶ月間の入院が必要となったり、死亡してしまうこともありますので、この病気が昔から怖い病気とされていたのです。

 つつが虫病は、秋田、新潟、山形だけで真夏にかかる病気と誤解されていた時代もありましたが、今はほとんど日本全国で見られますし、東南アジアから中国、朝鮮半島、ロシアの極東地域を含めたアジアの広い地域でも見られています。
 平成21年には全国38都府県から464名の患者が報告されています。
 季節的に見ると、東北地方では主に新緑の頃と晩秋に、関東から九州にかけては、主に晩秋に患者が多く出ていますが、これは原因となるツツガムシの種類に違いがあるからです。

ツツガムシとはどんな虫ですか?

 ツツガムシは、非常に小さなダニの一種で、日本には120種類以上のツツガムシが生息しています。この中で病原体を持ち、しかも人に吸着するような性質を持っているのは、わずか3種類位しかありません。昔から有名な真夏のアカツツガムシ、近年、全国的に春と秋に発生しているつつが虫病の原因となるフトゲツツガムシ、主に房総半島、東海、関西及び九州で、秋に発生しているつつが虫病の原因となるタテツツガムシの3種類が主なものです。
 この3種類のツツガムシでも、そのほとんどは病原体を持っていませんが、0.1〜0.2%のごくわずかな一族だけが、産まれながらに病原体を持っています。しかも、それはメスからメスへ伝えられ、その一族が生息するごく狭い範囲だけが危険地域になりますが、そこを突き止めることは、ほとんど出来ません。
 秋田県内のつつが虫病の原因は、最近ではほとんどがフトゲツツガムシによると思われ、患者の発生状況から見ると、有毒フトゲツツガムシの生息地域は県内全域に及ぶものの、県南沿岸部よりも県北内陸部に多いように思われます。
 一方、昔から真夏に雄物川沿いで多く見られていたアカツツガムシよる患者が、平成5年以来15年振りに平成20年の夏に出たほか、大仙市の河原でアカツツガムシの生息が確認されましたので、改めて注意する必要があります。

つつが虫  つつが虫の大きさ

なぜ春と秋につつが虫病が多いのですか?

 どのツツガムシでも卵からかえった幼虫は、一生に一度だけ温血動物から栄養を吸い取らないと、その後の成長を続けることができませんので、生まれると間もなく、吸着相手を求めて、地面をはい回ります。
 ツツガムシの幼虫の多くは、まず野ネズミなどに吸着します。ネズミに吸着した場合は、2日間ほど吸着を続け、満腹になると自然に離れて地上に落ちます。もし、この幼虫が親譲りの病原体を持っていた時には、吸着されたネズミの体内で一時病原体が増えますが、間もなく消え去り、後で吸着した別のツツガムシに病原体が移ることはありません。また、一度ネズミに吸着した幼虫は二度と温血動物に吸着することはなく、土の中で休眠後、若虫となり、更に他の虫の卵を食べて、休眠と脱皮を繰り返して成虫になります。
  ヒトがつつが虫病にかかるのは、親譲りの病原体を持っていて、しかも、何らかの理由でネズミなどに吸着できなかった幼虫に運悪く吸着されたときだけです。ネズミはツツガムシの成長には必要な生物ですが、病原体を増やしたり、移したりする役割はなく、むしろ人の身代わりとも言えそうです。

 秋田県内のつつが虫病の主な原因となるフトゲツツガムシは夏に産卵します。その卵は晩秋に孵化して幼虫になりますので、晩秋につつが虫病の発生が見られます。しかし、ツツガムシの幼虫は気温が10度以下になると活動できなくなるため、多くは未吸着のまま土の中で冬を越します。そして、春になり気温が10度以上になるとようやく吸着活動を始めますので、春先から初夏にかけてつつが虫病が発生します。
 秋田県のような雪国では、孵化した幼虫が秋に活動できる期間は短く、むしろ越冬後の吸着によることが多いため、晩秋の患者数よりも新緑の頃の患者数が多くなるものと思われます。
 昔から雄物川上流の川沿いで多く見られたアカツツガムシは、真夏に幼虫が生まれます。近年は絶滅したように思われていましたが、平成21年の夏に、大仙市角間川や運動公園付近の両岸河川敷に群がっているのが確認されました。真夏の河川敷に立ち入る時は、よく気をつける必要があります。

病原体は何処から人に感染するのですか?

 ツツガムシの幼虫は一生に一度の吸着を遂げようと、温血動物が発する炭酸ガスを頼りに、地面に出て待ち構えています。そこに人が腰を下ろしたり、寝そべったりすると、ツツガムシは人にも取り付きます。その後、衣類の隙間等から皮膚の表面に入り込み、1分間に3〜4cmほどの速さで好みの場所を探し回ります。ツツガムシが好む部位は、陰部、内股、脇の下、下腹部などの柔らかくいくらか湿ったところです。
 好みの部位にたどり着いた幼虫は、皮膚にクチバシを突き立てて吸い付き、このクチバシから唾液を出し入れし、何時間もかけて人の組織を消化して、特別な管を作ります。その後、さらに何時間もかけて、その管を通して人の体液を吸います。この吸着は蚊やノミなどのように血液を吸うものではなく、また、すぐに離れてしまうわけでもありません。
 真夏の雄物川沿いで見られるアカツツガムシに取り付かれたときは、逆なでしたり、衣服でこすれると、チカッと痛みを感ずることがあり、そこにツツガムシが付いていることもあります。 しかし、フトゲツツガムシの場合には、吸着されても、痛みや痒みがほとんどなく、また、0.2mm位と極く小さいので、取り付かれていたとしても、気付くことはまずありません。
 このときに、そのツツガムシが有毒ツツガムシであれば、その食道にいる病原体がクチバシを通して人の体内に入り込んで感染します。
 有毒のツツガムシに吸着された部位は2〜3日目ころに赤い小さな水疱になり、その後、膿疱(ウミがたまった状態)になります。これが10日目ころには周りが赤く盛り上がったかさぶた(痂皮)となり、いわゆる「刺し口」と呼ばれるものになります。このころから、発熱などの症状が始まります。
 この「刺し口」は古くからつつが虫病の臨床的な診断の決め手となったものです。痛みも痒みもなく、また隠れた見えにくい部位にできることが多いため、見逃してしまうこともありますが、原則として「刺し口」のないつつが虫病はないはずです。
  無毒のツツガムシに吸着された場合は、数日で跡も消えてしまいますし、発病することはありません。

刺し口   

どうやってつつが虫病と診断するのですか?

 新緑(初夏)や秋に高熱や発疹が続く場合は、つつが虫病の可能性がありますので、早めに医療機関を受診してください。そして、発病前の生活〜例えば山菜採りに出掛けたことや、田畑で農作業をしたこと、真夏に河川敷に行ったこと等〜を必ずお話ししてください。
 また、身体に疑わしいかさぶたや腫れ物があった場合には、人に見せにくい部位であっても、必ず医師に診てもらうようにしてください。 秋田県内には、つつが虫病を診断したことのある医師が500名以上もおりますので、つつが虫病であれば、「刺し口」や臨床症状から、まず見逃すことはなく、直ちにミノサイクリンなどの薬で適切な治療を行うでしょう。
 しかし、つつが虫病と似た症状の病気は多くありますので、確実に診断するには、血液による病原体の検査が必要です。今のところ、血清中のつつが虫病オリエンチアに対する抗体を調べる方法が、最も早く確実です。
 秋田県では、県健康環境センターで、この正確で、しかも迅速な検査を、県内の何処の医療機関からでも無料で受付けており、検査結果は、すぐに医療機関に伝える体制を整えています。つつが虫病が疑わしい場合には、一刻を争いますから、まず適切な治療を開始すると共に、県健康環境センターに病原診断を依頼して下さい。

なぜ秋田県ではつつが虫病が話題になるのですか?

 つつが虫病は、毎年同じような季節になると、必ず出てくる病気であることと、早期に適切な治療が行われると、風邪よりも早く治る病気でありながら、治療が遅れると重症になりやすく、診断不明のままに死亡してしまう可能性が極めて高いことが、怖い病気の一つとされている理由です。
 つつが虫病は、診断した医師が、全ての発病者について最寄りの保健所に届け出ることが法律で定められています。秋田県では、30年ほど前から、全国に先駆けて診断体制を整え、つつが虫病を診断した医師の報告に基づいて、報道機関を通じて県民の皆さまに発生情報を提供しています。つつが虫病発生の報道があった際には、発生時期であることを念頭に置いて下さい。

つつが虫病の予防方法は?

 完全な予防というのは、非常に難しいのが現状です。例えば、殺虫剤等を散布して駆除しようとしても、有毒なツツガムシの生息場所の特定はほとんど不可能であり、広範囲な散布は、環境への影響上問題があります。
 また、感染又は発病を防止するワクチンや予防薬についても、現在は開発されていません。虫除け剤の使用も費用がかかるため、限りがあります。
 ツツガムシは身体に取り付いても、すぐに吸着するのではなく、適当な場所を探し回り、更に、病原体が人の体内に入るまでには、10時間近い時間がかかります。この時間を利用して、衣類や身体についているかもしれないツツガムシを取り除く対処法が日常的には一番有効です。
 ツツガムシは極く小さく肉眼的に見つけることはほとんど不可能ですが、具体的には、次のことを心がけて下さい。


@野山、河川敷等では、できるだけ素肌を出さない。
A野山、河川敷等から帰宅した時は早めに着替える。
B着替えた衣類は室内に持ち込まない、または、すぐ洗濯する。(着替えた衣類からはい出たツツガムシが、家族等に取り付く恐れもあります。)
C野山、河川敷等から帰宅した時には、速やかに入浴し、念入りに身体を洗い流す。(吸着される前に洗い流してしまうことが決め手です。)

(指導:秋田大学名誉教授 須藤恒久)


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